【X Games】日本のエース堀米雄斗と白井空良の強さの源にある関係性 表彰台独占の裏に見るパイオニア中村貴咲の功績 後編 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【X Games】日本のエース堀米雄斗と白井空良の強さの源にある関係性 表彰台独占の裏に見るパイオニア中村貴咲の功績 後編

新着 ビジネス
【X Games】日本のエース堀米雄斗と白井空良の強さの源にある関係性 表彰台独占の裏に見るパイオニア中村貴咲の功績 後編
  • 【X Games】日本のエース堀米雄斗と白井空良の強さの源にある関係性 表彰台独占の裏に見るパイオニア中村貴咲の功績 後編

■3人に共通する運命的なまでのつながり

3人の深いつながり 撮影:小嶋勝美

TUFLEGのボス立本和樹は、90年代終わりから00年代始め頃の20代前半、アメリカの老舗デッキブランドBlind Skateboardsのフローライダーとして活躍していた。そして堀米が日本のデッキブランドHIBRID skateboardsから本場アメリカのブランドに移った際に加入したのがBlind。その後アマとして活動後、現在のApril Skateboardsでプロモデルを出すことになる。さらに白井がTUFLEGを抜けた後に加入したのもBlind Skateboardsで、現在は自身のプロモデルをリリースしている。この流れに3人の運命を感じざるを得ない。

TUFLEGを主宰する、今大会のジャッジを努めた立本和樹(左)と授賞式後の堀米雄斗 撮影:小嶋勝美

ちなみにバート種目専門で大会に出ていた堀米雄斗を最初にストリートの大会に誘ったのも立本だった。立本は当時堀米が通っていたローカルスケートパークであるムラサキパーク東京で働いていた。様々な事情が重なり立本のBlindでの活動期間は約2年ほどだったが、その意志は今も2人に受け継がれている。

◆【前編】日本のエース堀米雄斗と白井空良の強さの源にある関係性 表彰台独占の裏に見るパイオニア中村貴咲の功績

■堀米の強さにある“常に自分超えをしていく姿”

堀米雄斗/ノーリーフロントサイド270リップスライド 撮影:小嶋勝美

堀米といえばやはりノーリー(利き足とは逆の足で踏切って飛び上がる技)からの多彩なトリックの引き出しの多さにある。これまで注目されていたノーリーから空中で270度回転し、手すりを滑り降りる技に加え今大会では、新技のノーリーバックサイド180スイッチスミスグラインドという新技(空中で180度回転し、トラックと呼ばれる車軸を斜めにかけて滑り降りる)を披露。レールが見えない方向に回る技で超高難度のトリックだ。

最終滑走のラン最後にはさらなる新技、スイッチトレフリップ(360フリップ)リップスライドを見せた。この技はスイッチスタンスという普段とは逆のスタンスで板に乗り、板を空中で縦と横に1回転させてキャッチし、そのまま手すりを滑り降りる技。

堀米の強さはこういった世界的な大舞台でも、自身の持つ大技を決める驚異的なまでの精神力と集中力にある。今大会でもニュートリック2発で“これまでの自分を超えていく姿”を見せる所に、ファンは惹かれるのだろう。

■普通では考えられない動きこそ“白井が普通ではないスケーター”の証

白井空良/キャブシュガーケーングラインド 撮影:小嶋勝美

個人的には、銅メダルに輝いた白井空良のトリックにとても驚かされた。

まず1本目の1発目にハンドレールで見せたキャバレリアルシュガーケーングラインド。アーリーウープという本来飛びやすい方向とは逆方向に回転しながら飛ぶ事でトリックの難易度は何倍にも膨れ上がるのだが、白井はこの動きを得意としている。そして今回のキャバレリアルシュガーケーングラインドだ。

そもそもハンドレールでシュガーケーングラインドをするだけでもとてもオシャレでカッコ良い技なのだが、フェイキー方向(後ろ向きに)に進みながら空中で360度回転し、レールにシュガーケーンというトリックをメイクした所に、他のスケーターとの次元の違いを感じる。そしてラストトリックで、これまたアーリーウープ回転からのバックサイド180スイッチフロントサイドK(クルックド)グラインド。この普通では考えられない動きこそが、彼が普通のスケーターではない証とも言える。

白井はこのランでフルメイク(ランで全ての技を成功させる事)は出来ずに3位だったが、これをフルメイク出来ていたら優勝も狙えたトリック構成だったように思える。

いずれにしても、世界最高峰のトリックの応酬に鳥肌がたった人は自分だけではないはず。2人の日本のエースはこれからどんな風にスケートボードを進化させていくのだろうか

■欠場者が相次ぐも〜スケートボードの今を象徴する大会

スケートボード界の大スター、ナイジャ・ヒューストンとシェーン・オニールの写真が入った会場内のポスター 撮影:小嶋勝美

当初出場予定だったナイジャ・ヒューストン(X Games金メダル13個)や東京五輪ストリート金メダリストの西矢椛、同じくパーク男子金メダリストのキーガン・パーマー、パーク女子銅メダリストで日本にもゆかりの深いスカイ・ブラウンなどが欠場。個人的に楽しみであった2021年のスケートオブザイヤー(THRASHERマガジンが毎年発表するスケーターにとって最高峰の称号)マーク・スチュウも気付いたら出場者リストから消えていた。

ゆえに、今のスケートボードの最高峰を競う大会だったとは言えないが、X Gamesの醍醐味である、世界中のトップ選手達が最高のパフォーマンスをし、それを見る側も一緒に楽しむ姿を見る事が出来た。そして何よりスケートボードの“今”を象徴するスケーター達の最高のパフォーマンスを、ここ日本で見る事が出来、本当に感動の3日間であった。

◆【前編】日本のエース堀米雄斗と白井空良の強さの源にある関係性 表彰台独占の裏に見るパイオニア中村貴咲の功績

◆日本初開催、雨の激闘を制した堀米雄斗 一問一答「応援が力になった」

◆【実際の映像】これぞ王者の貫禄…堀米雄斗が日本初開催「X Games」での優勝を決めた圧巻パフォーマンス

■著者プロフィール

小嶋勝美●スケートボードライター

放送作家で元芸人のスケーター。スケートボード歴は一応20年以上。

《SPREAD》
page top