【バスケW杯】“歴史的勝利”の日本代表、アジア1位でのパリ五輪出場に前進 河村勇輝「負けたら意味ない」 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【バスケW杯】“歴史的勝利”の日本代表、アジア1位でのパリ五輪出場に前進 河村勇輝「負けたら意味ない」

スポーツ 短信
【バスケW杯】“歴史的勝利”の日本代表、アジア1位でのパリ五輪出場に前進 河村勇輝「負けたら意味ない」
  • 【バスケW杯】“歴史的勝利”の日本代表、アジア1位でのパリ五輪出場に前進 河村勇輝「負けたら意味ない」

バスケットボール日本代表は27日、FIBAバスケットボールワールドカップ2023のフィンランド戦でW杯最多得点を挙げ、見事歴史的勝利を飾った。

大会3日目、沖縄アリーナでは日本対フィンランドの一戦が行われた。今大会1戦目でフィンランドはオーストラリアに、日本はドイツにそれぞれ敗れ、ともに一敗同士の対戦となった。

◆【バスケW杯】日本の歴史的勝利を信じた「6.77%」 フィンランド戦WINNER配当は1460円、豪州戦投票状況も発表

■課題のスリー成功率は39.3%

フィンランドの中心選手といえば、身長213センチでNBAユタ・ジャズ所属のラウリ・マルカネンだ。バスケットボール選手だった親に加えて兄はサッカー選手とスポーツ一家。昨シーズン、オールスターに初選出され、シーズンMIP選手に選ばれるなど飛躍を続けている。

もう負けられない両チームの対戦は、序盤から競った展開が続き1クォーターは日本がリードで終える。しかし日本は、ドイツ戦同様スリーポイントシュートがなかなか決まらない。それでも最年長の比江島慎が要所で体勢を崩しながらも得点を決めるなど追い縋る。

36-46と10点ビハインドで試合を折り返した日本。しかし3クォーターには最大18点差のリードを奪われてしまう。それでも3クォーター終盤に富永啓生と馬場雄大のスリーポイントシュートが決まり粘りを見せた日本は10点差で最終クォーターへ。再び富永がスリーポイントシュートを決めれば、ジョシュ・ホーキンソンやが続いた。

シュートが入り出した日本は止まらない。4クォーターは相手の得点を15点に抑え、日本は35得点と爆発。最後は、NBAプレーヤーのマルカネンを相手に河村が1対1を仕掛け、172センチの小柄な選手が213センチの上からスリーポイントを見事沈めて勝利を決定づけた。

この試合、ホーキンソンは28得点、河村は25得点と活躍。課題であったスリーポイントシュートの成功率も39.3パーセントと試合の中で取り戻していった。

■河村「アジア一位が目標。負けたら意味がない」

試合直後、キャプテンの富樫勇樹は、「国際大会に勝つのは簡単ではない。諦めずに戦った。(渡邊)雄太の状況もあり若い力に助けられ、後半の追い上げにつながった」と語った。富永と河村、22歳のコンビがコートで躍動しチームに勢いをもたらした。国際強化試合のアンゴラ戦で右足首を捻挫していた渡邊は、足を引きずりながらもマルカネンを必死に抑えていた。「このチームでパリに行けなければ代表活動を最後にしようと思っている」と代表引退を示唆するほどの覚悟を見せていた渡邊に対し、ロッカールームで河村らが、「まだ引退させませんよと発言をしていた。河村も富永も(シュートが決まらず)苦しんでいたが、そのプレッシャーを破ったのはやはり渡邊だった。彼が足が痛く苦しみながらもNBAのMIP選手に対してあれだけ戦う姿を見て、俺たちが頑張らなきゃダメだと」と、フィンランド戦勝利後に東野智弥日本バスケットボール協会技術委員会委員長は興奮気味に語ってくれた。

河村は記者団に対し、「とにかく勝ちたい執念だけだった。何回やっても勝てる相手ではない。一喜一憂することなく戦い続けたことが勝因。トムさんのバスケは20点差があっても戦える」と振り返っていた。指揮官のバスケを信じた選手。また、指揮官も選手を信じていた。試合後の会見で、ホーバスヘッドコーチは河村と富永について、「天井がめちゃ高い二人。スロベニアやフランス、ドイツ戦と経験になった。我慢して、二人の爆発を待っていた。あれがBリーグの河村。自信があったけど今日は本当にいい経験になったと思う」と笑顔を見せた。98得点、これは日本代表のハイスコアであり、オリンピックやワールドカップで初めてヨーロッパ勢相手に勝利を収めた。指揮官は続けて、「シュートはやっと入りました。明後日も頼むよ」と安堵混じりにコメントし笑わせた。

苦しい前半にベテランの意地を見せた比江島は17得点の活躍。ホーバスヘッドコーチも「すごかったね。前半あのプレーをしていなかったら負けていたと思う。本当にいい仕事をした」と称えた。比江島や渡邊がチームを支え、河村や富永に限らず、ホーバスヘッドコーチが「ビースト」と表現したホーキンソンも37分を越えるプレータイムで28得点19リバウンドと牽引し続け、勝利後に感極まり涙を流した馬場も力を尽くし、吉井裕鷹も気迫あふれるブロックやディフェンスでチームに貢献し続け試合を通して成長を見せるなど、それぞれが続いたことが日本の勝利に繋がった。東野技術委員会委員長も、「この舞台で勝つにはチームワークが我々の得意なところだと思う。ロッカールームの雰囲気も見たことがない感じ。一体感というか、みんなが本当にお前頑張ったなとか声を掛け合って。日本の戦いってそれでしか勝てないというか、世界に勝つためにはこれなんだと感じさせてくれた」と語っていた。ホーバスヘッドコーチのもと、信頼関係と絆を深めてきた日本代表。まさに日本一丸での勝利だった。

もちろん、ドイツ戦と比べて会場のボルテージも格段に上がっていた。空席問題が取り上げられたが、その一部が再販されたこともありより多くのファンが詰めかけ日本代表へ割れんばかりの歓声で後押しした。ホーバスヘッドコーチは、「ファンも熱狂的だったし、我々にとって大きな勝利になった」と振り返ったが、確実にホームコートアドバンテージとしてフィンランドを苦しめていた。ホーム開催、富樫は「日本の皆さんと掴んだ勝利」と語った。

そんな勝利に湧く中で河村は、「すごくうれしい。フィンランド相手に勝てたことは自信を持っていい。勢いがつけられた。ただアジア一位が目標であり負けたら意味がない」と勝利に喜びながらも、29日に行われるオーストラリア戦に照準を合わせていた。27日の試合を終えた時点で、出場しているアジア6カ国の中で唯一1勝をあげた日本。アジア1位でパリオリンピックの出場権を獲得するという目標に一歩近づいた。

◆大金星バスケ日本、スラムダンク山王戦と一致した超名場面をFIBA投稿 渡邊×富永が「Slam Dunk vibes」

◆歴史的金星のバスケ日本をレイカーズ八村塁も称賛「日本代表が素晴らしい勝利!このまま前進を」

◆「絶対この大会に勝って引退させたくない」河村勇輝が語った渡邊雄太への思い

■著者プロフィール

木村英里(きむら・えり)●フリーアナウンサー、バスケットボール専門のWEBマガジン『balltrip MAGAZINE』副編集長

テレビ静岡・WOWOWを経てフリーアナウンサーに。現在は、ラジオDJ、司会、ナレーション、ライターとしても活動中。WOWOWアナウンサー時代、2014年には錦織圭選手全米オープン準優勝を現地から生中継。他NBA、リーガエスパニョーラ、EURO2012、全英オープンテニス、全米オープンテニスなどを担当。

《SPREAD》
page top