一般社会では昨年からコロナ禍に振り回され、暗い話題が続き、今年に入ってからも出口は見えない状況だが、競馬界はいい意味で“カヤの外”にある。
というのは、無観客ながら日程が滞ることなく開催され、加えて馬券の売上が好調。これだけでもすごいことだが、別の意味でも見通しが明るい材料がある。それが若手騎手の台頭である。
◆サウジ入国禁止も“特例”でセーフ 藤田菜七子騎手が国際騎手招待競走に出場決定
■数年中にリーディングの勢力図がガラリと変わる可能性
騎手の全国リーディングを見ると、上位3人はルメール、川田、福永の常連が占めているが、4位に30歳の松山が入った。続いて5位には51歳の武豊が頑張っているが、その後、6位は22歳の横山武。9位には若干20歳の岩田望がランクイン。平均年齢がグンと若返っている。
これを東西の所属別で分けると、上位5位までは栗東所属だから、全国6位の横山武は関東のリーディングの座についたことになる。デビュー4年目で94勝し、ウインマリリンで重賞制覇、オークスでも2着と、質量ともに申し分ない成績だった。
一方、76勝を挙げて関西では6位となる岩田望はデビュー2年目。同期で20歳の団野は62勝で10位に入っていて、年明けに日経新春杯でショウリュウイクゾで制し、岩田よりもひと足お先に重賞制覇を遂げている。
この岩田望、団野の競馬学校35期生には、他に斎藤新、菅原明もおり、同期のライバルとして切磋琢磨も期待できるだけに、これからの数年中に、リーディングの勢力図がガラリと変わる可能性も予感させる。
■藤田菜七子のライバルは後輩・女性騎手候補生
そして、彼らとは別の意味で、もうひとつ注目されるのは「若手の台頭に一番刺激を受けているのは、藤田菜七子かもしれない」という記者連中の意見だ。
一昨年、キャリアハイの43勝。昨年から騎乗依頼仲介者が変わり、騎乗数の激減に伴って勝ち鞍も減った藤田だが、夏以降に上昇ムードに乗り、35勝まで数字を伸ばした。年明けの小倉開催も勝ち鞍こそ2勝止まりだが、積極的な騎乗で人気薄を好走させ、これまで以上に存在感をアピールしている。
先の記者は言う。「一期後輩の横山武は勿論、35期生の活躍もあるけど、それ以上に意識しているのはおそらくもっと下の世代。来年以降にデビューする予定の女性騎手たちだろう」というのだ。
報じられている通り、昨年の競馬学校での模擬レースに参加した藤田。先輩として胸を貸したつもりが、ふたりの女性騎手候補生に後れを取ってしまった。「自分もうかうかしていられない、なんて社交辞令を言ってたけど、もともと負けず嫌いな性格。内心穏やかではなかったはず」と囁かれている。
そこで火がついたのだろうか。サウジアラビアのサウジカップ前日に行われる招待競走への参加も早くから表明。コロナ禍での海外遠征はリスクも伴うが、それだけ高い技術習得への意欲の表れか。
いずれにしても、若手の成長が競馬界を盛り上げることは間違いない。彼、彼女らの活躍を大いに注目していきたいものである。
著者プロフィール
競馬“聞き耳”TM
競馬場やトレセンで取材を続けるトラックマン(TM)。東西に幅広い人脈を持ち、常に現場の情報にアンテナを張り続けている。関係者はもとより、記者仲間からも日々ネタを仕入れており、当サイトでは競馬の舞台裏、関係者の素顔が垣間見える“聞き耳”情報を配信。