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
ブランド初となる超軽量車、EMME695を素晴らしい完成度に仕上げてきたイタリアのボッテキア。時を同じくして、旗艦となるEMME2にもモデルチェンジを施している。2012モデルのEMME2のあまりに硬派な走りに打ちのめされた安井は、2013モデルのそれに何を感じたか。そして、EMME2とEMME695が織りなすコントラストに、何を思ったか。
(text:安井行生 photo:我妻英次郎/安井行生)
前回のEMME695に続き、今回もボッテキアである。このEMME2は、EMME695と並ぶボッテキアの旗艦。近年、積極的にトンガったフレームを作るボッテキアの中でも最も辛口なモデルとなる。今回は、日本の代理店を通じて本国の設計担当者に話を聞くことができた。質疑応答をはさみながら、検分を進めていくこととする。
まず、フレームを細かく見ていく。見た目は実にシンプルな一台である。EMME695と同様、チューブは基本的には丸断面で、形状上の工夫は少ない。形から推察するにフレームのコンセプトは、ヘッドチューブ~ダウンチューブ~チェーンステーで剛性を出して、シートステーで快適性を確保するというもの。フレーム下側を太くがっしりと作って剛性を上げ、上側をスリムにして振動を逃がすというお決まりの手法で作られているようだ。製造方法は、EMME2もEMME695と同じくチューブtoチューブ。先に各パイプを成型しておき、接合部をカーボンシートで巻いてフレーム体に仕上げる製造法である。フレーム単体重量は900g (サイズ49、塗装済み)。
Q:まず、フレームの設計についてざっくりと教えてください。
A:EMME2はプロライダー達の特別な要求に応えるべく開発されたフレームであり、選りすぐられた技術の結晶です。剛性は、チューブ自体の設計とチューブtoチューブという製法上の構造によって得ています。また、薄いシートステーによって剛性と強度を犠牲にすることなく高い快適性を生み出しています。
やはりボッテキアは、チューブtoチューブ製法にはオーダーが可能になるということ以外に、剛性面・性能面でもメリットがあると考えているようだ。しかし、最新モデルなのに新規格の採用は見送られている。大口径BBを採用するEMME695に対し、EMME2のBBはノーマル規格。ピラーも通常タイプであり、上下異径ヘッドは採用しているものの、新しい規格はほとんど見られない。
Q:なぜインテグラルシートポストや大口径BBを採用しなかったのでしょうか?
A:スタンダードバージョンではインテグラルシートポストやBB30は装備されておりませんが、カスタマーの要望に応えられるよう、オプションとして用意しております。
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
EMME695と同様に、製造から塗装まで本国イタリアで行われることもEMME2の特徴だ。
Q:生産コストで不利になることを承知で、イタリア製にこだわる理由とは?素材と製造方法が全く同じなら、台湾でも中国でも同じものが作れると思うのですが。
A:EMME2に採用されているチューブは、フェラーリやドゥカティといったモータースポーツ関連の仕事を請け負っているいくつかの重要なイタリアの工場との共同開発によって産み出されました。フレームは熟練の職人達によって組み立てられており、短期間でのカスタム対応も可能です。品質、サービス、カスタマイズ等、どれをとっても台湾製では実現不可能なことなんです。
あまり規模の大きくないブランドにとって、遠く離れた国での製造工程における高度なクオリティコントロールは難しいものがあるのかもしれない。コストがかかっても 「品質」 を選ぶボッテキアの姿勢は支持したい。こういうメーカーがなくなると困る。
2012モデルとの大きな違いはシートチューブ。TTフレームのようにシートチューブがリアホイールに沿うように湾曲している。これにより、2012モデルと比べてリアセンターが5~6mm縮まっており (フレームサイズによって異なる)、リアセクションの剛性が5%アップしているという。最小サイズで比較すると、EMME695もリアセンターは短かったが (400mm)、2013モデルのEMME2はさらに短く、395mmとピストフレーム並の数字になっている。
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Q:変速性能が落ちる可能性があるのに、チェーンステーを短くした理由とは?クロモリなどの素材と違って、カーボンならグレードや積層を変えることでリアセクションの剛性アップは比較的容易に行えるのでは。
A:ステファノ・ガルゼッリとアクア・エ・サポーネのメカニック達は、2011年のジロ・デ・イタリアにおける過酷な山岳ステージで最高のパーフォーマンスを発揮させることのできるフレームの開発を依頼してきました。そこで我々は、ペダリングに対するベストな応答性を実現すべく、可能な限り短いチェーンステーを開発したのです。ダウンヒルでの安定性を損なうのでは…という心配もあったのですが、ガルゼッリはその不安を払拭してくれました。ガルゼッリは、上りでも下りでも安定性を失うことのないこのフレームを駆って、ベストクライマーとして見事にグリーンジャージーを手中にしました。この勝利を踏まえ、さらにいくつかのテストを重ねた結果、非常に短いチェーンステーという特長を備えたEMME2が市販モデルの量産ラインに乗ったのです。
チェーンステー断面は縦に長い長方形。数年前まではこのような形が普通だったが、最近はレース志向であっても横方向に扁平させたりBB側とエンド側で断面積を大胆に変化させたりして、そこで積極的にしなりをコントロールして高性能を得ようとしているフレームが多くなっている。キャノンデールは、EVOや新型シナプスでチェーンステー断面を縦楕円~横楕円と複雑に変化させ、さらに中央部で断面を縮小させ絞っている。キャノンデール曰く、断面が縦に長い昔ながらのチェーンステーでは、縦方向には硬く、横方向には柔らかくなってしまい、「上下方向には柔軟に動いて悪路でも路面にタイヤを追従させ、左右方向には動きにくく脚力を無駄にしない」 という理想の動きとは逆になってしまうというのだ。トレックのエンジニアは、「チェーンステーの両端にはかなり剛性をもたせなければならないが、中央部分は剛性を落とし、あえてしなるような作りにしている」 と言っている。しかし、EMME2は縦に長い長方形断面を採用し、BBからエンドまで断面形状がほとんど変わらない。
Q:チェーンステーを細くしたり偏平にしたりして快適性を上げているブランドも多いですが、EMME2のチェーンステーを昔ながらの長方形断面にした理由とは?
A:経験、プロライダー達の協力、机上でのシミュレーション、テストライドを積み重ねた結果、我々が得た結論なのです。
大きな力がかかる場所なのに、各社の思想がここまで違うとは興味深い。
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