【テニス】ウィンブルドンを熱くする元王者たちの挑戦 混戦の女子は39歳・セリーナに注目 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【テニス】ウィンブルドンを熱くする元王者たちの挑戦 混戦の女子は39歳・セリーナに注目

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【テニス】ウィンブルドンを熱くする元王者たちの挑戦 混戦の女子は39歳・セリーナに注目
  • 【テニス】ウィンブルドンを熱くする元王者たちの挑戦 混戦の女子は39歳・セリーナに注目

テニスの4大大会・ウィンブルドンが、28日に開幕する。選手たちはパリの赤土に別れを告げ、つかの間の休息もないまま芝シーズンへ突入。今年は全仏オープンからウィンブルドンまでの期間が2週間のみ。選手たちは真逆の特性を持つともいえるサーフェスに対し急ピッチでプレーの仕上げにかかる。


■フェデラーを支える芝での豊富な勝利経験


男子は、全仏チャンピオンであり、ウィンブルドンのディフェンディングチャンピオンでもあるノバク・ジョコビッチ(セルビア)が第1シードで登場。今大会で優勝すれば、ロジャー・フェデラー(スイス)とラファエル・ナダル(スペイン)が持つグランドスラム通算20勝、シングルスタイトル数歴代1位の記録に肩を並べることになる。


続いて第2シードにはダニール・メドベージェフ(ロシア)、第3シードに全仏オープン準優勝のステファノス・チチパス(ギリシャ)が名を連ねた。第4シードにはドミニク・ティエム(オーストリア)が入る予定であったが、前哨戦のマジョルカ・オープンで手首を負傷し欠場を発表。2018年Nitto ATPファイナルズのチャンピオンであるアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)が、そのポジションを担う。


ウィンブルドンで8度の優勝を成し遂げているフェデラーは第6シードとして存在を輝かせる。フェデラーは今年に入り2度の右膝手術を経験。毎朝1歩目の感覚をチェックし、一日を終えるころには「明日の調子はどうだろう?」と今まで不要だった心配が39歳の彼を時折不安にさせているという。


だが全仏オープンでは、あの宙に浮いているような柔らかなステップで軽快に動き回り、鋭いストロークを相手コートに突き刺して順調に4回戦へ進出。ここでフェデラーは冷静に自身の体の状態を見極め、ウィンブルドンに向けて4回戦を棄権し休養を取った。その効果もあり「全体的には良い仕上がりだ。芝のコートでは常に自信を持っている」と勝利を見据え再発進。前哨戦のノベンティ・オープンでは若手のホープでもあるフェリックス・オジェ=アリアシム(カナダ)に2回戦で敗れるも、「すべての試合を情報として受け止め、それを解明する必要がある。なぜそれが起こっているのかを理解する必要がある」とウィンブルドン本番に向け、正しいフィードバックからプレーをより改善してくることだろう。いずれにせよ彼が言っている通り、今までに積み上げてきた芝での勝利経験が今大会優勝に向けて彼を支える指針となる。


■マレーはワイルドカード枠で参戦、「ビッグ4」の戦いに注目


そして2度チャンピオンとして輝いたアンディ・マレー(イギリス)が、ワイルドカード枠でホームコートへ戻ってくる。シングルスでは2017年以来の出場。彼もまた股関節の手術を複数回受けてからの復帰となったが、今季は新型コロナウイルス陽性になったこともあり試合数をこなせず、ツアー大会は計5試合しか戦っていない。試合勘や体力面では、やはり完全ではないことを認めつつ、練習で好感触を得られていることから「いずれ何か起きるだろう」と粛々とトップへの返り咲きを狙っている。前哨戦であるシンチ・チャンピオンシップスでは、3年ぶりの芝での試合に臨み1回戦勝利後には涙を見せた。そこには様々な感情が入り混じっていたようにも思う。実際に引退の文字も脳裏の片隅に居座っていることだろう……。だが、彼のテニスへの愛は今も変わらず燃え続ける。


「僕がまだプレーしている理由は、テニスが好きだからです。もし目標が世界一になることだけだったら、3年前怪我をしたときに引退していたでしょう。怪我からの復帰は、そう簡単ではないが、この一瞬を楽しみたい。日々、自分が健康であることに集中して目の前の試合を乗り越えていくことができれば、まだまだハイレベルなテニスができると思っています。そしてできる限り長くプレーしたいと思っているよ」


第2シードのチチパス、第4シードのズべレフをはじめ、アンドレイ・ルブレフ(ロシア)、マッテオ・ベレッティーニ(イタリア)など「ネクストジェン」と呼ばれる若手選手が活躍することは濃厚だが、「ビッグ4」として一時代を築き上げたフェデラーとマレーの元王者としての戦いぶりには常に注目していきたい。


■女子は混戦模様、新女王誕生の可能性も


女子は、全仏でもトップシードを務めたアシュリー・バーティ(オーストラリア)が第1シードとして今大会をリードする。全仏では左股関節の怪我から2回戦を棄権、その後大会には出場せずウィンブルドンを迎えた。第2シードにはアリーナ・サバレンカ(ベラルーシ)、第3シードにエリナ・スビトリナ(ウクライナ)。第4シードに2020年の全豪チャンピオンのソフィア・ケニン(アメリカ)が選ばれ、トップメンバーとしてライバルたちを迎え撃つ。また、全仏でシンデレラストーリーを実現したバルボラ・クレイチコバ(チェコ)は、第14シードとして登場する。


ディフェンディングチャンピオンであり第2シードに予定されていたシモナ・ハレプ(ルーマニア)は、会場で元気な姿を見せていたが、ふくらはぎのケガが完治していないと判断し今大会の欠場を決断。これでトップ4シードのうちグランドスラムタイトルを持っているのは、バーティーとケニンの2人だけとなった。女子は再び混戦が予想され、このウィンブルドンの聖地で新女王が誕生しても不思議ではない。そして、そこに再び元女王の姿があってもおかしくないはずだ。


ウィンブルドン7度の優勝を誇るセリーナ・ウィリアムズ(アメリカ)は第6シードとして登場。芝での試合勝利率は88.4%、107勝14敗と自己最高を記録しており「私は芝が大好きなの。青々としたコートも好きだし、私は今までこのコートで、かなりうまくやってきたのよ」と大会を前に自信をのぞかせる。彼女が最後にメジャータイトルを獲得したのは4年前の全豪オープンで、彼女はすでに娘のオリンピアを妊娠していた。その後も世界最高峰で戦い続ける“カッコいいワーキングママ”として現役生活を続け、今も変わらず最高のサービスとリターンを武器に存在感を示している。


「私はコート上にいることが好きなのだと思います。コートに立つと自由になれるから。自分の仕事が好きだし、自分のしていることが好き。それ以外に他のインスピレーションは必要ないと思うわ」


今年40歳を迎えるセリーナ。自分のため、娘のために、母としてウィンブルドン8度目のタイトル獲得を狙う。


◆全仏棄権の裏にあった素直さとジレンマ 大坂なおみが再び輝くために


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◆今を輝くテニス新女王アシュリー・バーティの朝活


著者プロフィール


久見香奈恵1987年京都府生まれ。10歳の時からテニスを始め、13歳でRSK全国選抜ジュニアテニス大会で全国初優勝を果たし、ワールドジュニア日本代表U14に選出される。園田学園高等学校を卒業後、2005年にプロ入り。国内外のプロツアーでITFシングルス3勝、ダブルス10勝、WTAダブルス1勝のタイトルを持つ。2015年には全日本選手権ダブルスで優勝し国内タイトルを獲得。2017年に現役を引退し、現在はテニス普及活動をはじめ後世への強化指導合宿で活躍中。国内でのプロツアーの大会運営にも力を注ぐ。

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