これはマイアミ・マーリンズのマイケル・ヒル編成部長が、マーセル・オズナ外野手について語った言葉だ。バリー・ボンズ打撃コーチの指導を受け、2年ぶりに20本塁打をクリアーしたオズナ。シーズン終盤に失速したが23本塁打、76打点を記録している。25歳と若くパワフルな外野手はマーケットで他球団の興味を引くだろう。
理想を言うならマーリンズは今後もオズナの成長を見守っていきたい。ジャンカルロ・スタントン、クリスチャン・イエリッチとの外野手トリオは球団の看板でもある。だがチーム事情がそれを許さない。
マーリンズは今シーズン途中、エースのホセ・フェルナンデスが事故死。先発ローテーションに空いた大きな穴を埋めるため、オズナを交換要員にトレードで先発投手を獲得すると見られる。
■衝撃が駆け巡ったフェルナンデスの急死
フェルナンデスの短い人生は山あり谷ありだった。メジャーリーグでプレーする夢を叶えるため、10代前半から亡命を試みる。3度失敗したが諦めず、4度目のチャレンジで成功。渡米後は最速100マイル(約161キロ)の速球とスライダーを武器に、2013年にメジャーデビューを果たした。
防御率2.19、12勝6敗でナショナル・リーグの新人王を獲得したが、翌年は右ヒジのトミー・ジョン手術を受け8試合の登板でシーズンを終えた。2015年に復帰して再び支配的な投球を見せ、本格的な復帰を目指した今シーズンは前半戦から優れた成績を収め、オールスターゲームにも選出される。
誰もがフェルナンデスの将来は明るいものと信じて疑わなかった。
それが24歳で断たれた。
急な知らせに多くのファンや関係者が衝撃を受けた。直後の試合でマーリンズは試合開始前にマウンドへ集まり、フェルナンデスに祈りを捧げた。
We played for you.
— Miami Marlins (@Marlins) 2016年9月27日
We won for you.
We will forever honor you.#JDF16 pic.twitter.com/YX3zCxjaGI
フェルナンデスと同じキューバ出身のヨエニス・セスペデス(ニューヨーク・メッツ)は、フェルナンデスの背番号『16』の入ったユニフォームをベンチに掲げて試合に臨んだ。ユリエスキ・グリエル(ヒューストン・アストロズ)もインスタグラムで冥福を祈っている。
Jose, you will forever be missed. My prayers are with your family. Thank you for everything. May you rest in peace. pic.twitter.com/5JfFsZVTWR
— Yoenis Cespedes (@ynscspds) 2016年9月26日
マーリンズはフェルナンデスの背番号を球団初の永久欠番とした。
■再契約したイチローに求められる役割
陽気な性格でロッカールームではムードメーカーでもあったフェルナンデス。太陽のような存在を失ったマーリンズは、グラウンドの内外でチームを立て直さねばならない。球団はシーズン終了後すぐにイチロー外野手、マーティン・プラド内野手との契約を延長したが、これもフェルナンデス急死が理由の一端にある。
チームリーダーとしても評価されているプラド、若い選手の導き手になれるイチローとの契約を早々に決め、まずはチームに精神的な支柱を建てる。しっかりとした背骨を定めてから、球団は本格的な再編に着手する。
ヒル編成部長はオズナを放出したいわけではないと話すが、同時に「目標はピッチングを強化する方法を見つけることだ」とも語っている。最優先事項は新たな先発投手の獲得であり、そのためにはオズナの放出も否定はしない。
フェルナンデスの急死に揺れるマーリンズ。新たに1年契約(2018年はオプション)を結んだイチローは、求められる通りチームに落ち着きとエネルギーを与えられるか。