大怪我を乗り越えて…「焦っても仕方がない」を知った庭井祐輔が見るラグビー | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

大怪我を乗り越えて…「焦っても仕方がない」を知った庭井祐輔が見るラグビー

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高校、大学と名門校出身で主将も務め、世代別代表選出経験がありながらも「将来の夢を掴みきれず」サラリーマン選手としてキヤノンに入社した庭井祐輔(にわい・ゆうすけ)選手。

インタビュー前編では、満員電車に揺られながら通勤していたことや、身体を鍛えたあまりにオーダースーツが裂けてしまったエピソードなどが飛び出した。

後編では怪我のことや、かつてラグビーをやっていた仲間たちに向けてのメッセージ、そして観戦初心者の方へのおすすめポイントについてなどを語ってくれた。

1シーズンを治療とリハビリに費やす大怪我から学んだこと

兼業選手からプロ転向したのち、庭井選手は試合中に右足首の脱臼骨折というまさかの重傷を負ってしまう。

庭井選手(以下、敬称略):2017年のサンウルブズの最終戦でのことでした。試合時間残り2分だったんですよね。チームが歴史的勝利を収めた試合で、みんなが盛り上がっている中、自分は病院に運ばれていくっていう……。

撮影=戸嶋ルミ

ー競技復帰までどれくらい掛かりましたか?

庭井:6ヶ月くらいですね。結構長かったですよ。手術してすぐ後は「歩けるようになるんかな?」という不安もあって、そこからのスタートでした。

怪我した直後、最初は捻挫だろうと思ってたんです。でも立ち上がろうと思ったら、立てなくて。足首を見たら、外れて外側向いてて、それを見たら一気に激痛が……そのまま担架で医務室に運ばれて。

試合に勝った瞬間は医務室のテレビで見届けました。勝って盛り上がってる裏で、先生が「はい、行くよー」って外れていた足首をはめてくれました。最悪でしたね(笑)

ーーリハビリ生活で辛かったことは

庭井:サンウルブズのシーズンが7月中旬で終わって、そのあと8月中旬からラグビートップリーグが始まるので、本来ならキヤノンのみんなと一緒に戦う予定だったんですけどそれが出来なくて。結局そのシーズンは1試合も出られず……。

立場的にも当時キャプテンだったのもあったし、みんなと一緒に戦えなかったことが辛かったです。何かしたくても何も出来なかったのももどかしかったです。そう簡単に治る怪我でもなかったので、仕方ないんですが。

撮影=戸嶋ルミ

長期離脱で得られたもの…他競技の女子アスリートからの金言

長く続けているものというのは、往々にして感覚的になりがちでもある。怪我というきっかけではあるものの、強制的にプレーから離れる時間を経て学んだことはあったのだろうか。

庭井:それまではただ感覚的にしかモノを見ていなかったんですが、怪我でプレーできない期間を経験して、客観的に物事を捉えることができるようになったと思います。

メディカルチームの方が普段から言っていたアドバイスなんかも、どれだけ大事なことだったかを改めて実感しました。以前は何となくやっていたような練習やトレーニングも、行う理由をしっかり考えて取り組むようになったのは良かったことだと思います。

ー怪我やリハビリなどで戦列を離れている選手に、ご自身の経験をもとにメッセージを送るとするなら、何と伝えたいですか?

庭井:「焦るな」ですかね。自分は怪我から1ヶ月くらい入院して、そのあとJISS(国立スポーツ科学センター)に1ヶ月くらいリハビリで入ったんですが、いろんなスポーツの選手が同じように怪我をしてその場所に来ていたんです。普段あまり他のスポーツの選手と交流することがなかったので、いい機会になりました。

焦らずじっくりリハビリを行い、今はもう戦う準備万端 撮影=戸嶋ルミ

JISSに入った当初は一日も早くここから出たい! という気持ちだったんですが、同時期に同施設で知り合った女子バレーボール選手に「身体だけでなくメンタルを整えることが大事」という旨のアドバイスをもらったことで気が楽になりました。

焦っても仕方ない、自分が今どういう状況なのかしっかり認識して、状況にあったことをするのが大切なんだということを理解できましたね。

ラグビーをやってた人も初めての人も、みんな試合を観に来て欲しい

庭井選手は2019年現在、27歳。学生時代の部活仲間で、現在もラグビーを続けている人は多くない。むしろ「結構みんな引退した」とのこと。就職・転職・結婚・転居など生活環境が変わる上で、長く競技を続けることは難しい。

しかし、ワールドカップイヤーであるからこそ、かつてのラガーマンのみんなにラグビーを観に来てほしいという。

庭井:ラグビー経験者だったら、一度試合を観に来てもらえば、辞めてから時間が経っていたとしてもきっと楽しめると思うし、何だったらまたやりたいくらいの気持ちにもなるんじゃないでしょうか。

実際、昔の仲間にも言われます。そうやって現地に来て楽しんでくれることが、ラグビー界の盛り上げにも繋がると思います。

もちろん、ラグビーの観戦が初めての人にもぜひ来てほしいですね。コンタクトプレーで選手が吹っ飛ばされるのを観たら、スカッとしてストレス解消にもなりますよ。

ラグビーは「映える」スポーツ

撮影=戸嶋ルミ

ー最近ではスタジアムグルメが脚光を浴びたり、球場にカメラを持って観戦しに行くスポーツファンも増えたりと、観戦=応援だけではなく、楽しみ方も多様化してきています。ラグビーではどうでしょうか?

庭井:ラグビーはすごく画になるスポーツなんです。何気ないプレーでも写真で撮ると何だかかっこよく写っちゃったり。芝に映えるんでしょうね。写真を撮るのが好きな人にはすごくいいんじゃないでしょうか。

激しいプレーで選手が吹っ飛んだりすると大歓声が上がったり、サンウルブズの試合ではスクラムを組む時にファンの方がワオーンと狼の遠吠えをしたり、ラグビー場はけっこう賑やかな雰囲気ですよ。

ー現地観戦するとして、庭井選手的オススメポイントがあれば教えてください。

庭井:初めてラグビー場に来た方には、出来れば真ん中らへんの前の方で見て欲しいですね。ラグビーは激しいコンタクトプレーが魅力なので、間近で体感してもらいたいです。

あと、よく言われるんですが、コンタクトの時にバチーンという音がするんです。たまにドスッという鈍い音や、頭と頭がぶつかるゴツンという音もしますよ。ラグビーは耳でも楽しめるスポーツなんです。

最後に、気になっていたことを聞いてみた

ー選手プロフィールの趣味欄に「自分で美味しいラテを淹れる」とありましたが。

撮影=戸嶋ルミ

庭井:最近ちょっと調子いいです(笑)徐々にコツを掴んできました。ポイントはコーヒーを挽いた粉のプレス具合ですね。最初はうまくいかなくて「エスプレッソちゃうやん」と思いながら飲んでましたけど。

海外遠征でコーヒーを飲む機会が多かったり、日本では辰巳のグラウンドのクラブハウスにエスプレッソマシンが置いてあるのがきっかけでハマりました。次はラテアートができるようになりたいです。難しいんですよ、あれ。

 

インタビューでは、他にも書ききれないほどたくさんのエピソードが飛び出した。

庭井選手のラグビーに対する真摯な想いとユーモア溢れる人間性、そして怪我から復帰するまでの過程を知り、心から声援を送りたくなった。今後も選手としての活躍、そしてラテアートができるラグビー指導者としての道が拓けることを信じている。

《撮影・インタビュー:戸嶋ルミ》

※インタビュー前半はこちら

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