【バスケW杯】56年ぶり2勝で日本代表が得た“手応え” リード時間わずか4分24秒も、「信じる力」でパリ五輪に王手 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【バスケW杯】56年ぶり2勝で日本代表が得た“手応え” リード時間わずか4分24秒も、「信じる力」でパリ五輪に王手

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【バスケW杯】56年ぶり2勝で日本代表が得た“手応え” リード時間わずか4分24秒も、「信じる力」でパリ五輪に王手
  • 【バスケW杯】56年ぶり2勝で日本代表が得た“手応え” リード時間わずか4分24秒も、「信じる力」でパリ五輪に王手

FIBAバスケットボールワールドカップ2023にて日本代表は8月31日、ベネズエラとの順位決定戦に勝利し56年ぶりにW杯2勝目を挙げた。

日本代表は1次リーグでドイツ、フィンランド、オーストラリアと対戦し1勝2敗で、グループ3位に。この結果を受け、日本は17~32位決定戦に回りグループFの3位カーボベルデ、4位ベネズエラとの対戦が決定した。FIBAランキング36位の日本に対し、ベネズエラは17位と格上の相手だった。

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■「あれが僕の知っている比江島慎」

31日、ベネズエラと対戦した日本は、渡邊雄太のスリーポイントシュートで先制する。しかしその後は終始ベネズエラにリードを許したまま、一進一退の攻防が続いた。3クォーター終了時点で53-62と9点ビハインドで最終クォーターへ突入。

この日のヒーローは、最年長33歳の比江島慎だった。3本連続でスリーポイントシュートを沈めるなど4クォーターだけで17得点を叩き出し、一気に日本へ流れを引き寄せ逆転に成功。試合を通しても比江島は23得点と大活躍だった。

これに渡邊が21得点、河村勇輝は19得点11アシストと続いた。河村は、日本人選手として初めてW杯でダブルダブルを記録するという、こちらも素晴らしい活躍だった。

最終スコアは86-77と見事に日本は逆転勝利を収め、W杯は2勝2敗。日本は1967年にウルグアイで開催された当時の世界選手権以来、56年ぶりにW杯で2勝を挙げることができた。

トム・ホーバスヘッドコーチ(HC)は試合後の会見で、「いいチームを作るためには練習が必要。相手は速いし強いし背も高い。まだ試合中で残り1分あるのに、ベンチでは川真田(紘也)のグータッチで痛いし、みんなハイファイブもしていた。試合に出ていない人も、誰も文句を言わずチームのためにいる」と、ベンチでのエピソードも交えながら語った。

渡邊もホーバスHCとともに会見に臨み、「素晴らしい勝利だった。ベネズエラはタレント揃いのチームで経験豊かな選手も多い。タフな試合だったけど、日本は絶対に諦めなかった。誇りに思う」と感想を述べた。

さらに比江島について問われると、「僕は、彼を止められる選手は世界でもそんなにいないと言い続けてきた。正直、彼のBリーグのスタッツには全然納得していない。もっとやってほしい。今日は決してなんのサプライズでもなく、あれが僕の知っている比江島慎。いつもやってほしい」と最後は笑わせながらコメントした。

比江島は最年長ながらこのチーム内でいじられキャラだ。そこには、長年日の丸を背負い戦ってきた選手への仲間からの尊敬と愛情が込められている。若い代表選手、河村と富永啓生が活躍したかと思えば、渡邊やジョシュ・ホーキンソンらがチームを支え続ける。試合ごとに、それぞれの選手が活躍できることが日本の躍進につながっている。

■「信じる」気持ちでパリ五輪に王手

渡邊も会見の中で触れていたが、試合を通して日本がリードした時間帯は、たったの4分24秒だけだった。

そして渡邊は、「本当にしんどい試合だったが、コーチがずっと『信じる』という言葉を僕たちに言ってくれていた。それを本気で口に出すことで、言葉から力を得ている。口先だけではなく、表現できている。そしてお客さんたちが僕たちを信じて応援してくれたことが何よりも大きかった」と試合後に振り返っていた。

ホーバスHCも歓声について、「ファンも素晴らしかった。その声援がなければ勝ちはなかった。信じられない声援だった」とコメントしていた。

フィンランド戦に勝利したこと、そして敗れはしたもののオーストラリア戦で確かな手応えを得たことは、短いW杯期間の中で間違いなく日本代表を成長させ、自信を植え付けた。

日本を進化させ続ける指揮官は、「我々はまだ学び中で、試合中にさらによくなっている。こうした経験はメンバーにとってかけがえのないものだ。日本のバスケにとって素晴らしい勝利だった」と語っていた。

日本バスケ界への貢献は計り知れない。そして何よりも自国開催でよかったと感じる。試合を見ていた観客が興奮気味に感想を語った。

「日本が強くなっていることがわかるし、負けていても追いついて勝てるんじゃないかと思えた。みんなが活躍しているし、気迫あふれるプレーに興奮しっぱなし。声が枯れた。Bリーグからバスケ観戦が好きになった。日本戦を観に来られてよかった」。

現在、日本の戦績は2勝2敗。勝ち越しで大会を終える可能性がある。そして今大会に出場しているアジア6カ国の中で暫定1位を死守し、来年開催されるパリ五輪への出場権獲得へ向けてもいよいよ王手。W杯最終戦、2日に行われるカーボベルデ戦にも勝利し、アジア最速で五輪への切符を手にしたい。

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■著者プロフィール

木村英里(きむら・えり)●フリーアナウンサー、バスケットボール専門のWEBマガジン『balltrip MAGAZINE』副編集長

テレビ静岡・WOWOWを経てフリーアナウンサーに。現在は、ラジオDJ、司会、ナレーション、ライターとしても活動中。WOWOWアナウンサー時代、2014年には錦織圭選手全米オープン準優勝を現地から生中継。他NBA、リーガエスパニョーラ、EURO2012、全英オープンテニス、全米オープンテニスなどを担当。

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