“手元が浮かない” 米ツアー再挑戦を視野に入れる小平智のインパクトに見る正確なショットのポイント | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

“手元が浮かない” 米ツアー再挑戦を視野に入れる小平智のインパクトに見る正確なショットのポイント

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“手元が浮かない” 米ツアー再挑戦を視野に入れる小平智のインパクトに見る正確なショットのポイント
  • “手元が浮かない” 米ツアー再挑戦を視野に入れる小平智のインパクトに見る正確なショットのポイント

14日から、そして21日から開催された北海道シリーズ2戦は、比嘉一貴と小平智という、海外ツアーを主戦場にした経験を持つ選手が優勝した。

高額賞金となった第2戦のISPS HANDA 夏の決戦・誰が強いんだトーナメントを制した35歳の小平は7年ぶりの優勝。賞金ランキング5位に浮上し賞金王争いに加わってきた。

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■小平は元々ショットの精度が高い。

賞金ランキング2位になった2017年は、トータルドライビング2位でパーオン率が1位。飛んで曲がらず確実にグリーンに乗せる。そんなゴルフを展開していた。

2023年まで主戦場にしていた米ツアーでのフェアウェイキープ率は、22-23年が3位、21-22年が2位、20-21年が9位と、ティーショットの安定感が高かった。

小平らしいゴルフが北海道シリーズ第2戦では見られたわけだが、小平のスイングを見るとアドレスとインパクトでの手の高さに目が留まる。

■北海道シリーズ2戦目パーオン率1位

小平のパーオン率を見てみる。

今季のパーオン率は47位と、本来のショット精度ではないが、北海道シリーズ第2戦のパーオン率は1位。1イーグル7バーディとビッグスコアを叩き出した最終日は18ホール中パーオンしなかったのは1ホールのみという安定感だった。

北海道シリーズ第1戦、ISPS HANDA 夏に爆発どれだけバーディー取れるんだトーナメント 2025は予選落ちに終わった。だが、初日はパーオンしなかったホールが1ホールだけ。ショット復調の兆しを見せていた。

6月に韓国で開催されたハナ銀行 インビテーショナルで手ごたえを感じていたようで、大会後、インスタグラムに「これだ!ってものを掴んだ。夏までに修行して固めます。8月から小平智大爆発します」と投稿。

松山英樹ら米ツアーや米下部ツアーを主戦場にしている日本選手らと、アメリカで練習をともにしたことによる収穫もあり、今回の優勝、特に最終日のプレーは予言通りの大爆発となった。

■インパクトで手元が浮かない

小平はややハンドアップでアドレスする。プロツアーでもトゥ側を少し浮かしてアドレスする選手の方が多い中、あまりトゥ側を浮かさずにアドレスしている。

そしてインパクトでは手元が低い。アドレスとほぼ同じ位置に手が戻ってきている。

ゴルフクラブはグリップエンド側よりもヘッド側が極端に重く、インパクト前後ではグリップエンドや手元が浮き上がりやすくなり、ヘッドが垂れ下がりやすく(トゥが下がりやすく)なる。

インパクト前後でヘッドが下がるということは、フェースの開閉が激しくなるということ。また、ヘッド軌道が基準の軌道から外れやすくなる。

小平は手元の浮き上がりを抑えることで、フェースの開閉やヘッド軌道の乱れを抑えている。

アドレスはハンドアップにしてグリップエンドを下げる余地を残しておき、インパクトでは、手元を浮かさずにグリップエンドを下げることで、ヘッド軌道やフェースの向きの再現性を高めているのだ。

一般ゴルファーに目を向けると、インパクトでのトゥの垂れ下がりを防ごうと、インパクト前後に手首(クラブと腕の角度)をキープする取り組みをしているゴルファーは多いのではないだろうか。

手首を固める意識を持つことは、腕の力みにつながりやすくなる。手首は、横(背屈・撓屈)だけでなく縦(撓屈・尺屈)の可動域が確保するように適度にやわらかさを出しながら、手元を浮かさない感覚を磨いていった方が、過度なフェースの開閉やヘッド軌道の乱れを防ぎやすくなるだろう。

■米ツアー再チャレンジへ

小平は2018年にスポットで参戦したRBCヘリテージで優勝してから23年までは米ツアーを主戦場にしていた。

昨季2024年の米ツアー出場権をかけた最終予選会では出場権獲得まで1打足りなかった。昨季中盤からは主戦場を日本に移し、今季は開幕戦から日本ツアーに出場している。

ただ、このまま日本で、というわけではないようだ。

今回の優勝には、賞金王のチャンスが出てきたこと以上に、米ツアー予選会最終ステージからの挑戦権(※)を獲得できるチャンスが大きくなったことの方に嬉しさを感じている様子。

複数年シードを獲得したことで、来季以降の日本ツアー出場権の心配をせずに済むことも、米ツアー再挑戦意欲を大きくしているようだ。

小平は夏以降の大会に強い。通算8勝をあげているが、内7勝が8月以降の大会である。先に紹介した「8月から大爆発します」というコメントは、それを踏まえてのものかもしれない。

インパクトで手元が浮かない小平の爆発の火種はまだ消えていない。

(※)ダンロップフェニックス終了時点で賞金ランキング1位になれば、12月11日からの来季米ツアー出場権をかけた最終予選会に出場できる。

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著者プロフィール

野洲明●ゴルフ活動家

各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。

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