【山口和幸の茶輪記】サイクルショー今昔物語…かつての業界見本市は一般向けイベントへ | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【山口和幸の茶輪記】サイクルショー今昔物語…かつての業界見本市は一般向けイベントへ

オピニオン コラム
日本最大級のスポーツ自転車フェス「サイクルモード・インターナショナル」
  • 日本最大級のスポーツ自転車フェス「サイクルモード・インターナショナル」
  • 「サイクルモード・インターナショナル」は試乗ができるのが特徴
  • 業界新聞社が主催した東京国際自転車展
  • 「CYCLE」の前身であるサイクルスタイルも、現サイクルモードにキャンペーンガールを送り込んで大々的にPRしたことも
日本最大級のスポーツ自転車フェス「サイクルモード・インターナショナル」が11月6日~11月8日に千葉県の幕張メッセで開催され、多くの自転車愛好家でにぎわった。半世紀を経て日本の自転車ショーも様変わりしたが、今回はその変遷と課題に迫ってみたい。

自転車メーカーが1年におよぶ開発期間を経て、新製品をラインアップするのが毎年秋ごろ。各メーカーが見本市会場に集まって商品ピーアールするのがいわゆる自転車見本市、サイクルショーだ。

海外では1869年にフランスのパリで初開催され、米国ではオモチャと合同のトイ&サイクルショーとして開催された時代もあった。そんなチャンスをものにしたシマノが自社製品の優位性を海外にアピールして、世界に認められるまでになるのだからメーカーとしては侮ることができない一大イベントだ。


業界新聞社が主催した東京国際自転車展

日本では1967年に日本自転車工業会が主導して誕生させたのが第1回サイクルショーだ。当時はまだ国産自転車メーカーがしのぎを削り、輸入車や外国製パーツはあまり市場に出回っていなかった。1980年代になるとアルミやチタンなどの新素材ブームを打ち出し、1985年にNHKで紹介されたツール・ド・フランスを引き金としたロードブーム、その後のMTBブームなどをけん引した。国内産業界の恒例行事として重要な使命を果たしてきたが、業界の閉塞性か、あるいは競輪公益資金に依存する上での制約がつきまとったのか、1989年を最後に中止された。

■東京国際自転車展からサイクルモードへ

これを継承したのが自転車業界紙のインタープレス社で、1990年に第1回東京国際自転車展が開催された。同社の強みは業界情報であり、そういった意味でまだ一般向けのイベントではなかった。そのため同展はかつての見本市的な商談が随所で見られたのが特徴。

テレビ大阪が主催するサイクルモード・インターナショナルは2005年に始まった。現在も年に一度のイベントとして定着し、2015年で11回目の開催となった。累計来場者は50万人を突破したというから、毎年5万人は足を運んでいることになる。当初は「サイクルスタイル」という名称だったが、商標を有するウェブサイトがあったため、途中からサイクルモードに改称した。東京国際自転車展はその人気に押されて出展社・来場者が激減。2006年に17年の開催にピリオドを打つ。

サイクルモードの特徴は一般来場者が最新自転車を試乗できることだ。そのため多くの自転車好きが集まる。ヘルメットを持参して熱心に試乗する人もいたり、カップルや家族連れも目立つ。ここ数年は全体的に女性の比率が高くなった感があり、自転車人気が一般的になったことを印象づける。こういった人気に応えるため、主催者も試乗コースを拡大。オフロードコースを別に設けるなどで、さまざまな車種を本格的に試乗できるようにした。


「サイクルモード・インターナショナル」は試乗ができるのが特徴

その一方で大手メーカーの出展見送りが相次いでいるのも事実だ。その理由は出展が購買に直接的に結びつかないためだと聞く。イベントとしてこの日だけは最新自転車に乗って楽しむ。しかし予算を握りしめて自転車ショップには行かない。そういった来場者が多い傾向にあるのは時代として仕方がないことで、主催者はその対策として、「購入ディスカウントキャンペーン」を導入するなどで自転車ショップに足を運んでもらう試みを導入する。

毎年のように出展社数が減り、来場者も微減しているサイクルモードだが、会場を回ってさまざまな担当者に話を聞く限りはある程度の存在価値を認め、年に一度のイベントとしてさらなる飛躍を期待したいと好意的だ。さらには埼玉県で別団体の見本市や大手自転車チェーン店も個別に開催し、現在は多様化の一途をたどり、自転車ファンとしてはうれしいところだ。

日本にサイクルショーが始まって50年。その形態を時代に即して変化させながら、今後はどんな楽しみを提供してくれるのだろうか。
《山口和幸》

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