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ついに待ちに待った日がやってきた。
我らの“モンスター”井上尚弥(大橋)が13日、世界バンタム級4団体を統一する。
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■100年現れないチャンピオン
有明アリーナにWBO王者ポール・バトラー(イギリス)を迎える世紀の一戦を展望しよう。
この試合こそ“世紀の一戦”と呼ぶにふさわしい。なぜなら、次に世界4団体を統一する日本人ボクサーは、100年間、現れない可能性が高いからだ。もし、いるとすれば、井上尚弥がスーパーバンタム級を統一するときだろう。
過去に4団体を統一したチャンピオンは8人。しかし、井上の偉業は過去の8人よりも価値がある。なぜなら、ベルトを持つ4人の王者を順に倒して一本ずつ集めての達成だからだ。ほかの選手は複数のベルトをかけた試合に勝って、いわば総取りしてきた。唯一、最初の4団体統一チャンピオン、バーナード・ホプキンスがそれに近いが、最初のIBFタイトルは王座決定戦だった。
■カシメロとの因縁から転がり込んだベルト
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ボクシング4団体統一戦に臨む井上尚弥(撮影:SPREAD編集部)
4本目のベルトを持って日本にやってくるポール・バトラーの戦績は、34勝(15KO)2敗。2014年に同じイギリス人のスチュアート・ホールに勝ってIBF世界バンタム級王者になったが、スーパーフライ級に下げると宣言して防衛戦を行わないままタイトルを返上した。
記憶に新しいのは、ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)との因縁だ。昨年12月に予定されたタイトルマッチは、チャンピオンのカシメロが胃腸炎を理由にキャンセル。4月に延期された“第2戦”は、カシメロが禁じられているサウナを使ったことで出場停止に。急遽、代役出場となったジョナス・スルタン(フィリピン)にバトラーが判定勝ちして暫定王者となり、その後、カシメロが王座を剥奪されて正規チャンプに格上げになった。いわば、幸運な戴冠だ。
バトラーにも前科がある。2018年に行われたエマニエル・ロドリゲス(プエルトリコ)とのIBF世界バンタム級王座決定戦でウエイトオーバーの失態を犯したのだ。試合は行われたが、痛烈なダウンを奪われる一方的な判定負けとなった。そのロドリゲスを井上が2ラウンドKOで退けて手に入れたのが、2つめのタイトルだ。
■完成された理想のボクサー
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井上尚弥(C)Getty Images
29歳のモンスターは、今、充実し切っている。リング誌が出すパウンド・フォー・パウンドで、堂々の2位。一時はトップにもなった。右ストレート、左フック、ボディブロー、どのパンチにも一撃で相手を倒す破壊力がある。ディフェンスのスピードとテクニック、柔軟に戦術を変えられる引き出しの多さもある。ようするに、完成された理想のボクサーだ。この選手を攻略するのは、極めて難しい。
井上と二度、激闘を演じたノニト・ドネアは、バトラーに横への動きを多くするようアドバイスを送ったという。しかし、それも“延命策”に過ぎないだろう。危険なパンチを持たないバトラーを追い詰めるのは、井上にとって難しくない。
■強烈なKO勝ちで夢を叶える
バトラーはジェイソン・マロニー(オーストラリア)に似たボクサー・タイプ。顎の細さも似ている。序盤から中盤にかけてプレッシャーをかけ、モンスターが強烈なKO勝利を収めるとみる。
井上が最初のバンタム級王座を獲得したのが2018年5月。以来、何度となく「4団体統一」を口にしてきた。4年半、追い続けてきたモンスターの夢が、もうすぐ叶う。
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著者プロフィール
牧野森太郎●フリーライター
ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。