【山口和幸の茶輪記】最近のツール・ド・フランスはボジョレーヌーボーの法則が適用しにくくなった | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【山口和幸の茶輪記】最近のツール・ド・フランスはボジョレーヌーボーの法則が適用しにくくなった

スポーツ まとめ
【山口和幸の茶輪記】最近のツール・ド・フランスはボジョレーヌーボーの法則が適用しにくくなった
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サルドプレスと呼ばれるツール・ド・フランスのプレスセンターによくある光景。テレビモニターではスタート直後から必死で逃げている選手が大写しになっているが、「今日は平坦ステージだからゴール手前に捕まるだろ」と、記者は他人ごとでパソコンのキーボードをたたく。

逃げ続ける選手を無視するつもりはないのだが、平坦ステージの逃げは十中八九ゴール手前で捕まるので、勝負が振り出しに戻るまではほかの原稿に集中したほうがいい。なんて考えている日本人記者はまだ真面目な方で、他国の取材陣はゴールの町が用意してくれた食事やワインを楽しむのに夢中だ。



ボクが現場に足を運ぶようになって四半世紀になる。ようやく右も左も分かるようになって、多少のゆとりが持てるようになった。そうなると若い時期のようにレース展開に一喜一憂することはなくなり、どちらかというとこのイベントを育てたフランスそのものをしっかりと観察しようという気持ちが強くなった。

ツール・ド・フランスというものは「オラが町にサーカスがやってきた!」というノリの全国興行だ。自転車競技はあまり分からないけど、大人たちがワクワクしているから行ってみようという子供たちがいて、実際にレースを見てみたらその迫力とスピードに圧倒されて、「ボクも自転車選手になりたい」と憧れを抱く。町は歓迎ムード一色になり、夏祭りをからませて社交や交流を深める。

国際映像だけが伝えられる海外のファンから見れば、レースの裏側のお祭りムードがあまり報じられないだけに、このレースの魅力は「だれが勝ったか」に集約されてしまうが、実のところ実際の現場は拍子抜けするほど明るくのんびりとしている。



「いいところはたくさんあるが、まずフランスの地形や地域の特徴が覚えられるでしょ」

主催者のプレス担当が半分真顔でこう語っていた。

それはそうだ。日本のツールファンならパリがどこにあるかはもちろん、アルプスやピレネーの位置をみんな知っている。もっと通になると中央山塊やボージュ山脈がどこにあって、ツールマレー峠やガリビエ峠の場所までわかる。ツール・ド・フランスに興味を持つことでいつの間にかフランス通に染まっているのである。

取材陣も仕事をしながらフランス一周の旅をする楽しみがある。毎日のゴール地点は、その地方の特産物を実際に口にして味わういい機会である。ボクも最初は食べたり飲んだりするだけだったが、これってきちんと学習していけばとてもいい勉強になるぞと気づいた。



そんなことをいってもボクだって食べたり飲んだりしているばかりではない。サルドプレスには900人のジャーナリストがやってくるが、その中で日本の新聞原稿の締め切り時間が一番早い。ツールのゴール時間はおおよそ午後5時半に設定されているが、日本時間では深夜零時半。ボクが原稿を出す東京中日スポーツでは東京エリアに配達する最終版の締め切りギリギリだ。いわゆるこれ、ボジョレーヌーボーの法則。日本は最初に日付が変わるのだ。

それに対応するため、だれが逃げていようと「最後は大集団のゴール勝負となり」なんていう予定稿を書いておいて、ゴールしたらすぐに送信する。ただし最近は日本選手が毎年のように出場するようになって、座席を離れてゴール地点で待つことも必要になった。ネットメディアの速報性にかなわない部分もあるので、別の要素で勝負する内容が求められている。ボジョレーヌーボーの法則も時代に即さなくなりつつある。
《山口和幸》

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