WBA世界ミドル級1位の彼もまた五輪経験者で、出身のカメルーン代表として2004年アテネ五輪(ミドル級8位)、2016年リオデジャネイロ五輪(ライトヘビー級1回戦敗退)に参戦している。五輪の成績はパッとしないが、2004年12月にプロ転向後は37戦35勝(21KO)2敗の戦績を残している。
これまでにWBAインターナショナル・ミドル級王座(防衛せず返上)、WBA世界ミドル級暫定王座(1度防衛して返上)、WBO世界ミドル級王座、WBA世界ミドル級暫定王座(再獲得)と手に入れた。村田はエンダムを「一筋縄でいく相手では絶対ない。タフファイトを予想しながら、ベストを尽くすだけ」と話す。
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エンダムの2度の敗戦はいずれもTKO。2012年は6度、2015年は4度のダウンを喫しており、負けてはいるものの強靭な体力と精神力を持ち合わせている。
過去最大となる強敵。立ちはだかる相手に対して村田は恐怖心はあるのだろうか。「もちろんそれはあります」と村田は答えた。
「それを克服するために何をするかというと、“できることを考える”ってことですよね。スポーツ心理学でよく言われるのが『コントロールできるものを考えなさい』ということ。たとえば観客、相手のプレー、審判、色んなものありますが、全部コントロールできないじゃないですか。じゃあ何がコントロールできるかというと自分のプレーだけ。どうやって戦うのか」
それをするだけで「ある程度恐怖心は拭える」そうだ。コントロールできないものに対して過剰なまで考え込まないことで、村田は自分だけに集中する。すると試合前に恐怖心はほとんど消えてしまう。
「やるべきことをやる。恐怖心があるときはずっとありましたよ。でも、ここ1年ぐらいはやることをやるので、気持ちだけですね」
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■「できることだけを考えて、それを実行する」
メンタルはコンディショニングと密接な関係にあるとも教えてくれた。
「コンディショニングが良ければメンタルも必然的に良くなってきます。コンディショニングが悪かったらメンタルは良くない、楽天的なものだと思うんですね。だから、いかにボクシングの調子を上げていって、強度の高いトレーニングをケガなくしていけるかが重要です。それでしたものを試合で出すしかない。結果はわからないし、結果論でしかないので、自分でできることをやっていって、リングでも自分のできることをやる。それで通用しなかったら相手の方が強いんでしょうし、そういう気持ちでやっています」
メンタルにも過度な期待はしていない。どんなに強いメンタルがあっても、競技で失敗すると崩壊してしまうという。
「できることだけを冷静に考えて、それを実行する。それ以外にない」
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村田の母校、ボクシングの名門・南京都高校(現京都廣学館高校)の先輩であり、プロボクサーとしても同じ帝拳ジムでトレーニングを積むWBC世界バンタム級チャンピオンの山中慎介は「練習をやってきた自信が試合への勇気につながる」と答えていた。
自分ができることの積み重ねこそがボクサーの心を支え、恐怖心を打ち消し、試合での最高のパフォーマンスにつながっていくのだ。
Round 3に続く→【村田諒太 ミドル級王者への道 R3】怖がりの長男に伝えたいこと
●村田諒太(むらた りょうた)
1986年1月12日生まれ、奈良市出身。帝拳プロモーション所属。2012年にロンドン五輪ボクシングミドル級で金メダルを獲得して脚光を浴びる。アマチュア時代の成績は137戦118勝89KO・RSC19敗。2013年8月にプロデビュー。以降、2016年12月のブルーノ・サンドバル戦まで12戦全勝(9KO)。
取材協力:ナイキジャパン