【まとめ】日本と世界各国の「フリーゲージトレイン」その違いは? | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【まとめ】日本と世界各国の「フリーゲージトレイン」その違いは?

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軌間可変列車の実用化では世界でスペインが先行している。写真は両端に動力車を連結した「タルゴ250」(スペイン国鉄での形式はS130形)
  • 軌間可変列車の実用化では世界でスペインが先行している。写真は両端に動力車を連結した「タルゴ250」(スペイン国鉄での形式はS130形)
  • フリーゲージトレインの新試験車両。モーターに東芝のPMSMが採用された。
第3世代となる新試験車両の走行試験が始まった軌間可変電車(フリーゲージトレイン、FGT)。日本以外の軌間可変車両といえば、すでに営業運転を行っているスペインの例が世界的に有名だが、他にもさまざまな技術が開発されている。主な軌間可変システムをまとめてみた。

【スペイン】
実用的な成功例として最も早く軌間可変車両を実現したのはスペインだ。スペインの在来線は軌間1668mmの広軌で建設されたため、日本の新幹線と同じ標準軌(1435mm)を採用している欧州他国への乗り入れには国境での台車交換が必要だった。

これを解決したのが、1968年に登場した軌間可変機構を備えた1軸連接客車「タルゴIII RD」形だ。「タルゴ」はもともと、曲線の多いスペインの在来線(広軌・1668mm)を高速走行することを目的に開発された客車で、カーブでの通過をスムーズにするために左右の車輪を結ぶ車軸がなく、それぞれが独立して回転する独特のシステムを採用していたが、車軸のない構造だったことが軌間可変機構には有利となった。

「タルゴ」の軌間可変機構は国際列車用として開発されたが、1992年以降スペイン国内で急速に整備された高速新線(新幹線)網は基本的に軌間1435mmの標準軌となっているため、近年は高速新線と在来線の直通列車用として国内でも軌間可変車両の需要が高まっている。現在は両端に軌間可変機構を備えた機関車を連結した「タルゴ」編成も活躍している。

2013年7月に脱線事故を起こした高速列車「Alvia(アルビア)」も、タルゴ客車の両端に機関車を連結した構造の「タルゴ250(メーカーでの名称)」と呼ばれるタイプの車両だったが、軌間可変機構は事故とは無関係だ。

スペインの軌間可変車両は「タルゴ」だけと思われがちだが、軌間可変機構を備えた電車やディーゼルカーも既に営業運転を行っている。同国の車両メーカー、CAF社の軌間可変システム「BRAVA」は日本のFGTと同様に車軸のある構造で、スペイン国鉄(renfe)のS120形高速電車、594.2形ディーゼルカーなどに使用されている。CAF社は同システムを既存車両の改造にも使用できるとしており、実際に594.2形ディーゼルカーは広軌用だった車両を改造して登場した。


(BRAVAシステムの解説動画)

これらの車両は動力分散式の軌間可変車両のため、日本のFGTと一見似ているが、大きく異なるのが動力伝達の方式だ。日本のFGTが台車に取り付けたモーターから車軸を駆動する一般的な電車のシステムであるのに対し、S120形電車などはディーゼルカーのように、車体に取り付けたモーターからシャフトで車軸を駆動するシステムを採用している。

今のところ、営業運転を行っている動力分散式の軌間可変車両は世界でもこれらの車両だけだが、営業最高速度は250km/hで、日本のFGTの設計最高速度よりやや低い。軸重もFGTの新試験車両が最大11.5tのところ16.2tで、欧州では標準的だが日本の新幹線より重い。

【欧州~ロシア方面】
欧州では、1435mmの西欧・東欧諸国と旧ソ連諸国をはじめとする軌間1520mmの国々との直通も輸送のネックとなっており、軌間可変車両の研究開発が行われてきた。ポーランドでは「SUW2000」と呼ばれる客貨車用の軌間可変システムが開発され、リトアニアやウクライナへの国際列車に使用されている。

SUW2000の特徴は、軌間変換のシステムが輪軸内にすべて収まっている点だ。日本のFGTやスペインのタルゴ、BRAVAシステムでは、車輪の位置を移動したあとに固定するロック装置が車輪の外側にあり、軌間変換の際には線路の外側に設けた支持レールが台車外側の軸箱を支え、車両の重さが車輪にかかっていない間に軌間を変更する。

これに対し、SUW2000は車輪の輪軸内にロック装置が収まっており、車輪に車体重量がかかったままで線路の内側に設けられた変換装置を通過して軌間変更を行う。ドイツで開発されたDBAG/Rafil Type Vと呼ばれるシステムも同様の機構で、両者は線路に設置する軌間変換装置も共用できる構造となっている。


(SUW2000の解説動画)

これらのシステムは国際列車の台車交換や輪軸交換の時間を省くことが目的で、今のところ客貨車のみに使用されている。最高速度も160km/hとなっており、高速鉄道と在来線の直通運転を目指す日本のFGTとは開発・使用の目的が異なるといえるだろう。

【スイス】
スイスには「メーターゲージ」と呼ばれる軌間1000mmの狭軌鉄道が多く存在する。「ゴールデンパス・ライン」と呼ばれる観光ルートも軌間1000mmの路線と1435mmの路線が混在し、2回の乗り換えを強いられているが、同ルートを構成する狭軌のモントルー・オーベルラン・ベルノワ鉄道(MOB)は軌間1000mmと1435mmの両方を走行できる軌間可変客車の導入を計画している。

同線で使用を予定している軌間可変台車は通常のボギー台車だが、車軸のない左右独立車輪となっており、2010年には既存の客車に取り付けられた試作品が公開された。「ゴールデンパス・ライン」は一部にラックレールを使う路線があることから、技術的な問題により全区間の直通はできないが、軌間可変客車の導入で乗り換えの回数は1回に減る。軌間可変客車による直通列車は2015年にも運転を開始する予定となっている。

標準軌の1435mm以外で鉄道網が建設された国は日本以外にも世界に数多くあるが、一方で新しく建設される高速鉄道はどの国でも1435mm軌間がほとんどだ。狭軌の1067mm軌間と標準軌の1435mm軌間を高速で直通運転でき、かつ欧州の技術よりも軽量な日本のFGT。実用化が近づくにつれ、世界の注目もより高まっていくだろう。
《小佐野カゲトシ@RailPlanet レスポンス》

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