
今週は、3歳のマイル最強馬決定戦、第30回NHKマイルC(GI、芝1600m)が東京競馬場で行われる。
今年は、朝日杯FS覇者のアドマイヤズームを筆頭に、NZTを制したイミグラントソング、同3着コートアリシアンや、チャーチルダウンズC覇者ランスオブカオス、同2着アルテヴェローチェ、同3着ミニトランザットといったトライアル組に加え、札幌2歳S覇者マジックサンズ、函館2歳S覇者サトノカルナバル、フィリーズレビューを制したショウナンザナドゥ、京王杯2歳Sを勝っているパンジャタワー、ファルコンSを制したヤンキーバローズ、新潟2歳S覇者トータルクラリティなど、重賞ウイナーもズラリ揃い、混戦に拍車をかけている。
そんな中、NZTを制して勢いに乗るイミグラントソングが、今回の「危険な人気馬」の標的となる。
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■勝ってはいけないNZT
イミグラントソングは2戦目で未勝利を脱出し、1勝クラスでは、2戦足踏みして勝ち切れなかったが、前走のNZTでは、2歳王者アドマイヤズームを相手に、後方から鋭い決め手を発揮して差し切り勝ち。勇躍、NHKマイルCへ駒を進めた。2戦目からはすべて上がり最速の末脚を見せており、3戦目のひいらぎ賞では、2歳コースレコード決着の中、差のない2着に好走しており、府中での高速決着は歓迎材料だろう。
しかし、NZTを勝ってしまったことが、イミグラントソングにとって呪縛となる。過去10年のNHKマイルCで、NZT2着馬の成績が【1.2.0.4】と、まずまずの好結果を残しているのに対し、NZT勝ち馬の成績は【0.0.0.9】で、勝ち馬どころか、馬券圏内にすら1頭も来ていない。ゆえに、中山マイルで好結果を残す=東京マイルに結びつかない、という結論にたどり着き、今年のイミグラントソングも…という予感は漂う。
また、前走で上がり最速をマークしている点も、東京ではさらに有利に働きそうに思えるが、NHKマイルCにおいては、そうとも限らない。過去10年、前走で上がり最速をマークした馬の成績は【0.3.3.21】と、意外と勝ち切れていないのが事実。馬券圏内の6頭中4頭が、本番でも上がり最速をマークしているが、戴冠には至らなかった。逆に考えると、本番で上がり最速をマークできなければ、馬券圏外に飛ぶ可能性大といえる。
加えて、前走が中山コースだった馬で、4角7番手以下だった馬の成績は、【0.2.2.29】と、これもまた勝ち切ることができていない。過去10年のNHKマイルCでは、4角10番手以内が【8.6.6.91】と、中団より前めの位置でレースをした馬が好結果を残しており、後方から運んでしまうと、脚を余すこととなり、イミグラントソングも、レース運びが重要なポイントとなるだろう。
前走は石川の好エスコートが光った一戦で、今回、テン乗りとなるルメールに替わる点は、名手といえども決してプラスとは言えないと考える。父マクフィも、東京ではマイルよりもやや短距離指向の傾向にあり、血統面でも不安材料がよぎる。これらの点も含めて、過剰に人気を集めるようであれば、妙味ほどの信頼度はなく、少なくとも「頭」勝負は避け、場合によっては「消し」でいってみたい。
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◆著者プロフィール
石川豊●いしかわゆたか20代から競馬メディアに寄稿。「ユタカ人気」と言われた時代、武豊が騎乗する過剰人気馬をバッサリと切り捨てる馬券術を駆使し、年間回収率100%超に成功。以来、「1番人気の勝率は3割」を念頭に、残り7割の可能性を模索し、「危険な人気馬」理論を唱え続ける。