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過去最多の日本馬4頭が出走した第101回・凱旋門賞(GI、芝2400m)は2日、パリロンシャン競馬場で行われ、L.モリス騎手が騎乗したアルピニスタ(牝5、英・M.プレスコット厩舎)がGI6連勝で制した。5歳牝馬の凱旋門賞優勝は、1937年のコリーダ以来85年ぶり2頭目となる。
2着は仏ダービー馬ヴァデニ(牡3、仏・JC.ルジェ厩舎)、3着は昨年の覇者トルカータータッソ(牡5、独・M.ヴァイス厩舎)。日本馬はタイトルホルダーの11着が最先着、ステイフーリッシュは14着、ディープボンドは18着、ドウデュースは19着に敗れ、またしても悲願成就はならなかった。
◆【凱旋門賞2022/動画プレーバック】重馬場にもがくタイトルホルダーを“持ったまま”抜き去るアルピニスタ
■「あと20分、空が持ってくれれば……」
1969年にスピードシンボリが着外に敗れて以降、これまで多くの日本馬が参戦してきた凱旋門賞。
1999年にエルコンドルパサーが愛仏ダービー馬モンジューに半馬身迫る2着と健闘し、2010年にはナカヤマフェスタが英ダービー馬ワークフォースと叩き合いアタマ差の2着、12年にはオルフェーヴルが一旦は先頭に立ったが、ゴール寸前で内ラチへ寄れてしまい、世界制覇の夢がするりとこぼれ落ちた。
頂点まであと一歩。しかし、2014年以降はハープスターの6着が最高着順と日本馬の苦戦は続き、再び遠のく歴史の扉。その背景にはやはり「馬場適性の差」がある。
昨年、国内では道悪で4戦無敗を誇ったクロノジェネシスでさえ、近年で最もタフな馬場と言われた重馬場に脚を取られ、残り200m付近で力尽きた。
今年は昨年ほどの道悪でなかったが、それでもレース後の関係者が口を揃えた敗因は「重馬場」。直前で降り出した雨が、またしても日本馬を苦しめた。
ドウデュースの友道師は4着に敗れた前哨戦・ニエル賞の走りを引き合いに「やはり直前の雨が堪えた。(前走も)すごく馬場も気にしてた」と振り返り、ディープボンドの大久保師は「あと20分、空が持ってくれれば……」と天を仰いだ。
■「別のタイプの馬を連れてくるしかない」
今年の勝ち時計は2分35秒71(重)、2021年は2分37秒62(重)、20年は2分39秒30(不良)と、加速する凱旋門賞のタフな重馬場。
タイトルホルダーの栗田師が「別のタイプの馬を連れてくるしかない」と語れば、ステイフーリッシュの矢作師も「四輪駆動の馬を連れてくる」と、その対策を口にした。
また、元JRAジョッキーで競馬評論家の安藤勝己氏は自身のツイッターで、「アルピニスタなんて水掻きついとるような全然違う手応えやもん」と、重馬場をモノともせず最内から突き抜けた優勝馬の走りを振り返り、「異種目たるや、今年は超RIZIN級くらい感じた」と、ボクシング元世界5階級制覇王者のフロイド・メイウェザーと、総合格闘家・朝倉未来の一戦に例えた。
2021年、世界のダート最高峰・ブリーダーズカップディスタフで日本調教馬初の優勝を果たしたマルシュロレーヌ。その同馬を管理する矢作師はレース後、こう語っている。「芝でも走れる馬を連れてくるのがアメリカのダートに合っている、という自分の考えが適合した」。
重馬場の凱旋門賞を「異種目」と捉えるならば、この“狂想曲”に終止符を打つ手は、ダービー馬でもグランプリホースでもなく、芝・ダート兼用馬の参戦なのかもしれない。
◆【凱旋門賞2022/動画プレーバック】重馬場にもがくタイトルホルダーを“持ったまま”抜き去るアルピニスタ
◆日本馬最先着の11着タイトルホルダー 栗田師「力は出し切ってくれたと思います」
◆ダービー馬ドウデュースはよもやのブービー19着 武豊「馬の状態は最高に良かった」
文●SPREAD編集部