クロワデュノール&アルテヴェローチェは盤石も……「9→3→7」が証明する“クセ者世代”に波乱演出の期待【3歳クラシック展望】 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

クロワデュノール&アルテヴェローチェは盤石も……「9→3→7」が証明する“クセ者世代”に波乱演出の期待【3歳クラシック展望】

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クロワデュノール&アルテヴェローチェは盤石も……「9→3→7」が証明する“クセ者世代”に波乱演出の期待【3歳クラシック展望】
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いよいよ花粉が鼻腔を刺激しはじめ、まもなく春が到来。競馬の世界ではクラシックの足音がはっきりと大きく聞こえてくる。牝馬はフィリーズレビューまで終え、残るトライアルは関東のアネモネSだけになり、牡馬はスプリングSと若葉Sを残すのみとなった。どちらも主役を形成する2歳GI馬がクラシック第一戦に直行予定。もはや常識になった直行ローテの是非などもデータで触れつつ、ここまでの戦いを振り返り、牡牝両戦線を占ってみる。

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■中心は阪神JF組で揺るぎなし

牝馬は阪神JFを勝ったアルマヴェローチェが桜花賞へ直行する。前走阪神JF1着は2020年以降【2.1.0.0】。ソダシ、リバティアイランドが勝ち、アスコリピチェーノが2着と崩れず、結びつきは強い。冬休みを経て、春の声がする頃に調教ピッチをあげていく。休養と成長のバランスをとって進めるアドバンテージは大きい。

阪神JFは桜花賞を検討するうえで出発地点。しっかり復習しよう。阪神JF出走馬は無敗馬3頭、2勝馬11頭、1勝馬はたった2頭とそもそもハイレベルな組み合わせだった。京都で行われたレースは前後半800m46.5-46.9。ラップ差が少ない一流マイラーでなければこなせない流れのなか、終盤は11.5-11.4と加速してみせた。勝ったアルマヴェローチェの性能に疑いの余地はない。4着ショウナンザナドゥがフィリーズレビューを、14着クリノメイがチューリップ賞を制しており、やはり阪神JFが中心でいい。

あえて重箱の隅をつつけば、父ハービンジャーは桜花賞通算【0.0.0.7】と好走なし。1番人気10着ナミュール、4番人気13着チェルヴィニアと人気を裏切ってきた。もっともマイルGI勝ち馬には関係なさそうだが……。やはり、アルマヴェローチェに対抗できる馬を探そう。

■ハイレベルなトライアル戦を疑う理由は?

■3歳牝馬限定重賞・リステッドフェアリーS    エリカエクスプレス 1.32.8 前後半800m45.5-47.3紅梅S       ナムラクララ    1.21.1 前後半600m34.1-35.2エルフィンS    ヴーレヴー     1.35.3 前後半800m48.0-47.3クイーンC     エンブロイダリー  1.32.2 前後半800m45.7-46.5チューリップ賞   クリノメイ     1.34.0 前後半800m48.0-46.0フィリーズレビュー ショウナンザナドゥ 1.20.7 前後半600m33.2-35.8

舞台も馬場状態も異なるので、比較は簡単ではないが、トライアル以外ではフェアリーSとクイーンCに目が留まる。どちらも桜花賞とは決して相性がいいとはいえず、例年、高評価としながら裏切られるという記憶しかないが、今年も気になる。フェアリーSは前後半の落差1秒8の前傾ラップでもラストは11.8-11.7-12.0とまとめた。これは4コーナー3番手から3馬身差圧勝のエリカエクスプレスの脚力によるもの。ハイペースや道悪といった酷な条件で力を発揮しそうだ。

もうひとつ、クイーンCは例年スローが多い重賞だが、今年は落差0秒8と持続力を問う流れだった。2番手から押し切ったエンブロイダリーは2走前東京マイルを上がり33.1で差し切っており、一転して粘り強いレース振りをみせた。レースの幅を感じる。母ロッテンマイヤーは忘れな草賞を勝ち、のちに1400mで3勝目と距離適性に幅があった。パンチ力では見劣るものの、対応力を感じる一頭だ。

トライアルではチューリップ賞の扱いが難しい。落差-2秒0のスローをクリノメイが好位から押し切った。上がり600m11.3-11.1-11.8と軽さを求められ、上記2レースと比べると迫力不足は否めない。であれば、2023年と並びレース史上最速の前半600m33.2を刻んだフィリーズレビューを上にとりたくなる。

しかしながら、フィリーズレビューは毎年、スプリント戦に近いラップ構成になり、ハイペースが定番。その分、マイルを走り切るために必要な溜めに対応できず、本番での好走は少ない。だったら、マイルらしい溜めも問われたチューリップ賞を上にとる。徹底したイン狙いがハマったウォーターガーベラも武豊騎手と河内洋元調教師の物語も相まって魅力的だが、阪神JFでのゲート難をきっちり克服できたクリノメイを推したい。精神的な成長に加え、元来、好位から運べるレース巧者だ。ペース不問の好位づけは桜花賞でも発揮する。

ここからは持論になるが、トライアルはレベルにとらわれすぎてはいけない気がする。ハイレベルな競馬とは、裏を返せば消耗の激しさが同居する。3歳牝馬にとって厳しい経験は状態低下という負の側面も抱えるのではないか。個人的にはハイレベルなトライアルを疑い、前哨戦を適度な競馬で無難に乗り切った馬を上にとりたい。生涯最高の競馬は本番でこそ。であれば、阪神JF2着でチューリップ賞3着ビップデイジーは見直せる。

■牡馬はホープフルSから勢力図に変化なし

牡馬もクロワデュノールは皐月賞まで休養中。こちらは牝馬戦線に増して3歳重賞が終わるたびに休むクロワデュノールの評価が上昇した。東京スポーツ杯2歳Sで破ったサトノシャイニングはきさらぎ賞で3馬身差、ホープフルS組から共同通信杯マスカレードボール、弥生賞ディープインパクト記念ファウストラーゼンと重賞ウイナーが2頭も出た。正直、3歳戦線で台頭した新顔が見当たらず、ホープフルSから勢力図に変化がない気配すら漂う。

ホープフルSは前半1000m通過61.4秒と遅かったが、ファウストラーゼンが進出し、残り800mは11.6-11.7-11.9-11.9と持続力を問う流れになった。クロワデュノールは中団からコーナーで加速し、完璧に差し切った。中山芝2000mのお手本のような競馬で完成度が高い。周囲にやりたいことをさせて、最後に勝つというチャンピオンの風格すら感じる。前走ホープフルS1着は過去10年【2.0.0.2】。桜花賞とは対照的にコントレイル以降は連敗中。流れを止められるか。

■意外性を秘める馬が多い現3歳世代

■3歳1800m以上の重賞・リステッド京成杯   ニシノエージェント 1.59.9 前後半1000m58.3-61.6若駒S    ジュタ       2.02.3 前後半1000m63.4-58.9きさらぎ賞 サトノシャイニング 1.47.0 前半1000m58.7、ラスト600m35.7共同通信杯 マスカレードボール 1.46.0 前半1000m60.0、ラスト600m34.2すみれS   ジーティーアダマン 2.11.0 前後半1000m59.5-59.5弥生賞   ファウストラーゼン 2.01.3 前後半1000m60.9-60.4

近年躍進が目立つ京成杯は今年、ハイペースになった。とはいえ、突っ込んで入った先頭、2番手が早々に脱落し、残り800~400m12.7-12.8と落ちてから11.8-12.2と推移した。ラップをつくる馬が入れ替わったイメージで、上位馬がハイペースに対応したとは言い切れない。

クロワデュノールとの比較なら、サトノシャイニングだろう。東スポ杯2歳Sでは逃げる形になり、0秒1差まで食い下がった。きさらぎ賞は序盤800m46.1とマイル戦並みの流れを中団に控えてやり過ごし、上がり最速で勝利。理想的な競馬といえる。ラストは11.6-11.6であり、脚力もきっちり示した。多頭数の経験値は不安だが、きさらぎ賞のレースぶりを見る限り心配はいらなそうだ。適度に上がりがかかる競馬だったのも皐月賞とのつながりを感じるが、残るはきさらぎ賞と皐月賞の相性だろう。過去10年、きさらぎ賞1着は【0.0.1.5】。

相性なら1、2着馬【5.0.3.7】の共同通信杯。最初の200mと中盤800~1000mを除き、すべて11秒台と今年も持続力が問われた。さらにラスト600mは11.5-11.5-11.2なので、加速力兼備でないと太刀打ちできない。好位から上がり3位でまとめたマスカレードボールは有力視していい。残るは11着と流れに乗れなかったホープフルSをどうとるか。中山適性を疑問視するのか、状態面が敗因であり、適性は関係なしとするのか。あまりにレースの形が崩れたから余計に難しい。個人的にはノーカウントとしたい。

弥生賞のファウストラーゼンはインパクトが大きい。まくりと言っても、急かしたわけでもなく、引っかかった印象もない。自ら動いた後半1000mは11.5-11.7-12.4-12.1-12.7。一旦ピッチがあがったものの、先頭に立つと一旦、コーナーを利用して上手くペースを落とした。抑揚の効いたまくりに奥を感じる。ただし、ラストは12.7とかかり、馬場も悪く、かなりの消耗戦だった。本番でのまくりに期待したいところだが、はたして今度は周囲が得意技を許すだろうか。これを避けるためにペースを落とさず、ハイペースに……なんて流れもある。牝馬編で触れたようにトライアルでの消耗は気がかりだ。

アルマヴェローチェ、クロワデュノールのGI馬2頭が一歩リードと、結論としてはさして真新しくもないので、最後にデータを。2022年産限定の芝重賞は23レース行われ、1番人気は8勝、勝率34.8%。この数字は水準レベルといえる一方で、3歳に入って、1番人気の勝利はきさらぎ賞と共同通信杯だけ。トライアル重賞は9、3、7番人気と波乱が目立ち、意外性を秘める馬が多い世代という側面もある。

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◆著者プロフィール

勝木淳競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬ニュース・コラムサイト『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)などに寄稿。

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