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23日からリゾートトラスト レディスが兵庫県の関西ゴルフ倶楽部で開催される。注目は佐久間朱莉。昨季未勝利ながらトップ10の回数は8回で12位。今季は、すでに単独2位が2回あり、初優勝が近いことを感じさせている。
そして、佐久間はリゾートトラスト レディスと好相性。昨年大会は3位。2022年大会は、前後の大会で予選落ちするなど、調子が悪い時期だったにも関わらず14位タイに入った。今大会、昨年大会、2022年大会と、それぞれ開催コースは異なるが、イメージは悪くないはず。
悲願達成に向けて、意気があがっているのではないだろうか。
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■高水準のショットスタッツ
佐久間はショットの精度が高い。安定感が高いだけでなく、飛距離も出る。身長が155センチと小柄ながら、今季現時点のドライビングディスタンスは23位。フェアウェイキープ率順位と合算した値のトータルドライビングが3位で、パーオン率が13位。
トータルドライビング順位とパーオン率順位を合算した値であるボールストライキングは4位だ。
昨季のボールストライキングは18位で、ルーキーイヤーの2022年が6位。このように元々ショットはハイレベル。パットが向上してきたことで、優勝争いに加わることが増えてきた。
アマチュア時代はナショナルチーム入りするなど、将来を嘱望されていたものの、飛距離にやや物足りなさがあった。
しかし、プロテストをトップ合格。ツアーで“優勝争いの常連”になるまでになった。
それは、アマチュア時代から尾崎将司(ジャンボ尾崎)に師事し、尾崎が主宰するアカデミーで研鑽を積んだことによる効果が大きい。尾崎の教えが佐久間のショット力を支えているようだ。
■尾崎将司の教え
尾崎が、佐久間に向き合うべき課題として挙げたのが、やはり飛距離。佐久間のドライバーの飛距離は220~30ヤードだった。日本ゴルフ協会公式ページの佐久間のプロフィールページには230ヤードとある。
それが今では240~50ヤード。今季現時点の記録は243.88ヤードだ。
これだけ飛距離を伸ばすことに成功したのは素振りの効果が大きいようだ。
尾崎自身から、手作りの短くて重い素振り棒を「とにかく振れ」の言葉と一緒に授かり、愚直にそれを使ったトレーニングを反復することで、パワーを身につけた。
結果的にその取り組みは、飛距離だけでなく、方向と距離感の安定にもつながった。それはボールストライキング4位というスタッツが証明している。
尾崎は素振りの重要性を説く。ジャンボ軍団の金子柱憲著「誰も書けなかったジャンボ尾崎」には、次のようにある。
「『体・技』を連動させる中で、ジャンボはバットや重いクラブでの素振りを推奨しています。それは、持久力、スイングパワーの強化、体全体の使い方を同時に鍛錬できるからです」
「ジャンボは、『野球界と比べるとゴルフ界は素振りの文化がない。ゴルフ選手はもっと素振りをするべき』と言っています」
これら尾崎の言葉は、プロやプロ志望者に対してだけでなく、一般ゴルファーにも向けられている。ちなみに尾崎は、高校時代に甲子園で優勝(投手)したことがある元プロ野球選手である。
■素振りが上達を加速させる
一般ゴルファーも佐久間のように素振りに注力することで、スキルアップが加速する期待が持てる。
ツアー選手のような練習時間を得られない中で、球打ちの時間を削って素振りに時間を使う気にはなりにくいかもしれないが、良いスイング(動き)を癖付けるためには素振りは欠かせない。
逆に言うと、球を打ち続けているだけでは、良いスイングを癖付けることはできない。
コースラウンドで同伴プレーヤーのスイングを見ると、実際にボールを打つときよりも素振りのときの方が良いスイングである場合が多い。
より良いスイングを反復することで、より良いスイングに近づくのであれば、素振りを反復することで、より良いスイングに近づく。
尾崎の一番弟子的な存在といえば、通算5勝の原英莉花だが、原も尾崎から授かったオリジナルの素振り棒を使った練習を欠かさない。
佐久間もその兄弟子を追うように成長を遂げようとしている。
通算100勝を優に超える師匠にその成長を認めさせるためには、優勝が不可欠。素振りの効果でキレが増したスイングを武器に、“うまい”選手から“強い”選手に変わろうとしているショットメーカー佐久間に注目だ。
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著者プロフィール
野洲明●ゴルフ活動家
各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。