【BMC teammachine SLR01 インプレ vol.2】従来のものとは大きく異なる解析方法…安井行生 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【BMC teammachine SLR01 インプレ vol.2】従来のものとは大きく異なる解析方法…安井行生

オピニオン インプレ
BMC teammachine SLR01の徹底インプレッションvol.2。今回はフレーム設計に切り込む。
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BMC teammachine SLR01の徹底インプレッションvol.2。今回はフレーム設計に切り込む。

一般的に、ロードフレームのFEM解析は「こういうカタチにしよう」という先行概念があり、デザイナーが起こしたフレームデザインにカーボンレイアップを後付けしていく。「この形じゃダメだ」となったら盛る・削るを繰り返す。よって、出来上がるフレームの姿は「既に作られていたカタチ」にどうしても影響を受ける。「設計が途中から始まっている」「人のアイディアが息づいている」とも言える。

今回のSLR01は、先行概念を設けず、専用ソフトで白紙状態から作り上げたフレームなのだという。「こういうカタチのフレームはどうだろう?」というアイディアを基にFEMを使って辻褄を合わせていくという従来の解析方法とは、意味合いが全く違うらしい。

そして、やはり重要なのは回数ではなく、アルゴリズム(計算方式)だった。解析の仕方そのものが特殊で、膨大な数の候補を戦わせて優劣を決しながら絞っていくというピラミッド方式なのだという。レベルの低い候補たちを振るい落としていきながら、性能が34000分の1の頂点(剛性・重量・快適性がバランスする最高地点)を目指してだんだんと収斂していくのだ。しかしBMCが採用したこのアルゴリズムだと、答えが最後に一つになることはないらしい。常にどこかを変更したライバルを出現させ、それと比較する方法で検討が行われるからである。

これでは計算が永久に終わらないように思えるが、コストや使えるカーボンのグレード、ユーザーが求める性能レベル、UCIルールなどの制約条件があるため、最終的にはフレーム2パターン、フォーク2パターン、シートピラー2パターンが残ったところで解析を終了。これらの組み合わせ(2×2×2で全8パターン)をBMCレーシングのエバンスやジルベールらにテストさせ、最終的に最も優れている組み合わせで商品化したのである。話を聞く限り、この8パターンのファイナルサンプルの性能はかなり近いところにあったのではないかと思う。

要するに、「“700Cロードフレームのカタチを維持する”、“UCIルールから逸脱しない”という最低限の制約以外に形状条件を設定せず、常にライバルを出現させて性能を競わせていく」という解析方法こそがキモなのだ。

それにしてはフレームのカタチが前作に酷似しているのはなぜなんだ?と言いたくなるが、これは「良し悪しの判断が必要とされる分岐点では、BMCが良しとする方向が選択されたのではないか」とのこと。エンジニアは、「他メーカーでは、常にライバルを出現させるというこの演算方式の真似ができない。計算方法そのものも見つからないはずだ」と胸を張っていたという。
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