【Wリーグ】開幕6連勝で唯一無敗のデンソー 五輪銀戦士そして新主将・赤穂ひまわりの“変化”とは… | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【Wリーグ】開幕6連勝で唯一無敗のデンソー 五輪銀戦士そして新主将・赤穂ひまわりの“変化”とは…

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【Wリーグ】開幕6連勝で唯一無敗のデンソー 五輪銀戦士そして新主将・赤穂ひまわりの“変化”とは…
  • 【Wリーグ】開幕6連勝で唯一無敗のデンソー 五輪銀戦士そして新主将・赤穂ひまわりの“変化”とは…

Wリーグは12月10、11の両日、6会場で7カードを行い、約1カ月ぶりに再開した。第4週までを終えた時点で、開幕6連勝と唯一無敗を続けているのがデンソー・アイリスだ。

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11月に予定されていた2試合が新型コロナウイルスの影響で中止となり、大半のチームより消化試合は少ないが、チームの平均得点は84.5点でリーグ2位、平均失点は55.0点でリーグ最少と強さが際立つ。

優勝候補に名乗りを挙げるデンソーにとっての今季一番の変化は、昨季限りで引退した稲井桃子の後を継ぎ、日本代表でもエース級の活躍を見せているSF赤穂ひまわりが新主将に就いたことだろう。元々口数が多い方ではなく、熱量いっぱいの「キャプテンぽい選手」ではないことは自他ともに認めるところ。入団6年目に入るが、24歳とまだ若い。

そんな赤穂が、どのようなキャプテンシーを発揮しているのか。沖縄で3年ぶりのWリーグ公式戦となったシャンソンVマジックとの連戦を取材した。

■「物静かでプレーで表現するタイプ」だったが…

結果は初日が64ー39、2日目が95ー64でいずれもデンソーが圧勝した。

シャンソンのオフェンスの柱であるPG小池遥とSF吉田舞衣がコンディション調整で出場できなかったことも大差の要因だが、デンソーはC髙田真希とSF本川紗奈生のベテランコンビが安定した攻撃力で得点を重ね、赤穂や姉のC赤穂さくららがリバウンドで存在感を発揮。2戦目ではPG高橋未来やSG篠原華実らガード陣が高確率でスリーポイントを射抜き、地力の強さを見せつけた。

まだシーズン序盤ではあるが、これでチームは負けなしの6連勝。連戦後のぶら下がり会見で、赤穂に主将として意識していることを聞くと、こんな答えが返ってきた。

「中学はキャプテンみたいな感じでしたけど、ほとんど何もしてなかったです。高校も役職には就いてなかったので、これまで声を出して引っ張るタイプではなかったんですけど、キャプテンを任されたからにはそういうことも言ってられない。プレー面を中心に、思ったことは全部チームメートに伝えるようにしています」。

日本代表キャプテン高田真希からも評価を受ける 撮影:長嶺真輝

その言葉通り、この連戦では試合中に自分から仲間へ積極的に話し掛ける場面が随所で見られた。その変化は、周囲も感じ取っているようだ。2代前の主将で、日本代表でもキャプテンを務める髙田が言う。

「ひまわりはどちらかというと物静かで、プレーで表現するタイプ。でもキャプテンの役割を担ってからはチームの先頭に立って声を出し、リーダーシップを発揮してくれています。彼女なりに頑張っているのが分かるし、だからこそチームの雰囲気もすごくいいと感じます」。

この髙田の評価を直接伝えると、それまでの淡々として表情を崩して「それはちょっと嬉しいですね」と破顔した赤穂。「昨シーズンとその前のシーズンは稲井さん、その前はリツさん(髙田のコートネーム)が主将をしていたので、2人の偉大なキャプテン像を見て学んでこれたのかなと思います」。先輩たちの背中を追い、リーダーとしての資質を身に付け始めている。

■リーグで3人のみの平均ダブルダブル

チームメートとも積極的にコミュニケーションを取りキャプテンシーを見せる赤穂 撮影:長嶺真輝

主将を担う覚悟は、一選手としての成長にもつながっている。「周りについていくだけじゃなくて、みんなを引っ張っていくという自覚を持たないといけないと思っているので、プレー面でもやらないといけないという気持ちです」と話すように、プレーで語る従来のスタイルにも磨きをかける。

12月12日現在の赤穂のスタッツは得点が12.83点、リバウンドが10.5本。平均でダブルダブルの数字を残している選手は、リーグで赤穂と日立ハイテクのCダラーメ・マレム・ドイ、ENEOSのPF渡嘉敷来夢の3人しかいない。赤穂は過去5回のレギュラーシーズンにおいて得点こそほぼ毎シーズン二桁を記録してきたが、リバウンドで二桁の数字を残したことはなく、先頭に立って体を張るという意識の高さが数字に表れている。

デンソーは近年、強豪としての地位は確立しているが、昨季得点王と6年連続10回目のベスト5に輝いた髙田のチームという印象が強く、チーム力の高さが求められるプレーオフで勝ちきれないシーズンが続く。昨季は準々決勝、一昨季は準決勝で姿を消した。

昨季、髙田と同じく2年連続2回目のベスト5を受賞した赤穂が二枚看板の一人としてさらに台頭していけば、他チームにとって脅威以外の何物でもない。チームには20代前半の選手も多く、髙田は「ひまわりがリバウンドに積極に行ったり、ディフェンスの1対1で抑えたり、誰かが抜かれた時にしっかりブロックに飛ぶという姿を周りが見ると、『自分も頑張らなきゃ』と感じる。それがこういう結果につながってると思います」と若手選手を引っ張り上げる役割も求める。

12月中に5位トヨタ紡織サンシャインラビッツ、3位富士通レッドウェーブといった強豪との対戦を控えるデンソー。赤穂は「連勝をしているのはいいことですが、これからどんどん強いチームと当たっていくので、あまり勝っていることを考えすぎずに一試合一試合やるべきことをやるだけです。今季も目標は変わらず優勝。そこに向け、一つ一つ確実に勝っていきたいです」と淡々と語り、気を引き締める。

「情熱」以外にも、「憧れ」という花言葉も持つ“ヒマワリ”。チームメートにとって指針となるようなプレーで周囲のレベルも引き上げることができれば、チームを勝たせる選手として一段階上の境地に入る。デンソー、そして日本女子バスケ界の牽引役の一人である赤穂の“変化”に注目だ。

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文●長嶺真輝(ながみね・まき)

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