【インタビュー】iPhone 6/6 Plus、重要なのは体感できる「実効速度」…ソフトバンク技術者 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【インタビュー】iPhone 6/6 Plus、重要なのは体感できる「実効速度」…ソフトバンク技術者

オピニオン ボイス
ソフトバンクモバイル モバイルネットワーク企画本部 本部長の関和智弘氏
  • ソフトバンクモバイル モバイルネットワーク企画本部 本部長の関和智弘氏
  • ソフトバンクモバイル モバイルネットワーク企画本部 本部長の関和智弘氏
 9月19日、ついにiPhone 6/6 Plusが発売された。予約初日だけで全世界400万台を集めた新モデルは、販売開始から3日間で1,000万台という新記録を樹立した。

 では、これだけの台数のiPhone 6が世に出回ったら、一体何が起きるのか? そこで気になるのが、通信におけるトラフィックの変化だ。新たにTD-LTEでの通信が可能となり、VoLTEへの対応も噂されているiPhone 6。これを多くの人が利用すれば、キャリアの通信サービスにおけるストロングポイントが一変する可能性もある。

 このような状況の中で、各社は一体どのような戦略でiPhone 6商戦を戦っていくのか。今回は国内でいち早くiPhoneを導入した、ソフトバンクモバイル モバイルネットワーク企画本部 本部長の関和智弘氏に話を聞いてみた。

■TD-LTEで100Mbpsが当たり前の時代に

――まずは、iPhone 6はソフトバンクのどの周波数に対応したのか、改めて確認させてください。

関和:従来の2.1GHz、1.7GHz、900MHzに加え、今回新たにAXGP(TD-LTE互換。以下TD-LTE)網を運用している2.5GHzに対応しました。これは弊社の高速データ通信サービス「SoftBank 4G」が利用している周波数帯になります。4つの周波数帯が利用可能なのは、当社のみになります。

――TD-LTE網が利用できるようになったことで、どのようなメリットがありますか?

関和:従来のFD-LTEに対応した基地局に加え、、TD-LTEに対応する約5万局が加わり、広いエリアで2層による高速通信が可能となりました。端末とネットワークの両面から“Hybrid 4G LTE”が完成したことになり、112.5Mpbsと110Mbpsの二つの安定した最高のネットワーク環境を提供する準備できたと考えています。

――iPhone 6が登場したことによる、ソフトバンクユーザーのメリットとは何ですか?

関和:利用できる周波数帯が一つ増えたことで、従来の回線が混雑しているエリアでも、快適な速度で通信ができるようになります。また、TD-LTEを利用すれば、今まで以上に安定したスループットで通信することが可能です。

――ソフトバンクにおけるTD-LTEという電波のポジションを教えてください。

関和:TD-LTEのネットワークでは、その多くに既存のウィルコムの基地局を利用しています。その特徴は小セル化が進んでいることで、お客様が多いエリアでは相当な密度で展開しています。ですので、回線キャパシティが苦しい場所では、TD-LTEが加わることで、パケ詰まりなどを起こさずに済むようになります。

――FD-LTE網に比べると、通信速度は速くなるのでしょうか?

関和:相対的に見るとネットワークが空いているので、同じ場所でもTD-LTEの方がスピードが出やすいですね。都内ではFD-LTEで大体20Mbps前後出ているところで、30~40Mbpsで通信できるようになる。回線が混雑している状況でも、TD-LTEであれば維持できるでしょう。なので、iPhone 6を利用すれば、特に混雑しているような場所と時間で、いつもより通信速度が速くなると思います。


■通信品質向上のためのソフトバンクの取り組みとは?

――ほかにも、「Softbank 4G LTE」などが利用している2.1GHz帯で、FD-LTEが使用する帯域を15MHz幅まで拡張しているという話もあります。

関和:弊社ではお客様がリアルに感じている通信速度を大切にしたいと考えております。これまで、FD-LTEでは帯域幅10MHzで、最速75Mbpsのサービスを提供してきました。これを、iPhone 6の提供が開始されるまでに、相当数の基地局で帯域幅15MHz、最速112.5MHzまで引き上げました。通信速度で100Mbpsを超える基地局は、3社の中でもソフトバンクが最も多くなります。ピークレートを向上させることで、ユーザー密度の濃い場所でも、ストレスを感じることのない通信環境が望めるようになるでしょう。

――具体的には基地局数でどのぐらいの差が出るのですか?

関和:総務省ホームページおよび他社の発表によると、2014年8月時点ではソフトバンクが約6.7万局を所有しています。それに対して、ドコモは約3.9万局、auは約3.5万局となり、100Mbpsを超える基地局数では、他社を2倍近く上回っているのがお分かりいただけるかと思います。なお、ソフトバンクではTD-LTEを利用した「Softbank 4G」を2012年3月に開始しましたが、約2年間で基地局数を4倍以上に増やしました。

――RBB TODAYでは通信速度の測定企画を定期的に行っていますが、ソフトバンクは都市部に強いイメージがあります。何か御社独自の取り組みがあるのでしょうか?

関和:一つの基地局を利用するエリア内にユーザーが増えると、トラフィック増加によるパケ詰まりが起きやすくなります。そこで、弊社としては小セル化戦略で、この問題に取り組んでいます。小セル基地局は電波の到達範囲が狭くなりますが、数を多く設置できるので、ひとつの基地局に接続する端末台数を減らすことが可能です。それに加えて、最近では2.1GHzと1.7GHzのダブルLTEの密度を上げることに力を入れています。最近では特に都内で1.7GHzに対応する基地局が増えているので、これが繋がりやすさにも間違いなく貢献しています。

――ほかにも、ソフトバンク独自の取り組みは何かありますでしょうか?

関和:弊社独自のものとしては、電波の繋がりにくい場所を検出するためにビッグデータ分析を行っています。これにより、繋がりにくい場所や曜日、時間帯だけでなく、通信エラーが起きた原因などの分析が可能です。このうち、電波が繋がらないエリアでは新たな基地局を建てますし、パケ詰まりが起きている場所ではダブルLTEを上手く活用する。具体的には複数の基地局がカバーしているエリアでは、混雑している基地局を避けるように接続させているわけです。異なる周波数帯を利用することで、互いの通信が干渉することなくトラフィックを分散できます。

――通信状況の情報収集はどのように行っているのでしょうか?

関和:Agoop社による調査結果を採用しています。速度に関して同社では速度測定アプリ「スピードチェッカー」「電波つながりチェッカー」をiPhoneおよびAndroidに提供しており、その400万件(上り200万件、下り200万件)以上におよぶ膨大な通信ログが集計されています。ちなみにこの調査結果(下りの平均測度)によると、ドコモの11.51Mbps、auの10.37Mbpsに対して、ソフトバンクは12.71Mbpsを記録し、No.1となっております。またつながりやすさを表す「パケット接続率」でも他社を抑え、1位を継続中です。

――高速な通信サービスを複数持っているソフトバンクの強みが出ましたね。

関和:アンドロイド端末でも昨年末から『Hybrid 4G LTE』として、TD-LTEとFD-LTEの両方に対応した端末をリリースしています。今後は基本方針として、あらゆる端末で弊社が持つ全ネットワーク資源を利用できるようにしたいと考えています。

――スプリントの買収によって得られるシナジーにはどのようなものがありますか?

関和:米国本土やハワイ、プエルトリコなどで、国内と同等の料金で音声通話とデータ通信が利用できる「アメリカ放題」のサービスを開始しました。また、スプリントはクリアワイヤを買収したことで、大規模なTD-LTEのネットワークを手に入れました。このため、技術的にも双方のノウハウを活用しやすい状況となっています。

■iPhone 6を踏まえた今後のネットワーク戦略

――iPhone 6への乗り換えが進むことで、周波数帯ごとの使用率はどのように変化するのでしょうか?

関和:iPhone 6では屋内や移動時には900MHzや2.1GHz、2.5GHzを使用しますが、街中ではかなりの確率でTD-LTEを利用することになると想定しています。都内で6対4か、それ以上になるかもしれません。その時点で最も速度がでるネットワークに繋げるコントロールになるので、結果としてそのぐらいの比率になるのではないでしょうか。

――こうした現状を踏まえて、今後はどのようなネットワーク戦略を取ることになるのでしょうか?

関和:小セル化をさらに進めることで、ユーザーの方に快適な環境で通信をご利用いただけるよう整備を進めていきます。キャリアアグリゲーションの速度についても150Mbps以上を準備中です。9月26日に発売予定のPocket WiFi 303ZTにおいては、下り最大165Mbpsに対応しています。ほかにもLTE-Advancedと呼ばれる技術を駆使して、次のステージのLTEサービスを今年末から来年にかけてご提供できるように準備を進めています。

――こうした取り組みによって、ソフトバンクのPhone 6ユーザーには、他キャリアに比べてどんな優位性が見えてくるのでしょうか?

関和:TD-LTEの基地局数は他社に比べて断トツに多いですし、100Mbpsを超える基地局数も増えている。体感としては非常に高速な通信環境をご提供できると思います。中でも、都市部での体感速度は、非常に高いレベルに持ち上げられたと考えています。

 TD-LTEに対応したことで、ソフトバンクにおけるiPhoneの通信品質は大きく向上した。ソフトバンクの回線が持つポテンシャルは相当なものと言えるだろう。発売日19日にRBBTODAYが実施した都内5ヵ所の速度調査でもソフトバンクが優勢となった。今後のソフトバンクの動向に注目していきたい。

【インタビュー】iPhone 6/6 Plus、重要なのは体感できる「実効速度」……ソフトバンク技術者に聞いた

《丸田@RBBTODAY》

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