【ラ・リーガ】久保建英が“古巣”バルセロナ相手に得た教訓 最高の教科書となった盟友と天才レフティー | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【ラ・リーガ】久保建英が“古巣”バルセロナ相手に得た教訓 最高の教科書となった盟友と天才レフティー

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【ラ・リーガ】久保建英が“古巣”バルセロナ相手に得た教訓 最高の教科書となった盟友と天才レフティー
  • 【ラ・リーガ】久保建英が“古巣”バルセロナ相手に得た教訓 最高の教科書となった盟友と天才レフティー

日本代表MF久保建英が所属するレアル・ソシエダはラ・リーガ第2節にホームで強豪バルセロナと対戦。久保は決勝点を挙げた前節のカディス戦と同じく[4-3-1-2]システムの2トップの一角として先発出場したが、2試合連続のゴールは挙げられず。チームも1-4で敗れた。

前半は1-1で折り返し、60分頃までは内容的にも互角。久保はボール奪取で同点弾の起点となるなど奮闘したが、1-3となった69分にベンチへと退いた。それでも、スペイン大手紙『マルカ』は3点満点の採点で「2」と及第点の評価を与えた。

この試合から久保が得た教訓は、そして目指すべき道とは?

◆久保建英は本領発揮となるのか、確固たる地位の構築に必要なのは“数字”

■「最強の相棒」が「最恐の敵」に

久保にとってバルサは10歳から14歳までの育成年代を過ごした古巣だ。この日、対戦相手となったDFエリック・ガルシアとFWアンス・ファティの両スペイン代表は同じチームでプレーしたかつてのチームメイト。特に前線でコンビを組み、ともに得点を量産したファティは「最強の相棒」だった。

その久保の元相棒はであるファティは昨季、チームの象徴だったアルゼンチン代表FWリオネル・メッシ(パリ・サンジェルマン)の電撃退団によって空いたエースナンバー「10」を背負うことになった。当時18歳にして「メッシの後継者」に指名されたのだ。

ファティは16歳にしてバルサのトップチームに昇格し、16歳304日でクラブ史上最年少ゴールを挙げた「神童」だ。しかし、センセーショナルなデビューイヤーにリーガ24試合出場7ゴールを挙げたものの、その後の2シーズンでは度重なる大きな怪我に苦しみ、合計17試合出場8ゴールに留まっている。

長期離脱から復帰して間もない彼は、この日も64分からの途中出場だった。それでもピッチに立った彼はすぐさま“違い”を見せつけた。

66分にヒールキックによる意外性溢れるパスで決勝点をアシストすると、その2分後にもゴール前の僅かなスペースに巧みなワンタッチパスを通して再びアシスト。79分には自らダメ押しのゴールを奪い、出場から15分間で1得点2アシストの大活躍。その後も確実に相手DFの重心の逆をとるドリブル突破で幾度もチャンスメイクするなど、途中出場ながらマン・オブ・ザ・マッチに選出。久保とソシエダにとって「最恐の敵」となった。

■「最高の教科書」ダビド・シルバ

一方、この試合で敗れたソシエダ側に『マルカ』の採点で満点の「3」がついた選手がいる。スペイン代表として2度の欧州制覇(2008、12年)と10年の南アフリカW杯優勝を経験しているMFダビド・シルバだ。

現在36歳になったレフティーは類まれなスキルを持つ司令塔で、ボールを持てば相手に奪われることは皆無に近い。特に相手が密集する狭いスペースでのターンは世界でも指折りの名人芸だ。

173cm、67kgの久保と170cm、67kgのシルバは、共に左利きの技巧派。左足でボールを持ち、何度も小刻みなステップを踏んでパスのタイミングを見計らうプレーなどは瓜二つだ。

しかし、久保にはシルバよりも大きく劣る部分がある。この日もトップ下としてプレーしたシルバは、FW起用の久保と効果的なポジションチェンジを繰り返した。バルサ守備陣に的を絞らせないシルバの巧みな動きによって、マークが剥がれた久保がボールを受けられる場面も多くなった。

サッカーでは司令塔タイプの選手は共存が難しいと言われるが、シルバは前所属のマンチェスター・シティでもベルギー代表MFケビン・デ・ブライネとW司令塔として機能していた。それは久保との関係でも見られるように、シルバは自らがボールを持たずともゲームメイクができる選手だからだ。「味方を活かすプレー」と聞くとパスを連想させるが、シルバのプレーを目にすると、それだけではないことが理解できる。

それに対して久保はまだまだ「ボールを持ってナンボ」の選手だ。経験を積む必要があるのは事実だが、まだまだおとりになる動きが少なすぎる。シルバという「最高の教科書」から学べることは多い。

■久保に求められるのは結果

久保はシルバよりもドリブルで突破できる距離が長く、シュート力も高い。シルバもスペイン代表では1トップに入る時期もあるなど、若かりし頃はアタッカー色が強い選手だった。ただ、アタッカーとしての能力では久保が上回っている気もする。

現在のソシエダにはシルバがいて、戦線離脱中のスペイン代表FWミケル・オヤルサバルもいる。後者はリーガで4年連続2桁ゴールを挙げたチームのエースにして主将でもあるため、彼の復帰後は久保が先発から外れる可能性もある。

ただ、ソシエダで5年目の指揮を執るイマノル・アルグシアル監督は、これまで多くのシステムを柔軟に採用してきた。結果を残せば、システムを変えてでも久保を先発から外すようなことはしないはずだ。

そのためには、この日の27分に訪れたような決定機を確実にモノにする必要がある。ゴール前で相手GKが弾いたボールに詰めたが、フリーでありながら枠を外してしまった。競争の激しいソシエダ攻撃陣の中で確固たる地位は築いていくには、短い出場時間でも結果を残したファティのような結果が求められる。

現在21歳の久保は、得点やアシストを量産できるファティのような破格路線を歩むのか?それともシルバのような利他的な司令塔を目指すのか?どちらにも可能性を感じさせる。

途中出場で結果を残し主役となった盟友ファティや、ピッチ内外で同僚の天才レフティーシルバから学び、結果を残すことが求められている。

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文●新垣 博之

《SPREAD》
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