バスケ対ダンス、Bリーグ vs Dリーグ in宇都宮 史上初ダンスバトルの軍配は…… | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

バスケ対ダンス、Bリーグ vs Dリーグ in宇都宮 史上初ダンスバトルの軍配は……

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バスケ対ダンス、Bリーグ vs Dリーグ in宇都宮 史上初ダンスバトルの軍配は……
  • バスケ対ダンス、Bリーグ vs Dリーグ in宇都宮 史上初ダンスバトルの軍配は……

Bリーグ vs Dリーグに興味ありませんか」。


そうメッセージが送られてきたのは、もうだいぶ前に一緒に仕事をともにした知人からだった。


「Bリーグ vs Dリーグ」、それは「ゴジラ対メカゴジラ」のようにも響いたが、むしろ「スーパーマン vs バットマン」のようにまったく異種の対決だと考え直した。


だが、そのストーリーをよくよく紐解くと、リーグの「対決」ではなく、BリーグDリーグのコラボレーション企画だと理解した。日本のスポーツ界は、昭和の長い退屈な時代と異なり、各種競技の活性化から、様々なスポーツに脚光が浴びせられている。Jリーグ誕生から固着していた観戦スタイルは、Bリーグ誕生以降FリーグVリーグTリーグとそれぞれのスタイルを「魅せる」スポーツへとメタモルフォーゼし、2021年の今年、ついにはダンスのプロ「Dリーグ」までもがスタートした。


ご存じない方のために今一度、おさらいすると今年1月、世界初のプロダンスリーグは日本発の「Dリーグ」として結実。記念すべきファースト・シーズンは9チームによるダンスバトルが全12戦繰り広げられ、年間チャンピオンチームが決定される。


今回の取り組みは、新しく始まったリーグの飛躍のために、他競技とのコラボレーションが企画されたという顛末らしい。Bリーグの開幕も、Tリーグの開幕も、Dリーグの開幕もこの目にして来た新しいもの好きとしては、こんなチャンスを無駄にするのは、馬鹿らしいと新型コロナ禍、初めての新幹線で宇都宮へと向かった。


【動画】「Bリーグ vs Dリーグ」、ハーフタイムで披露されたI’moonと8 ROCKSによるダンスバトルの模様


■ハーフタイムに「ダンスバトル」の斬新なイベント


ブレックスアリーナ宇都宮


Bリーグの宇都宮ブレックスシーホース三河の対戦の最中、そのハーフタイムにDリーグの「ダンスバトル」が展開される、よもやよもや試合中に試合が開催されるという、なんとも斬新なイベントが開催された。


宇都宮ブレックスは、なにしろBリーグ初代王者。そのホーム、ブレックスアリーナ宇都宮で、どんなバスケとどんなダンスが繰り広げられるのか……。


アリーナは新型コロナ感染対策のため、シートはひと席ごとに着席、もちろんファンはマスク着用のため、声援もNG。そんな中、どんなゲームが繰り広げられるのかと懸念していると、とんでもない。ブースターは、手拍子足拍子で、アリーナが揺れるかという熱気のこもった応援で、首位争いを繰り広げるホームチームを盛り上げる。


Bリーグのゲーム観戦の際にいつも感じるのはブースターの温かさだ。もちろん、アリーナに詰めかけたファンのほとんどがホームチームに声援を送るが、相手チームにナイスプレーが飛び出すと、それにも惜しみない拍手を送る。良し悪しはあるが、NBAではもう少々ホームチームびいきが強い。また、Jリーグなどは相手チームに罵声を浴びせるどころか、某クラブによっては自チームにも罵声を飛ばすなど、殺伐としたシーンが見られ、現地観戦に嫌気が指す場合も多い。しかし、Bリーグではそんな嫌悪感を抱かされることもなく安心して試合観戦に集中できる。


中でも宇都宮は、Bリーグ以前からバスケ観戦の啓蒙が行き届いているのだろう。応援と表現するよりも、チームを「見守る」という表現が正しい。いちバスケ・ファンとしては、「なぜうちの近所にBリーグ・チームはないのか」と思い描いてしまうほど。


しかし、残念ながらこの日のブレックスはぴりっとしない。1Qからつまずいた。フィールドゴールの決定率は観戦中に予見できるほど悪く、シーホースにリードを許す。やきもきしていると、前半が終了。ハーフタイムだ。


■相性の良いバスケとダンス、企画実現に障壁なし


ハーフタイムにパフォーマンスを披露したKOSE 8ROCKS


この日はここでDリーグのKOSE 8 ROCKSUSEN-NEXT I’moonによるダンスバトルが繰り広げられた。


本企画が実現するまでの流れを、株式会社栃木ブレックス プロモーション・広報グループ プロモーション アリーナ運営グループ エンターテインメント松延凛さんに聞いた。


Bリーグ全47チームがある中でも、松延さんのような演出担当を抱えるチームは極めて珍しいという。「演出さん」なしも珍しくなく、多くの場合は「外注」で賄うケースが多いのだとか。


「バスケと音楽、バスケとダンスはつながりも深く、非常に相性がよいので、ハーフタイムにダンサーが出演するのは、そう珍しいことではありません。ただし、今回は『Dリーグ』の方々が出演してくださるということで『ぜひ』とお受けしました」と今回の企画実現にはほとんど障壁がなかったという。


「これまでと異なり今回はプロリーグの出演なので、せっかくですから、通常のリーグ同様ダンスバトル形式でお願いすることにしました。ただし、やはりハーフタイムという限られた時間枠なので、2チームのみの出演となりました」。


サッカーも同様だが、ハーフタイムとなると観客はいっせいにシートを離れ、集中力の解かれるブレイクとなるが、この日ばかりは様子が異なった。あらかじめ観客の拍手によって、ダンスバトルの勝敗が決すると告知されていたがゆえ、2Q終了ともにI’moonが紹介されても、シートを離れるファンはいなかった。


I’moonと8 ROCKS、この2チームはダンス演目も構成も対称的だ。I’moonはDリーグの中でも唯一、女性のみで構成されたチームであり、それがゆえにダンスも、いわば「ダンス甲子園」などでお馴染みの女性らしい、ハーモニーとしなやかさが特徴であり、そのめくるめく世界に魅了される。8 ROCKSは男女混成、パリ五輪で採用された「ブレイキン」スタイルがゆえに、アクティブ、エナジェティック、アクロバティックなスタイルに時として肝を抜かれるほど。


眺めていたところ、観客席を離れたファンは、ほとんどと表現していいほど見られなかったのではないだろうか。


ハーフタイムにパフォーマンスを披露したUSEN-NEXT I’moon


■野球、Jリーグ、フェンシング…今後のコラボも構想中


「せっかくのダンスバトルなので、(ふだんのDリーグのように)アプリを使用し勝敗を決定する方法も考えられたのですが、せっかくBリーグとDリーグの初の試みなので多くの観客に参加してもらいたい。アプリをダンロードしてもらうと、どうしても参加率を下げてしまうので、拍手という形式で勝敗を決することにしました」と初企画ならではの気配りも。


結果、拍手による「僅差」で8ROCKSに軍配が挙がったものの、松延さんも「ぎりぎり判断がつく」レベルの差だったと苦笑いだった。


宇都宮ブレックスは、名称の変遷はあったもののチーム創立からすでに12年。その歳月が「応援とその楽しみ方を知るファン」を作り出して来たという。昨今の新型コロナ禍において、挙式ができなかった方々をハーフタイムに呼び、そこで結婚式を挙げる……などとちょっと変わった演出もあったが、「出演する側も、それを見る側もハッピーな企画にできました」と満足気だ。


Dリーグとのコラボレーションは「今後も続けたいですね」と好感触。またさらには「せっかく栃木には他のプロスポーツチームも籍を置いているので、野球の独立リーグJリーグともご一緒したいですね。フェンシングなどもご一緒できると、かなり面白いと思っています」と今後の構想についても明かした。


担当としてスポーツについて「LIVE観戦に勝るものはないと思っています。バスケはインサイド、アリーナで行われるスポーツなので、お子さんからご年配の方まで安心して楽しんでもらえる。たとえコロナ禍でも万全を期しているので、ぜひ会場に足を運んでもらいたいです」と熱意を語った。


今回、このダンスバトル、会場で感じた唯一の弊害は、ダンスバトル終了のちに、突然トイレに列が出来ていた……ことぐらいだろうか。


日本全国で、リーグ間のこうしたコラボレーションが促進され、そこかしこで「スポーツの力」が発揮されることを期待したい。


◆パフォーマンス後のI’moon・AIRIと8 ROCKS・ISSEIのコメント、動画で振り返るダンスバトルの模様


著者プロフィール


たまさぶろ●エッセイスト、BAR評論家、スポーツ・プロデューサー


週刊宝石』『FMステーション』などにて編集者を務めた後、渡米。ニューヨークで創作、ジャーナリズムを学び、この頃からフリーランスとして活動。Berlitz Translation Services Inc.、CNN Inc.本社勤務などを経て帰国。


MSNスポーツと『Number』の協業サイト運営、MLB日本語公式サイトをマネジメントするなど、スポーツ・プロデューサーとしても活躍。


推定市場価格1000万円超のコレクションを有する雑誌創刊号マニアでもある。


リトルリーグ時代に神宮球場を行進して以来、チームの勝率が若松勉の打率よりも低い頃からの東京ヤクルトスワローズ・ファン。MLBはその流れで、クイーンズ区住民だったこともあり、ニューヨーク・メッツ推し。


著書に『My Lost New York ~ BAR評論家がつづる九・一一前夜と現在(いま)』、『麗しきバーテンダーたち』など。




◆Bリーグ vs Dリーグ in宇都宮 ダンスバトルの軍配は……


世界初日本発」と銘打ったダンスのプロリーグ、そのファーストシーズンは2021年1月10日に東京・有明アリーナで華々しく開幕。ソフトバンクが誇る5G LABによる中継もあり、その模様は自宅にいながらにして堪能できるものの、新型コロナ対策に万全を期し3月のラウンド5まで、これまで無観客で開催されて来た。


ダンス……それはやはり魅せるパフォーマンス。これまで観客抜きで行われてきた事実は、パフォーマーとして忸怩たる思いがあっただろう。


そんな大前提がありつつ、「Dリーグ vs Bリーグ」、初のコラボレーションを終えた後、I’moonおよび8 ROCKSそれぞれに、この初めての試みについて感想を聞いた。


■「お客さんの顔を見たら泣きそうになりました」


USEN-NEXT I’moonのAIRI


I’moonのAIRIは冒頭から「お客さんって必要!と思いました」と愛想を崩した。Dリーグが開幕してからは5戦連続して無観客試合。新型コロナに社会そのものが席巻された2020年はプレス・カンファレンスも含め、まったく観客抜きのパフォーマンスを強いられてきた。この日、栃木県宇都宮のブレックスアリーナでは、収容人数の半分とは言え、リアルに観客あってのパフォーマンス。ハーフタイムにコートに出た瞬間「お客さんの顔を見たら泣きそうになりました」とのこと。どれだけ観客を入れての演技を渇望していたのか窺い知れる。


しかし「ふだんはダンスを観に来てくれるファンの前で踊りますから(バスケファンに)最初は受け入れてもらえるかどうか、とても不安でした。以前まったく別のお仕事では、こうした合間のパフォーマンスの前に帰ってしまうファンもいたので……」と不安もあった。ハーフタイムでのダンスバトルとはいえ、本来はBリーグ、バスケットボールの観戦に足を運んでいるファンたち、そして新型コロナ対策のため、声援を送ることを禁じられている……それだけにどんな反応になるかは懸念された。


「でも、大きな拍手で迎え入れてくれて(声援を送ることができない分だけ)、ブレックスの黄色いタオルをものすごく振ってくれて、拍手だけでなく、足踏みが響く応援で歓迎されて、しっかり観てくださっているのが感じられました」とその感動さえも口にした。


Bリーグのアリーナでパフォーマンスを披露したこの経験から、インスパイアされたこととして「私たちも(Dリーグというプロスポーツリーグなので)こうした感じで、ホームとアウェイがあるかたちでバトルをしてみたいです。自分のホームでは、アリーナでは、私たちを応援してくれるファンでいっぱい……その逆もあり。そんな新たな夢を描いてしまいました」と自身の理想を口にした。


■コートにあわせた構成でバスケファンにも実力を披露


KOSE 8ROCKSのISSEI


8ROCKSのディレクター兼パフォーマーでもあるISSEIは、このホーム&アウェイという発想について「それはいいですね。面白そうです! アウェイだと逆に観客がみんな相手チームを応援するわけですよね。逆にアドレナリンが出て『よし! やってやる!』という闘争心を全面に出すこともできる。ぜひやってみたいです」とAIRIの発想について大賛成のようだ。


そしてやはり「お客さんの前で踊るのは本当に久々なんで楽しかったです。そして、リーグとしても初めての交わりなので、しっかりパフォーマンスできて嬉しい」とその喜びも語った。


一方、いつもと異なる舞台、バスケットコート上での難しさについては「バスケットコートはけっこう踊りやすかったですね。ただ、いつものステージと比べるとあまりにも広すぎるし(正面に向かってパフォーマンスするリーグと異なり)360度から観られる、それを意識した構成にしなければならない。ブレイキンというカテゴリーからしても小さく見えないよう、いつもよりもダイナミックな動きを心がけないとならず、なんとかうまく実力を見せることができたと思ってます」とその感想を口にした。


■リーグを横断したコラボで今後の領域開拓にも期待


ダンスとして侮るなかれ、もちろん自身の身体で表現するだけに、ケガもついてまわるのだという。普段のトレーニングも筋トレのように必要のない筋肉を身にまとうのではなく、体操選手と同様にパフォーマンスの中で必要な筋肉だけを身につけるのだという。


「筋トレだと予期しない部分に筋肉がついてしまって、関節の可動域が狭まってしまうケースも多い。なので余計な筋トレはしません。意外にケガも多いです。靭帯を痛める、また脱臼も多いですね。首のヘルニアもブレイキンならではです」。やはりプロともなるとダンスもアスレティシズムを必要とするスポーツである事実が把握できるエピソードだ。


昨年から新型コロナウイルス蔓延により苦境を強いられるスポーツ界ながら、こうしたリーグ同士のコラボレーションなどにより、新しい領域を開拓、次の世代へとスポーツの力を広めて欲しいもの。


Dリーグは次戦ラウンド6より、いよいよ観客を迎えての戦いとなる。ファーストシーズンは残り3戦。果たして記念すべき初代チャンピオンは、どのチームとなるのか。こちらにもぜひ注目したい。


この日、ブレックス宇都宮はシーホース三河に破れはしたものの、翌日リベンジを果たし、首位争いにとどまった点も付け加えておく。


著者プロフィール


たまさぶろ●エッセイスト、BAR評論家、スポーツ・プロデューサー


週刊宝石』『FMステーション』などにて編集者を務めた後、渡米。ニューヨークで創作、ジャーナリズムを学び、この頃からフリーランスとして活動。Berlitz Translation Services Inc.、CNN Inc.本社勤務などを経て帰国。


MSNスポーツと『Number』の協業サイト運営、MLB日本語公式サイトをマネジメントするなど、スポーツ・プロデューサーとしても活躍。


推定市場価格1000万円超のコレクションを有する雑誌創刊号マニアでもある。


リトルリーグ時代に神宮球場を行進して以来、チームの勝率が若松勉の打率よりも低い頃からの東京ヤクルトスワローズ・ファン。MLBはその流れで、クイーンズ区住民だったこともあり、ニューヨーク・メッツ推し。


著書に『My Lost New York ~ BAR評論家がつづる九・一一前夜と現在(いま)』、『麗しきバーテンダーたち』など。

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