●オージービーフとの関係に変化?
家庭の食卓に並ぶ食材のひとつ「オージービーフ」はオーストラリアフードの代表格。日本では和牛に比べて低価格で売られているのを見かけます。日本人が食べ慣れている和牛に比べると、硬くてステーキかスープのようなものにしか使えないと思っているのは私だけでしょうか。
そのオージービーフとの関係に変化が感じられるのが南オーストラリア州です。今回のテースティング・オーストラリアではオージービーフの文字を見ることもなく、もっと広範囲で食材の販売促進が行われていたことが印象的でした。
これはオーストラリア人の中に「ビーフ以外のものを食生活に取り入れたい」という証拠だと思われます。会場ではオリーブオイルやハーブ、フルーツの宣伝が目につきました。またワイン製造とともに、オリーブを育てて売っているワイナリーも最近では増えてきたようです。
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●ブームのきっかけはソーシャルメディア
最近の食文化ブームの要因にはソーシャルメディア(SNS)が影響しているそうです。テースティング・オーストラリアでも「Words to Go」というブロガーたちによるカンファレンスが行われました。これは食文化がブロガーたちによって広められていることの裏付けと言えるでしょう。
レストランやカフェで写真を撮り、簡単にソーシャルメディアで共有できるようになったことが、ブームの引き金になったとパネラーたちは話します。
その一方でリンゴ農園の経営者は、「ファームやフードに携わる人たちがすべてソーシャルメディアに頼っているわけではない。それに頼らない人たちは少しずつ出遅れた感がある。出遅れてしまったファームなどはどう対応したらいいのだろうか」と苦悩を語ります。
「遅れたわけではないし、食文化がブームと言っても新鮮で美味しいものは消費者にはわかるはず。無理にブームに乗る必要はないのでは」とパネラーはアドバイス。日本ほど強くブームを感じることはないものの、実際に食文化に携わる人々には感じるのかもしれません。
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●州で生産したもので作り上げる南オーストラリアの味
「オーストラリアにはこれと言った伝統の味というものがないから、この州独自の味を作ることができる。それがここでのシェフの仕事の楽しみ」
会場に集まったシェフたちは口をそろえます。州で生産の元祖と呼ばれるのは、40年前にレストランをオープンしたMaggie Beer氏。彼女は現在ではファームで生産したものを海外に届けるまでになりました。地元で育てたもので新しい味を作りだすことが、今後の南オーストラリア州の目指すものになっているようです。次回のこのイベントでの新しい味の発表が待たれます。