【ラ・リーガ】久保建英の覚醒、CL出場権獲得のレアル・ソシエダで見せた成長譚 2桁ゴールで締め括るか | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【ラ・リーガ】久保建英の覚醒、CL出場権獲得のレアル・ソシエダで見せた成長譚 2桁ゴールで締め括るか

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【ラ・リーガ】久保建英の覚醒、CL出場権獲得のレアル・ソシエダで見せた成長譚 2桁ゴールで締め括るか
  • 【ラ・リーガ】久保建英の覚醒、CL出場権獲得のレアル・ソシエダで見せた成長譚 2桁ゴールで締め括るか

5月28日に開催されたラ・リーガ第37節、日本代表MF久保建英が所属する4位のレアル・ソシエダは敵地で3位のアトレティコ・マドリーと対戦。今季9ゴールでリーガの日本人選手シーズン最多得点記録を更新し続ける久保は先発出場。しかし、欧州屈指の堅牢な守備を敷くアトレティコの前に為す術なく、1-2のスコア以上の完敗を喫した。

一方、ソシエダとの勝点差が「5」だった5位のビジャレアルも敗れたため、1試合を残してソシエダの4位が確定。欧州最高峰の舞台「UEFAチャンピオンズリーグ」(CL)出場権を手に入れた。

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■「最高の久保建英」を引き出したソシエダ

久保がソシエダ加入までの3年間で挙げたリーガでの総ゴール数は6点。2019年にデビューした日本代表でも23試合の出場でわずか1ゴールにとどまっている。それが今季の久保は1試合を残してリーガで34試合に出場し、9ゴール4アシスト。大きな飛躍を遂げたシーズンとなった。

特に欧州王者レアル・マドリーを相手にゴールを決めるなど、終盤戦に入ってからの活躍が際立った。現地大手紙『マルカ』は、「スーパースター」、『アス』紙は「チャンピオンズ級」と題して称賛。久保がゴールを挙げた試合は9戦全勝している事実などを紹介した特集記事も組まれ、ラ・リーガの年間ベストイレブン候補に推すメディアもある。

久保がここまでの進化を遂げた最大の理由は、ソシエダとの相性だ。

『Opta』のデータを引用すると、これまでリーガで久保がプレーしてきたチームのボール支配率は2019-20のマジョルカが46.53%(ボール支配率で18位)、2020-21前半戦のビジャレアルが54.5%(同5位)、同後半戦のヘタフェが44.92%(同16位)、2021-22のマジョルカが45.58%(同15位)であるのに対して、今季のソシエダは55.14%(同4位)。これまで所属したチームの中で最高のスタッツを記録している。

ビジャレアルも同水準の数字を記録しているが、リーガ屈指の強豪で当時19歳の久保はポジション争いで遅れをとり、ウナイ・エメリ監督のスタイルにもハマらず、半年で移籍を決断した経緯があった。

■ゴールへの意識が芽生え、守備力が向上

開幕戦で決勝点を挙げ結果を残したことも大きかった。シーズン序盤の久保は、エースFWアレクサンデル・イサクが7000万ユーロ(約105億円)でニューカッスルへ引き抜かれ、その代役として加入したFWウマル・サディクが怪我で長期離脱した影響もあり、[4-3-1-2]の2トップに固定された。

ライバルのアタッカー陣が戦線復帰して来た頃からゴールへの意識もさらに芽生え、ここまで放ったシュート数はチーム最多の67本を記録。2377分間というプレータイムは攻撃陣最多であり、チームを率いるイマノル・アルグアシル監督からの信頼の厚さもうかがえる。

後半戦に入ってからは主将FWミケル・オヤルサバルが復帰した影響で[4-3-3]が採用されることが増え、久保のポジションは最終的に右ウイングに落ち着いた。攻守が連動した現代サッカーがベースに浸透したソシエダでは、ウイングにも守備力が求められる。

これまでプレーしてきたチームでは守備力を問われポジションを失ったが、ソシエダは「良い攻撃が良い守備を作る」チームだ。また、久保は前半戦のFW起用で全般的な攻撃力を披露できた点も大きく、自身の特徴をチームにアピールできたうえで守備にも奔走できた。

第33節のレアル・マドリー戦での久保は、1人で相手2選手を見張る高度な守備戦術から先制点を挙げ大金星獲得に貢献。カタールW杯で中断される前のソシエダは1試合の平均失点数が「1.21」だったのに対して、W杯後の23試合では「0.74」と大きく改善したのにも一役買っている。

久保の守備力向上は攻撃時にも活きた。相手DFとマッチアップする際に守備者の視点で相手を細かく把握できるようになり、駆け引き上手な選手へと成熟した。

■2桁ゴール達成なるか

久保を軸としたソシエダは1試合を残し来季のCL出場権を獲得。同じく4位に入った2012-13以来10年ぶりのことだ。

ソシエダは2008年7月に破産申請するまでに落ち込み、1部再昇格まで3年を要した苦しい時期がある。ただ、その時期に自前の下部組織出身選手を育て上げ地力をつけ、その功績が実ったのが2012-13の4位躍進だった。

その後は残留争いや2桁順位に低迷することもあったが、2019-20以降は6位、5位、6位、今季の4位と安定、上位に位置している。その要因は指導者も自前で育てること。現指揮官アルグアシルは現役時代もソシエダでプレーしたOBだ。指導者転身後も下部組織やBチーム監督を歴任してきた「ソシエダ産」の指揮官は語る。

「大事なのは結果ではなく過程だ。我々は国内外のカップ戦を並行して戦いながら、シーズンを通じてリーガの4位以内をキープし続けていた。自分の生涯のクラブで、ホーム出身の選手がたくさんいるので、そこに誇りを感じている」。

ソシエダは主将のFWオヤルサバルを筆頭に、チームの骨格をなすセンターラインにMFマルティン・スビメンディやDFロビン・ル・ノルマン、イゴール・スベルディアらの下部組織出身選手をすえチームを作っている。彼らが攻撃時のパスワークの土台とリズムを作り、ボールの位置に応じた守備を選択するチームの中枢役を担う。

6月4日の最終節、ソシエダがホームに迎えるのは、5月31日にUEFAヨーロッパリーグを制覇したばかりのセビージャ

久保は2桁ゴールを達成し、“ラ・レアル”の新たな王として君臨してきた今季の集大成を飾れるか。

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文●新垣博之(しんがき・ひろゆき)

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