【カタールW杯】ドイツ撃破の森保ジャパン、コスタリカ戦の鍵は「川崎勢」と「5レーンの支配」 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【カタールW杯】ドイツ撃破の森保ジャパン、コスタリカ戦の鍵は「川崎勢」と「5レーンの支配」

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【カタールW杯】ドイツ撃破の森保ジャパン、コスタリカ戦の鍵は「川崎勢」と「5レーンの支配」
  • 【カタールW杯】ドイツ撃破の森保ジャパン、コスタリカ戦の鍵は「川崎勢」と「5レーンの支配」

FIFAワールドカップカタール2022、FIFAランキング24位の日本代表はグループEの第1節で同11位の強豪ドイツ代表に2-1と逆転勝利。日本は中3日で迎える27日の第2節、同31位のコスタリカ代表と対戦する。

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■酒井と冨安の欠場濃厚もコスタリカ戦仕様とは…

日本がW杯優勝4度を誇るドイツを相手に大金星を挙げた同日、コスタリカは同7位のスペイン代表を相手に0-7の大敗。しかも、シュートを1本も放つことができなかった。

ただし、大敗を喫したからと、日本を相手にキックオフから大量得点を狙いに前掛かりに来るとは思えない。得失点差は痛いが、勝点の方が重要だからだ。リセットして迎える日本戦は、GKケイラー・ナバス(PSG)を中心とした持ち前の堅守を武器に、まずは勝点3獲得を最優先に入ってくるはずだ。

一方、日本はドイツとの激戦の中、不動の右サイドバック(SB)酒井宏樹(浦和レッズ)が負傷交代。終盤にはDF冨安健洋(アーセナル)も足を引き摺っていた。ドイツ戦後は別メニュー調整が続く2人は欠場が濃厚だ。

暗雲が立ち込めたように思われがちだが、対戦相手がドイツとコスタリカでは全く異なる。ボール支配率が31%だったドイツ戦は、優勝経験国をリスペクトして戦う必要があった。プレースタイル的にも、ボールを奪い合ってプレー強度が高くなることを想定したメンバーを組む必要があった。一方、コスタリカは得点チャンスを作るためにも自陣に引いてカウンター攻撃を狙ってくる。そのため、日本がボールを保持して戦うことが想定される。

キーワードは「5レーンの支配」だ。

■堅守コスタリカ攻略の鍵は「5レーンの支配」

トライアングルを的確に作るための考え方=「5レーン理論」。

コスタリカのような自陣ゴール前に引いた相手を崩すには、ボールを動かすだけでは不十分だ。人数を多く割いて攻撃を仕掛ける必要があるが、不用意なボールの奪われ方をすると、カウンターの餌食にもなる。

日本が第3節で対戦するスペインは、コスタリカ戦で77%の圧倒的なボール保持率を記録した。7得点以上にシュートを撃たせない安定した戦い方は、日本も習うべき面がある。参考にすべきは、欧州全体に浸透した、「5レーン理論」だ。

「5レーン理論」とは、ピッチを縦に5分割して考える現代サッカーの概念だ。それぞれのレーンを「中央」「左右ワイド」「左右インサイド(ハーフスペース」と形容し、次の3つの条件によって「トライアングル(※)を的確に作るための考え方」と説かれる。

(上図参照)※トライアングル:「ボールホルダーに対して2つ以上のパスコースを作る」サッカーの基礎

条件1:「1列前の選手が同じレーンに並ぶのは禁止」条件2:「2列前の選手は同じレーンでなくてはならない」条件3:「1列前の選手は適切な距離感を保つために隣のレーンに位置することが望ましい」

「5レーン理論」の概念をピッチ上で実践すると、局面の数的優位と的確なポジショニングが可能となり、ボールを奪われても即時奪回できるようになっている。そのうえで、三笘薫(ブライトン)のような個の能力に優れる選手を配置した局面では、その選手の優位性を活かした1対1の勝負をさせるために、他のエリアで人数調整をすることも可能になる。

コスタリカはスペイン戦を4バックでスタートし、3失点目を喫した31分以降に5バックに変更した。スペインが5レーンを支配した攻撃を仕掛けて来たため、全てのレーンを埋めたのだが、時すでに遅し、だった。日本戦は5バックで来そうだが、引いたコスタリカを攻略するためには、「5レーンの支配」は必須だ。

■「5レーンの支配者」川崎勢、注目は山根

現在の日本代表でこの概念が深く浸透しているのは、2017年以降の5年間で4度のJ1リーグ制覇を果たした川崎フロンターレ出身の選手たちだ。川崎で株を上げた選手たちは毎年のように欧州のクラブに引き抜かれ、欧州の舞台でも十分な活躍を披露している。

中でも、ドイツ戦を欠場した守田英正は大化けした。もともと中盤の守備を一手に引き受ける守備専門のMFだったが、川崎が「5レーン理論」を導入し始めた2020年に攻撃性能を大幅に高め、翌年からポルトガルのサンタ・クララへと渡って活躍。名門スポルティング・リスボンに引き抜かれた今季も日進月歩の成長を続けている。

その守田がコスタリカ戦での先発復帰が濃厚だ。他にもスペイン紙『マルカ』が第1戦のベストイレブンに日本から唯一選出したDF板倉滉(ボルシアMG)や、現川崎の主将であるDF谷口彰悟山根視来(川崎)、MF田中碧(デュッセルドルフ)、三笘ら、川崎出身の「5レーンの支配者たち」は現代表チームに揃っている。

注目は、酒井に代わって右SBでの先発が有力な山根だ。昨年12アシストを記録してアシスト王に輝くなど、川崎へ加入した2020年以降の3年で9ゴール22アシスト。代表デビュー戦でもゴールを挙げるなど、SBながら多くの得点に絡む。山根は攻撃時に大外のレーンを駆け上がる従来のSBとは異なり、中央のレーンでボールを受けてゲームメイクに大きく関与する「偽SB」の働きが特徴だ。中央にポジションをとることで味方のクロスのこぼれ球を回収し、相手のカウンター阻止につながる守備で攻守をリンクさせてもいる。

そんな山根は本大会直前の17日に行われたカナダ戦で相手の決勝点となるPKを献上したが、その直前には自身が決勝点を挙げるチャンスも得ていた。大会中、勝ち上がるチームには「ラッキーボーイ」の出現が不可欠だが、山根はその候補となりそうだ。

ドイツ戦では板倉や「一人三役」をこなしたMF鎌田大地(フランクフルト)、同点弾のMF堂安律(フライブルク)、FW浅野拓磨(ボーフム)らドイツでプレーする選手の活躍が目立った。コスタリカ戦の日本は、川崎勢の活躍によって決勝トーナメント進出に向けた大きな1勝を狙う。

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文●新垣博之(しんがき・ひろゆき)

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