日本障害者スキー連盟常任理事でパラ・アルペンスキー日本代表チームのゼネラルマネージャーを務める大日方邦子さんが5月11日、東京都内で行われた2015/16シーズンの競技活動報告で今後の課題を語った。
日本代表チームの活動で昨シーズンと大きく違ったことは、シーズン前の体力測定だ。「どのような体力が不足しているのか、それを補うために個々の選手がどのようなことをやったらいいのか。数値を用いて行った」と大日方GMは話し、選手がトレーニングや試合でどれぐらい疲労しているのか乳酸値のデータ測定も行ったと明かす。
選手たちはオフシーズンに1週間あたり600分以上の有酸素運動を実施した。長いシーズンの後半になると疲れやすい傾向があったからだ。シーズンになるとレースの転戦が始まり、時には1日に何百kmもクルマで移動し、翌日に試合を行うハードスケジュールが続く。それが続くことでシーズン終盤の3月ごろには疲れがたまり、気力も体力も充実しない問題が生じた。これをどう解決するかが課題になったという。
「パラリンピックは3月に行われる。そこでしっかりとした力を、それぞれの選手が発揮できるようにすることが目的。結果的には7人の選手たちがピークの持っていき方を習得できたかなと考えている。結果が出た選手、出なかった選手といるが、それそれが課題、自分に何が足りないのか、やることが明確になった」
チーム全体でも課題が見えた。まず、スピード系の種目に対する対応力だ。シーズン序盤はダウンヒル競技で結果を出すことができなかった。これは用具(スキー板)の滑走性の問題や、特殊な競技なために国内ではなかなか練習環境が整えられず、経験値や練習量が不足していることが原因だ。
次に用具について、「滑らせることができるスキー板を作れるサービスマンの確保が大きな課題」と説明。選手の他に、サービスマンをどう育てていくかが重要になるという。さらに、チェアスキーやアウトリガー、プロテクターの開発を進めることも課題に挙げられた。
「人馬一体という言い方もあるが、特にチェアスキーヤーは自分のマシーンと体をどのようにフィットさせて使いこなしていくのか」が重要になると語る。
微妙な感覚の違いにあわせ、選手一人ひとりのニーズにあった用具を作り、「メイド・イン・ジャパンの製品を世界に普及させていくことが競技団体がやるべき仕事」と続ける。チェアスキーでは風の抵抗を抑える「カウル」の開発も期待され、来シーズンには投入する見込みだ。
練習に関しては初の試みとしてチリ遠征を行い、ダウンヒルに特化した練習を行うことが決定していることを明かした。
2018年平昌パラリンピックに向けて「ほんとに時間がないというのが現場の声」だが、来シーズンは1月に世界選手権、3月に平昌でパラリンピックプレ大会が開催される。
2大会にあわせて、選手たちがどうピークを持っていくか。そこが目標になると大日方GMは締めくくった。
《五味渕秀行》
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