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【ラグビー】2年後のワールドカップ・フランス大会へ、新生ジャパンへの期待

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【ラグビー】2年後のワールドカップ・フランス大会へ、新生ジャパンへの期待
  • 【ラグビー】2年後のワールドカップ・フランス大会へ、新生ジャパンへの期待

ラグビー日本代表がワールドカップ・フランス大会に向けて、欧州遠征で始動した。昨年は、イングランドウェールズとの試合がコロナ禍のために中止となり、ワールドカップ準々決勝以来、約2年ぶりのテストマッチとなった。


■2年後のワールドカップ・フランス大会を占う遠征


「まだまだ先」と思っていたフランス大会も、あと2年で開幕を迎える。ジャパンは、2019年のWC日本大会で悲願のベスト8入りを果たし、世界の強豪国の証し「ティア1」にも昇格した。


グループリーグ突破は「最低限のノルマ」といえるだろう。前回大会の強化母体となったサンウルブスが今回はない。2年という準備期間は決して余裕があるとはいえないだろう。


すでにジャパンのフランス大会2戦目(2023年9月17日)にイングランド戦が決定している。前回、オールブラックスを倒し準優勝したイングランドは、もちろん格上、優勝候補だ。ワールドランキングで上位のアルゼンチンも同居するプールDをどう勝ち抜くか、今回の欧州遠征2戦は2年後を占うテストマッチとなった。


■BIライオンズに力負けも、姫野が存在感を示す


遠征初戦の相手はイングランドウェールズスコットランドアイルランドの代表選手で構成されるドリームチーム、ブリティッシュ ・アイリッシュ・ライオンズ(BIライオンズ)だった。6月26日、エディンバラのマレーフィールドには1万6500人の観客が集まった。


1カ月にわたる南アフリカ遠征をひかえたBIライオンズ は、いわば急造チーム。胸を借りる形とはいえ、ジャパンにもつけ入る隙があると思われたが、開始12分にWCトライ王のジョシュ・アダムスがトライを決めると、前半のうちに2トライを追加されて0-21と主導権を奪われた。


しかし、後半10分に姫野和樹が交代出場すると流れが変わった。ニュージーランドの国内リーグの新人王は、突進、ジャッカルで武者修行の成果を発揮、ファワードを前進させた。


そして、19分、ジェームス・ムーアから受けたボールを強引に運びゴール下にトライ。BIライオンズから奪った初トライは、ジャパン唯一のトライとなった。その後も押し気味に進めたものの、試合は10-28で敗れた。


■第2戦、アイルランドとのシーソーゲームを落とす


第2戦の対戦相手は、静岡のエコパスタジアムで19-12と下し日本中が熱狂したアイルランド。あのラストシーンを忘れられないという人も多いだろう。


ワールドランキングでは、もちろんアイルランドが上位だが、BIライオンズに7名が選出されたうえ、ジョナサン・セクストン(SO)ら主力級が休養中。エコパの再現を期待して、7月3日、ダブリンのアビバスタジアムに乗り込んだ。


試合は開始早々に田村優がPGを決めて、ジャパンが先制。以降、両軍が点を取り合うシーソーゲームとなった。この試合で輝いたのは、背番号9をつけてピッチに立った斎藤直人。素早い球出しでゲームをコントロールし、後半17分には代表での初トライをマークした。


両ウイングは、ともに今回の遠征が代表デビューのシオサイア・フィフィタセミシ・マシレワの近鉄ライナーズ・コンビ。フィフィタが体力を生かした突進力をアピールすると、マシレワはハイボールのキャッチや細かいステップでテクニックを披露した。フィフィタが逆サイドまでポジションを移動してパスをつなぐ連携も効果的だった。


試合はフルバックで出場していた松島幸太朗のケガが響き、31-39と競り負けた。姫野がケガのため欠場、ベンチにも入れなかったのも痛かった。試合後、キャプテンのリーチ・マイケルは「勝てる試合に負けてしまった」と悔しさをにじませた。


■若いメンバーの活躍に期待したい


2試合の戦いをみて、メンバーの新陳代謝が必要と感じた。リーチ、田村、稲垣など、チームの中心は前回大会の主力選手ばかり。BIライオンズ戦は先発15人中14人が2019年を経験した選手で、9人が30歳以上だった。こう言っては失礼だが、新鮮味に欠ける。


今回、通用することを証明した斎藤、フィフィタ、マシレワなど、フレッシュな戦力を積極的に使って、チームに活気を注入したい。特に斎藤は、フランスチームのカンフル剤となったアントワン・デュポンのような存在になりえる。


田村、松田力也を脅かすSOの登場も必須だろう。姫野、松島がワールドレベルにあることは今回も再確認できた。両エースと若いメンバーで作るチームで、再び感動を味わいたい。


最後に、2試合を通じて見せたアイルランド、スコットランドの執念について触れたい。この両チームは前回WCでジャパンと同じプールに入り、ともに苦杯を舐めた。特にアイルランドは12-19のビハインドからボーナスポイントを取るために自らボールを蹴り出してゲームを終わらせる「ギブアップ負け」だった。これは大変な屈辱だろう。


2015年にジャパンに敗れた南アフリカが、WC準々決勝で完璧なリベンジを果たしたように、北半球の2チームもジャパンに対しては並々ならぬ闘志を燃やしているはずだ。ジャパンは再びエディンバラに乗り込んで11月20日にスコットランドと対戦する。新生ジャパンを機能させないと、厳しい結果になる恐れもある。


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著者プロフィール


牧野森太郎●フリーライター


ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。

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