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11日、アメリカ、アリゾナ州のオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブでマスターズ・トーナメントが開幕する。
2021年大会覇者として出場する松山英樹は、2019年大会までは、前週は大会には出場せずに調整にあてていたが、コロナの影響で11月開催となった2020年大会から前週の大会に出場してオーガスタに乗り込むスケジュールを組んでいる。
今年も昨年までと同様、前週7日まで開催されていたバレロ・テキサス・オープンに出場し、7位タイでフィニッシュ。
同大会はSG:オフザティーが18位、SG:アプローチトゥグリーンが15位、SG:アラウンドザグリーンが10位。マスターズを勝ちに行く松山本人は満足できる内容ではなかったようだが、2度目の制覇に期待できるプレーを見せた。
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■ポイントランキング3位
今年の2月、ザ・ジェネシスインビテーショナルで2年ぶりの優勝を果たした松山は、優勝後も、12位タイ、6位タイ、7位タイと好調を維持している。
今季出場した9戦すべてで予選を通過し、トップ25は6回、トップ10は3回。
ポイントランキングは3位につけており、レギュラーシーズンでポイントランキング1位(プレーオフ終了後、最終的には8位)となった2016-17シーズンを思い出させるような安定感を見せている。
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松山英樹、2024年と2016-17年の成績比較
■SG:アラウンドザグリーン1位
今季、現時点では、2016-17シーズン並みの成績を残しているが、プレーの内容は当時と変わっている。
2016-17シーズンは、パー3のティーショットやパー4、パー5の2打目のキレを武器にバーディを量産。当時のSG:アプローチトゥグリーンは5位で、平均バーディ数が3位だった。
しかし、今季はSG:アプローチトゥグリーンが31位で平均バーディ数が45位。2016-17シーズンのようにショットのキレで圧倒し、バーディを量産できているわけではない。
それでも、今季安定感を発揮しているのは、グリーンまわりからのアプローチショットが冴え、スコアを作れているから。
2016-17シーズン、16位だったSG:アラウンドザグリーンが今季は堂々1位。
2016-17シーズン、パーオンしなかったホールでパー以上のスコアで上がる確率を示すスクランブリングは37位だったが、今季は17位となっている。
グリーン外からのチップイン回数を示すトータルホールアウツは、2016-17シーズンは11回で89位だったが、今季はすでに17回で1位。
カップに‟寄る”だけでなく‟入る”アプローチショットを数多く見せているのが今の松山なのである。
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松山英樹_アプローチ関連スタッツ
■期待高まる2度目V
思い返せば、優勝した2021年大会も要所でショートアプローチが冴えた。‟ガラスの上を転がるよう”と評される速いグリーンにキャリーさせるショットだけでなく、グリーン手前にキャリーさせる難しいショットでも、キャリー距離やスピンをコントロールしきって見せた。
最終日に向けて大きく弾みをつけた、3日目18番ホールのグリーン奥からのショットや、最終日15番ホールで、グリーン奥の池に入れた後の、安全にボギーを取れるところにボールを止めたショットなどがそれにあたる。
今回のマスターズでは、そのようなアプローチショットが、より多く見られるかもしれない。
今年のマスターズの優勝予想(パワーランキング)1番手は、今季8戦して2勝、トップ5が5回、トップ10が7回、最も低い順位が17位タイという圧倒的な強さを見せているスコッティ・シェフラー、2番手が2023年大会チャンピオンのジョン・ラーム、3番手が2023年大会2位タイで同大会次月の全米プロゴルフ選手権を制したブルックス・ケプカとなっている。
そして、4番手が松山で、5番手はマスターズ制覇で生涯グランドスラムとなるローリー・マキロイ。
今季DP WORLD TOUR(欧ツアー)2戦1勝で2位1回、PGA TOUR バレロ・テキサス・オープンで3位に入ったマキロイより上の評価を得ていることも、今の調子とマスターズとの相性の良さを感じさせる。
松山のピークはこれからかもしれない。そう感じさせるプレーを期待したい。
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◆松山英樹は日本時間11日午後11時18分ティオフ ザラトリス&トーマスと同組
◆【男子ゴルフ】松山英樹、久常涼は今いったい何位……世界ランキング
著者プロフィール
野洲明●ゴルフ活動家
各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。