‟大学卒業後プロ”では遅い?米欧ツアーが主戦場の日本人選手に見る海外で活躍するための歩みの進め方 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

‟大学卒業後プロ”では遅い?米欧ツアーが主戦場の日本人選手に見る海外で活躍するための歩みの進め方

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‟大学卒業後プロ”では遅い?米欧ツアーが主戦場の日本人選手に見る海外で活躍するための歩みの進め方
  • ‟大学卒業後プロ”では遅い?米欧ツアーが主戦場の日本人選手に見る海外で活躍するための歩みの進め方

2月8日から開催されたコマーシャルバンク・カタールマスターズで星野陸也が欧州ツアー初優勝を飾った。

星野は欧州ツアー2年目。ルーキーイヤーの昨季は年間ポイントランキングが81位だった。今季は10位以内に入り、来季の米ツアー出場権を獲得することが目標。それに向けて大きく前進する優勝となった。

昨季は欧州ツアールーキーだった久常涼が同ツアー初優勝を飾り、今季は米ツアーを主戦場にするわけだが、星野と久常には共通点がある。大学4年間でじっくりと鍛錬する、という道を選ばなかったことだ。

現在、米ツアーや欧州ツアーを主戦場にしている選手は、高校卒業後プロに転向した選手や、大学に進学しながらも卒業前にプロに転向した選手が多い。

「少しでも早くプロに」そんなマインドを持っていることが、主戦場を海外へ移し、さらにそこで結果を残す条件かもしれない。

◆先週は星野陸也が悲願の欧州ツアー初V、日本選手が獲得した賞金は一体いくら……

■星野陸也と小平智は大学中退、久常涼は高卒

星野は日本大学2年時に大学を中退しプロ転向。同年のファイナルQTで31アンダー(6日間)、2位に7打差をつけて1位通過し、翌年から日本ツアーフル参戦。2022年まで6勝をあげ、2022年に賞金ランキング2位に入ったことで欧州ツアー出場権を獲得した。

今季現時点のデータからは、ショットもパットも昨季より向上していることがわかる。

フェアウェイキープ率は昨季140位だったが、今季現時点では27位、ドライビングディスタンスは120位から77位、パーオン率は146位から17位、パーオンホールの平均パット数は42位から4位、となっている。

現時点のポイントランキングは2位。そして1位はローリー・マキロイ。このまま行けば米ツアー出場権獲得どころかマキロイと年間王者争いになる位置につけている。

2002年生まれの久常は日本ジュニアを制しナショナルチーム入りするなど、将来を有望視されていた。当然ゴルフ環境の良い大学からの誘いもあり、進学する選択肢もあったが、高卒でプロ転向を決意。

高校3年時のファーストQTでは想定外の成績でセカンドQTに進めなかったが、プロ転向の意志はブレなかった。結果、そこから次のステージに進むチャンスをものにし続け、昨季は欧州ツアー優勝。今季からは米ツアーを主戦場としている。

今季4戦目のフェニックスオープンでは予選落ちしたが、それまでの3戦は30位タイ、11位タイ、33位タイで、これまでのポイントランキングは65位。ルーキーイヤーの滑り出しとしては上々。このまま駆け抜けていってもらいたい。

日本大学を中退し2010年にプロに転向した小平智の奮闘も見逃せない。

小平は2010年の日本大学2年時に日本下部ツアーのチャレンジツアー(現ABEMAツアー)で優勝。そして同年に大学を中退しプロに転向した。

2017年までに日本ツアーで6勝をあげ、2018年にスポット参戦した米ツアーRBCヘリテージで優勝。以後、米ツアーを主戦場にしている。

昨年12月に4日間で開催された米ツアー予選会は5位までに今季の出場権が与えられるが、そこで小平は1打足りず6位。米下部ツアーのコーンフェリーツアーの出場権は得られたため、アメリカに軸足を置く予定だ。

成績次第では来季米ツアーに昇格できる。昨季の終盤から感じている手ごたえを生かしていきたい。

■松山英樹、金谷拓実、中島啓太は大学生の間にプロ転向

松山英樹、金谷拓実、中島啓太は高校卒業時にプロ転向の選択肢がありながらも大学進学を選んだ。松山と金谷は東北福祉大学、中島は日本体育大学だ。

そして3人とも大学時代に日本プロゴルフツアーでアマチュア優勝を達成し、大学時代にプロに転向している。

松山は高校2年時にアマチュアとしてプロの大会に初めて出場したものの予選落ち。そこで優勝したのが同学年の石川遼。プロとしての初優勝だった。

高校3年時には日本ジュニアを制したが、同年に石川は日本男子プロゴルフツアーで賞金王に輝いた。

松山は自著の中で、高校時代について「一歩踏み出す度に悔しい体験が増えていく」と語っているが、このような体験は松山の「プロより強いアマチュアを目指す」というプロ意識を育む上でプラスに働いたのではないだろうか。

金谷は高校卒業後プロ転向に踏み切ろうとしていたが、QTで思うような結果を残せず進学することになった。そして、大学時代にナショナルチームに入ったことで海外志向が高まった。

元々持っていたプロ意識に海外志向が加わったことが大きな力になっているのだろう。2022年に跳ね返された欧州ツアーの壁に、今季再チャレンジする。久常や星野に続けるか注目だ。

ジュニア時代から実績豊富な中島は、高校卒業後プロに転向する予定だった。だが、高校時代にアマチュアとして‟世界”を知る中で大学進学に変更。「大学卒業後すぐに海外」という意識で進学した。

おそらくこの時の中島は、すでに‟アマチュア資格を持ったプロ”のような意識を持っていただろう。日本の試合に出られるとかどうかの次元で将来を考えず「大学卒業後すぐに海外」という思いで進学した。

今季、ルーキーとして欧州ツアーを主戦場とする。星野や金谷と同様に、年間ポイントランキング10位以内に入り、来季の米ツアー出場権獲得を目指す。

■若年齢化加速か

米ツアーでは今季、ザ・アメリカンエキスプレスで2003年生まれの大学生アマ、ニック・ダンラップが優勝し、プロに転向した。

日本では以前から‟天才少年”として注目されていた2008年生まれで15歳の香川友が、来月プロ転向予定。将来の目標は米ツアーで、女子のトップ選手を多く輩出しているジャンボ尾崎ゴルフアカデミーに入ることが決定した。

今後少しずつ「大学で腰を据えて鍛えてからプロ転向」という考えは通用しなくなっていくかもしれない。

「とりあえずプロになる」「表面上はアマだけど意識はプロ」といった、できる限り早い段階から‟プロ”を当たり前のこととしてとらえることが、スケールを大きくし、立つステージが引き上げられていくことにつながるのではないだろうか。

◆欧州ツアー初Vの星野陸也が32人抜きで日本選手2番手に浮上!最新世界ランキング

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著者プロフィール

野洲明●ゴルフ活動家

各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。

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