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ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は、侍ジャパンの14年ぶり3度目の優勝で幕を閉じた。
最後はクローザーとしてマウンドに上がった大谷翔平が、盟友マイク・トラウトとの対決を制し、胴上げ投手になった。この劇的なエンディングをロサンゼルス・エンゼルスのチームメートたちも固唾を飲んで見守っていたという。米複数メディアが報じている。
◆大谷翔平、対トラウトへの思いを明かす「自分のベストを超えるボールを投げないと抑えられない」
■「シナリオがあるかのような展開」と米国監督
日本が1点リードの9回、クローザーとしてマウンドに上がったのは大谷。
先頭に四球を与えたものの、続くムーキー・ベッツを二ゴロ併殺に仕留めた。世界一まであとひとりとなって迎えたのは、エンゼルスの同僚で「現役最強打者」のトラウト。全野球ファン待望のマッチアップが、最後の最後に実現。米国マーク・デローサ監督も「シナリオがあるかのような展開」と認めた究極の対決は、フルカウントから大谷が投じたスライダーにトラウトのバットが空を切り、ゲームセット。日本が3大会ぶりにWBCを制した。
この歴史的攻防に心中複雑だったのが、2人が所属するエンゼルスのチームメートたち。ジャレッド・ウォルシュは「私は地獄のように緊張していたよ。心臓はドキドキしていた。翔平を愛しているし、マイクも大好きだ。どちらかが勝ち組になるし、負け組になる。どんな結果でも悩ましいよね」とし、当時の心境を明かした。その上で、打者の立場からすると大谷有利だと感じていたという。「本来はキャンプで調整している時期、(WBCに参加している)マイクはまだそんなに打席に立ってないと思っていた。そんな状況で翔平のスライダーと100マイルを超える速球に立ち向かわなければいけないんだ。言い訳になるかもしれないけど…」と話し、トラウトの勝ち目は薄かったと振り返った。
■「3月に翔平のボールを打つのは無理」とアデル
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盟友・大谷翔平に三振を喫したマイク・トラウト (C) Getty Images
実際に現地で観戦したというジョー・アデルも「3月に翔平のボールを捉えることができる打者はいないよ」とし、トラウトに同情した。さらにフィル・ネビン監督も「彼が投げた最後のボール、あの球を打てるバッターはいない」と指摘し、曲がり幅17インチ(約43センチ)を記録した大谷のスライダーに脱帽した。
ただ、勝敗とは別に、今回の大谷とトラウトの対戦はチームにも好影響を及ぼしそうだ。アデルは「私たち全員を奮い立たせるものだったと思う。WBCを見て、あの2人の競争心を見た人ならポストシーズンの雰囲気を感じたはず。あのレベルで戦ってきたチームメートがいることは今シーズンに向けて良いことだと思う。WBCを経験した彼らがチームに戻って来て、そのエネルギーをもたらすことは、かなりクールだと思う」とし、低迷慣れしたチームの雰囲気が変わる可能性に言及した。
開幕は現地30日、敵地でのオークランド・アスレチックス戦。大谷の先発登板が予定されており、2014年以来となるポストシーズン進出へ向けた戦いが始まる。
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文●SPREAD編集部