匠の情熱が詰まったカスタムカーボンフレーム vol.1 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

匠の情熱が詰まったカスタムカーボンフレーム vol.1

オピニオン インプレ
安井行生のロードバイク徹底インプレッション
安井行生プロフィール

イタリアの職人技とドイツの精密な製品作りが融合 匠の情熱が詰め込まれたカスタムカーボンフレーム
イタリアのフレームビルダー、マウロ・サニーノ氏がハンドメイドするC-F1。カーボンシートの間にハニカム構造のケブラー繊維を挟み込むという今までにない構造を用いたスペシャルモデルはどんな走りをしてくれるのか?安井が箱根峠を走ってレポート。今回はあまりの気持ちよさに400kmを走破してしまったらしい。
(text:安井行生 photo:我妻英次郎/安井行生)
ドイツのミュンヘン近郊、アルプス山麓に本拠を置くIKO社のスポーツバイクブランドがコラテック。フルアルミフレームからアルミ・カーボンコンポジットフレーム、フルカーボンTTバイクなど幅広いモデルを揃えるビッグブランドだ。もちろん、スーパーボウなどに代表される独自性に富んだMTBもラインナップされ、ロードではプロコンチネンタルチームのフォルクス・バンク、MTBではフィリップ・メラーグなどにバイク供給も行っている。
ロードラインナップの頂点に位置するのが、サニーノモデルと呼ばれるバイクである。イタリアの最後の名匠と言われるフレームビルダー、マウロ・サニーノ氏をコラテック本社の専用ファクトリーに迎え、彼の手によってカスタムハンドメイドされるというスペシャルモデルだ。
サニーノモデルの中でも、氏が作り出す究極のフレームがこのC-F1である。有名なF1チームから供給されるという素材を使用し、ケブラーハニカムをカーボンシートでサンドイッチするという特殊なパイプで組まれている。基本的にはオーダーによって製作され、サイズはもちろん、剛性感やスローピング/ホリゾンタルのオーダーなども可能だという。
試乗車は一般的なジオメトリで組まれた固体だが、今までのバイクとは異なる構造を持っているため、カタログスペックやエクステリアからだけではどんな乗り味なのか全く想像がつかない。個人的に興味をひかれたバイクだったこともあり、箱根まで出かけて峠を二日間駆け回ってきた。

スペック

オーバーエンジニアリング?しかし… この傑出した上質さは誰にも真似出来ない!

フレーム価格60万円超のロードバイクをつかまえてこういうことを言うのもなんだが、見た目はこれ以上ないほどフツーである。カーボンむき出しの表面はブランドステッカーを乗せて上から軽くクリアを吹いただけ。グラフィックと呼ぶにはあまりにも質素だし、パイプ形状もいたってノーマルだ。あえて言うなら、リアブレーキ取付部のステー形状にわずかなオリジナリティを見出すことが出来るくらいだろうか。
凄いのはその中身である。
ダブルウォールのカーボンチューブ、ケブラー繊維、ハニカム構造。
まるでフォーミュラ・ワンの世界だが、実際にマウロ・サニーノ氏とF1マシン製作技師がタッグを組み、有名F1チームから素材の供給を受け、ハニカム構造のケブラー繊維をハイモジュラスカーボンシートで挟み込んだチューブを開発したのだという。この特殊なカーボンチューブは、C-F1のトップチューブとダウンチューブに使用されている。
しかし、いくら競技用自転車と言えど、F1のように300km/hでのクラッシュを想定する必要もないし、800馬力を受け止める強靭さも、4.5Gにも達するコーナリングフォースに耐えうるねじり剛性も要らない。僕らの常用スピードは時速30km前後、せいぜい50km。エンジンは死ぬほど頑張っても1馬力に満たない。フレーム構造はこれ以上ないほど単純。
そんな自転車のフレームに、“ハニカムカーボンサンドイッチ構造” だ。普通に考えればオーバーエンジニアリングじゃねぇのと言いたくなるところである。しかも通常のカーボンフレーム製造に比べてどれだけの手間がかかることか。

さてはどんな剛性の塊かと身構えて踏み込んでみれば、過激な加速性能や無比な高剛性でライダーを驚かせるような下品なバイクではないことがすぐに分かる。 「ケブラーがなんたらハニカムでどうたら」 という仰々しいイメージとは程遠く、極めて上品なのだ。
まず虜にさせられてしまうのは、操る者をうっとりとさせる、透明で清々しい加速フィール。爆発的な加速力はないものの、C-F1のペダル一回転は、絹のごとき滑らかさでライダーを直ちに魅了する。
ヒルクライムでも、これぞ極上!の踏み味がライダーを包み込む。まろやかでスムーズで、乗り込むにつれて輝きを増していく。ハンドルのショルダー部分を持ってシッティングでペダルを回すと、まるで空港にある 「動く歩道」 に乗ったような感覚でスーッと登り始める。
特にシッティングで驚くほどよく進むのは、絶妙なバランスのメインフレームに加え、しなやかなフォークに理由がありそうだ。フォークに負担をかけるような前荷重ダンシングよりも、しっとりと踏むシッティングのほうが向いているだろう。
《編集部》
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