初詣。それは、新年に神社や寺院に参拝して、「今年一年良い年でありますように」と祈願する風習である。
●初詣の起源は明治時代
近年では一般的になり過ぎて、初詣について深く考えることなどなかったが、調べてみると面白い事実が判明した。初詣が定着したのは明治時代以降で、正月らしい行事ではあるが、その始まりは鉄道会社の集客キャンペーンだった。
そのような事実を知ると「何だ、その程度のものか」と思えてしまうが、それでも初詣は正月行事に変わりはなく、やはり正月を迎えれば行きたくなるものだ。特に、正月三が日に「初詣」に行くことは、リア充度を示すひとつのステータスのような気がしている。
●年末に詣るから「末詣」
筆者だって初詣に行きたい。できれば三が日に行きたい。でも、2016年の三が日には初詣に行かないことに決めていた。
それは混雑しているからとか、寒いからとか、一緒に行く人がいないからとか、『ジョジョの奇妙な冒険』を読破したいからとか、だらだらと過ごしていたら原稿が溜まってしまったからとか、どれをとっても、のっぴきならない事情であるのに、それらが重なっているのだから仕方がない。
そこで三が日に初詣に行けないのであれば、年末に行ってしまえばどうだろうかと考えた。先取りである。映画の先行上映のようなものである。年末の初詣、それはもはや初詣ではなく、末詣だ。
どうせ行くなら、山がいい。山に登れば記事になる。それに山には神社が付き物だ。では、どの山にすべきか。
筑波山や愛宕山、御岩山に雨引山。茨城県にも初詣で有名な神社が建っている山はたくさんある。でも、もっと初詣的な感じが欲しい。それでいて、それほど遠くなく、登るのに困難でもなく(甘えた発想)、ちょっと賑やかな感じがして、せっかくだから旅情も味わえるような山がいい。
●初詣の聖地・成田山新勝寺
そうして思い浮かんだのが、成田山新勝寺であった。真言宗智山派の大本山であり、「成田のお不動さま」として知られる成田山。初詣の参拝客数は、明治神宮に次ぐ全国2位だ。千葉県成田市にあるこのお寺は、言わずと知れた初詣の人気スポットだ。
初詣に適しているなら、末詣にも適しているに違いない。標高40m程度だから、登るのに苦労はないだろう。成田山の近くにある仲町は風情もある。筆者の家からも程よく近く、程よく遠いので旅行気分も味わえてしまう。
これだけ要素がそろっているならば、是が非でも成田山に末詣登山に行くしかない。そう思った翌日に、成田山で末詣を済ませてきた。
行った後にネットで調べてみると、この「末詣」という言葉が案外ヒットすることに驚く。しかも、初詣よりも末詣の方が御利益があるとか、開運するという記事まである。これは嬉しい誤算である。仕方なく出向いた末詣に、そのような効果があったとは。
そもそも成田山は山なのか。少々高い場所にはあるが、正確には山ではない。国土地理院も山とは定めていない。だが、それでもいいのだ。成田山は山なのだ。表記に「山」がついていれば、山なのだ。
《久米成佳》
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