第1回:コミュニティサイクルが教えてくれる“新しい景色”
第47回:千代田区のコミュニティサイクル「ちよくる」を体験。見えてきた課題は?
■区を越えた貸し出し&返却が可能に
相互利用といわれてもピンと来ないかもしれませんが、4区合わせて110カ所以上のサイクルポート(コミュニティサイクルの貸し出し&返却をするための施設)と1100台以上の自転車がひとつのサービスに集約され、区境を越えた自転車の貸し出しや返却が可能となるのです。
つまり江東区のお台場海浜公園駅ポートで借りて千代田区の山王パークタワーポートで返したり、中央区の明治座ポートで借りて港区の東京タワーポートで返したり…なんてことがごく当たり前になるというわけです。
前者の場合、お台場海浜公園駅からいったん西に向かって船の科学館に立ち寄り、晴海大橋を渡って晴海や勝どき、そして築地。さらに銀座や日比谷公園を経由して山王パークタワーまでが12.3kmとなります。
この距離、サイクリングには物足りないかもしれませんが、途中にはパレットタウンや晴海トリトンスクエア、築地市場、歌舞伎座、銀座中央通り、皇居など見どころ、立ち寄りどころは盛りだくさん。気がつけば日暮れも迫り、あわてて先を目指すことだってあるでしょう。
ちなみにこのルートの途中には、わずかに外れたものも含めれば5カ所のポートがあります。ですから時間がなくなったり疲れたりしても、そこで打ち切ることが可能です。また、このポートは駐輪場代わりになりますし、電動アシスト付き自転車のバッテリーが切れるといった不具合が生じても、そこで別のコミュニティサイクルに乗り換えることができます。
お手本となるフランスのヴェリブにまた一歩近づいたともいえますが、300m間隔を目安にポートを設置しているヴェリブと比べ、探さないとポートが見つからない点で見劣りします。
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お台場海浜公園駅から山王パークタワーまでの間には、見どころ立ち寄りどころが盛りだくさん
■4月30日までの期間限定
せっかくGPSを搭載しているわけですから、ハンドル上にサイクルナビ(画面上に現在地や目的地を示す端末)を設置し、それが立ち寄りスポットやポートまで案内してくれればいいのですが、盗難や破損が危惧されるからでしょうか。今は紙地図を頼りにするほかはありません。グーグルマップにポートを載せた地図がありますから、自身のスマートフォンやタブレットに表示させる手はあります。
この相互利用は、4月30日までの期間限定。旗振り役の東京都はもっと長く、おそらくは5年後の東京オリンピックまで延長させたい意向でしょうが、各区が慎重になっているためです。
ポートによって台数の偏りが生じたときの対応をどうするか、区域を超えたサービスの提供に区民の理解を得られるかといった懸念材料があるからでしょうが、コミュニティサイクルの機動力を有効に発揮させ、その利便性を高めるにはエリアの拡大が欠かせません。相互利用の開始を伝えたリリースにも「実験の状況により延長する場合があります」と記されていましたから、まずはそれを期待しましょう。
※前回のコラムでワイズロードの店舗数を全国34店としましたが、35店の間違いでした。お詫びして訂正します。