前夜はクラブの行事で相模湖の北、陣馬の湯に宿泊。朝9時過ぎに宿を発つと、まずは相模湖を渡って宮ヶ瀬湖を目指します。いくつかあるなかから僕が選んだのは、県道518号線と県道64号線をつないだ最短ルート。ただ途中には山越えもあり、距離は延びるものの国道412号線と県道514号線をつないだルートのほうが楽だったようです。
都市近郊のリゾート地として整備され、水の郷をはじめ観光スポットが点在する宮ヶ瀬湖で小休止。近くには駐車場もいくつかあり、クルマでのアプローチにも便利です。そこから中津川(布川・藤熊川)が刻んだ渓谷を峠に向け上り始めます。山の斜面は紅葉に彩られ、清流とともに渓谷美を演出。ところどころで立ち止まり、その光景をフィルム…ではなくメモリに収めます。
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道幅は1.5車線ほどで、交通量は少ない
道幅は狭いものの勾配はゆるやかで、自他ともに認める貧脚の僕でも、フロントをインナーに落とさなくても平気です(といってもギヤ比は48×27ですが…)。また、短いながら下る区間もあり、そこで息を整えます。人気のない山奥で心細いからでしょうか。出会ったサイクリスト同士、自然とあいさつが口をついて出るのもうれしいものです。
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昭和の名水百選に選ばれた「護摩屋敷の水」で、ボトルに湧き水を汲む
道沿いにある「護摩屋敷の水」は、秦野盆地湧水群のひとつとして昭和の名水百選に選ばれています。これをボトルに詰め、ひと上りすると峠です。手前の「きまぐれ喫茶」で昼食をとって遅れたためか、そこにサイクリストの姿はありません。ジャケットのファスナーを上げて準備を整えたら、あとは秦野まで下るのみです。
首都圏からのアクセスに優れ、ヒルクライムの聖地として知られる表ヤビツは、休日ともなると多くのサイクリストが練習に、あるいは脚試しにと訪れます。その結果、クルマが渋滞するなど地域住民の生活に影響を及ぼし、一昨年にはNHKの番組で取り上げられもしました。自転車に道を走る権利があるのは当然ながら、いたずらにトラブルが生じるのは避けたいものです。その点、表ヤビツも下るだけなら渋滞につながることはありません。
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昼食をとった「きまぐれ喫茶」には、サイクルスタンドが設置されている
また、冬場の峠道は日当りの悪い北側が凍結する恐れがあるため、一般に北側から上って南側に下るのがよしとされています。スピードが出る下りでスリップしたら転倒、さらにケガをするリスクが高まるからです。その点でもこれからの季節、裏ヤビツを上り、表ヤビツを下るのが正解といえましょう。