小学校3年からフェンシングを始めた太田さん。フェンシング指導者の実話をもとに描かれた『こころに剣士を』を観て、「僕はまだ指導者の道を選んでいないので、彼(主人公)の気持ちはわからないのですけど、僕みたいな教え子がいたらヤだな」と生意気だったという子ども時代を振り返り苦笑する。
「メダルを初めて獲るために生まれてきたと小さいころから言ってるような…。ナめてますよね(笑)」と自身がこころに秘めていた熱い想いを打ち明けた。
「僕だったら、僕を教えたくないなと思います。もっと素直な子を教えたいです」と話すが、小学生のころの練習について「楽しさを教えていただけた。厳しいというより楽しいという意識が強いなかで、フェンシング生活を送ってきた。厳しさはそんなになかったです」と懐かしそうに目を細める。
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太田さんのもとには東京フェンシングスクールに通う小学生5人が集まった。
「フェンシングというのは騎士道と“道”が付きます。柔道や剣道、“道”が付くものは礼に始まり礼に終わります。フェンシングもそうです。まず、みなさんに対して礼をしたいと思います。ラッサンブレ、サリュー(気をつけ、礼)」
5人に礼をした太田さんは、フェンシングの昔の剣にはガード(つば)の部分に「家紋」があったことを子どもたちに教える。戦う前に口もとに寄せてキスをして、相手に剣を向ける。戦いが終わったらまた口もとに持ってきて、剣を足もとに下げる。「フェンシングはスポーツになってきてこういうことを教えなくなってきてる」と話す太田さんに、子どもたちは真剣に耳を傾けた。
太田さんは子どもに剣を構えてもらい、「マルシェ」「ロンペ」「アロンジェブラ」「ファンデヴ」と声をかける。キビキビと動く姿を見て、「みんなメチャメチャ上手だね。始めて1年ぐらいと言ってましたが、すごい上手。いつか将来のオリンピック選手になってほしいな」と優しい視線を送った。
現役引退を表明した太田さん。今後は国際フェンシング連盟理事として、国内外のフェンシングの発展に力を注ぐ。
『こころに剣士を』の舞台は1950年初頭のエストニア。ナチスからスターリンへ支配者が変わった地で生きたフェンシング指導者の実話をもとに、元スター選手と子どもたちの絆が描かれる。12月24日(土)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか、全国でロードショー。
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
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