トレック2.1 ベーシックなカーボンバック入門モデル vol.2 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

トレック2.1 ベーシックなカーボンバック入門モデル vol.2

オピニオン インプレ
鮮やかなカラーリングが映えるミドルグレード 基本設計に優れ、幅広い用途で楽しめる

この2.1を一台目のロードバイクとする人は多いだろう。それは非常に正しい選択だと言える。よく走るアルミメインフレームに、シートステーにはしっかりとTCTカーボンが入っている。性格は良い意味で極々普通に仕上げてあり、クセがない。個人的にはとりたててリーズナブルだとは思わないが、ビッグブランドの絶大な安心感があるのは大きな魅力で、他メーカーが真似しようとしてもできないプライスレスな部分である。
前作のようなアスリート的イメージが薄れたカラーリングも、シャープで嫌味がなく、いかにも “アメリカン・グッドガイ” という感じ。ペイントの仕上げも非常に丁寧で、ミドルグレードの塗装とは思えないほど綺麗である。
変速系統は信頼のシマノ製。シマノトップグレードに慣れてしまっている僕でさえ、ティアグラの変速性能のよさには驚くところだ。何のストレスもなくスパスパカチカチと変速してくれる。極限のレースでもない限り申し分ないシフトフィールだ。さらに体力に自信のない人でも安心なコンパクトクランクが付き、コンフォートかつスポーティーなサドルがセットされる。

唯一残念なのは、カタログに<Alloy Dual Pivot>とだけ記載されているノンブランドのブレーキキャリパーだ。試乗車だけの症状だとは思うが、スプリングの力が弱く、ブレーキレバーから手を離してもアームが戻りきってくれなかった。握りこんでもムニュッとしたタッチはなんとも心細く、肝心の制動力においても、サイクリング程度なら充分だろうが、本格的なライディングを考えると物足りない。シューの品質も良いとは言えず、すぐにリムの金属片が食い込んでしまうのでブレーキングの度にシャーシャーと不快な音を立てる。ブレーキがこれでは、この2.1を一台目の愛車とするビギナーは 「ロードバイクのブレーキってこんなに効かないものなのか」 と思ってしまうかもしれない。

ロードバイクならではの走りを教えてくれる グッドバランスの素質を持つエントリーモデル

確かに、コスト的に厳しい価格帯だろう。だが、それならリアディレイラーを105にしなければいいのだ。シマノの変速性能を考えれば、そんな必要は全くない。メインコンポはティアグラなのだから、リアディレイラーもティアグラで充分である。自慢ではないが、105とティアグラのリアディレイラーの性能差をブラインドテストで当てる自信はゼロだ。
リアディレイラーがワングレード上のものがついているだけで喜んでしまうような無知で無邪気なユーザーはだんだん少なくなってくるだろう。ジェイミス・ヴェンチュラの回でも書いたことだが、この2.1を買う人には、同時に105か、メインコンポーネントに合わせてティアグラのブレーキキャリパーを買うことをお勧めしたい。繰り返すが、たった8000円 (105の場合。ティアグラは5000円) ほどで上質なブレーキフィールと、“安全” が手に入るのである。ヘルメットやライトなど、事故に遭遇したときの安全性 (=パッシブセーフティー) はもちろん重要だが、「しっかりと止まる」 という事故を未然に防ぐ安全性 (=アクティブセーフティー) はそれ以上に重視するべきだ。

誤解してほしくないのだが、バイク自体を悪く言っているのではない。ジェイミス・ヴェンチュラにしろこのトレック・2.1にしろ、バイクそのものの性能は良い。基本性能はしっかりしているし、シーンを選ばず元気に走ってくれる。2.1のメインターゲットになるであろう 「初めて本格的なスポーツバイクを買う人」 には、ロードバイクで走る楽しさを存分に教えてくれるに違いない。 しかしブレーキタッチ・制動性能の良し悪しは、バイク全体の印象を大きく左右してしまう。この2.1に上質なブレーキフィールが加われば、良く走り良く曲がり良く止まるという、本当にバランスに優れたバイクとなるだろう。だからこそ、僕はこのブレーキが残念なポイントだと感じるのだ。
宣伝の一翼を担うような文章は書きたくないと常々思っているので、あえて厳しく書かせてもらうが、「パーツが担う働きの重要度を深く考慮せず、目立つ箇所に見栄えの良いパーツを付ける」 というパーツアッセンブルは、もはや時代遅れになりつつある。それはメーカーの欺瞞もしくは自己満足である、という意識がビギナーユーザーにまで浸透する日も近いだろう。
《編集部》
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