ニッチロー’は、人をパラスポーツに近づけさせるキーマンかもしれない | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

ニッチロー’は、人をパラスポーツに近づけさせるキーマンかもしれない

スポーツ 短信
ニッチロー’は、人をパラスポーツに近づけさせるキーマンかもしれない
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3月17日、東京都品川区の日本財団パラアリーナにて、「あすチャレ!運動会 日本一決定戦!」(主催 日本財団パラリンピックサポートセンター、協賛 株式会社 JTB、後援 スポーツ庁)が開催された。

このイベントには日本全国7ブロックの代表に加え、元バレーボール日本代表選手の大林素子さんや元車いすバスケットボール日本代表の根木慎志さんらによるゲストチーム「チャレンジャーズ」も参加。

各ブロックの代表と共に、ボッチャ、車いすポートボールといった全5競技のパラスポーツで競い合った。

ずっとイチロー

イベント中、終始異彩を放ち続けた参加者がいた。「チャレンジャーズ」のメンバー、モノマネ芸人のニッチロー’さんだ。

その名の通り、マリナーズのイチロー選手をモノマネレパートリーに持つニッチロー’さん。パラスポーツ挑戦中もイチロー選手のモノマネは崩さない。

車いすポートボールに参加した際、競技開始を待つ間ずっとイチロー選手が打席に入る前のストレッチを続けていたのが印象的だった。

ニッチロー’さん

このことをニッチロー’さんに聞くと「常に立ち方は気にしています。どう構えるか。どっから見られてもイチロー選手であるようにしています」と当然のように言い放つ。

さすがモノマネ芸人……と思う半面、これが真剣勝負の求められるスポーツだったら難しいだろうな、と思う部分もある。

特にニッチロー’さんがイチロー選手のモノマネ芸人であることに面白みを感じたのは、車いすリレーの場面。

チャレンジャーズの第一走者として車いすのハンドルに手をかけたニッチロー’さんの表情や、上目遣いでゴールを見る頭の下げ具合は、まさに盗塁をしかけるイチロー選手のそれであった。

ニッチロー’さん

チャレンジャーズが並んだ場面では「僕だけエセアスリートなので……」と謙遜したニッチロー’さん。実際、本当に野球のグラウンド上でイチロー選手のモノマネをしながら盗塁のモーションを披露したらコミカルなものになるかもしれない。

しかし、脱兎のごとく車いすを漕ぎ出したニッチロー’さんは、あながちイチロー選手からも遠からずといった様子のカッコいい走りを見せた。

誰も「車いすを漕ぐイチロー選手」を見たことがないからだろうか。不思議と車いすに乗るニッチロー’さんは普段よりもイチロー選手に似ていたように思える。

パラスポーツは障害者の方も楽しめるよう、ルールに制限が設けられている。だからこそ運動が不得意な人や突出した能力がない人でも活躍できるし、見ていてもサマになる。

それを踏まえてニッチロー’さんを見ていると、イチロー選手のモノマネをしながらでもなかなかいいプレーを見せてくれるのが格好良かった。勝手ながら、パラスポーツとニッチロー’さんに強烈な相性の良さを感じた。

イチロー(に扮した人)がいる空気

ニッチロー’さん

しかし面白いのは、イチロー選手に扮したニッチロー’さんが終始周囲を盛り上げていることだ。選手交代などで少しでも間が空くと、すぐにバット(この日の競技に野球は無かったがもちろん持参)やメガホンを手にとってチームを応援する。時には相手チームも応援する。

競技の合間などは、様々な参加者と屈託なく笑い合いながらコートを移動している姿がよく見られた。

このことについてニッチロー’さんに聞くと「こんな格好してますからね!」と、ひとり野球のユニフォームを着た自分を指さして笑う。

「盛り上げ役としてがんばらなきゃいけないな、と思っています」と、自らの役割について語った。

ニッチロー’さん

確かに、揃いのユニフォームやゼッケンをつけた集団の中に野球のユニフォームを着たニッチロー’さんがひとり居ると、異物感の強さで一気に空気が安らぐ。

いい意味でパラスポーツの「ガチ感の薄くても楽しめる点」を強調してくれる人材としては適任だろう。

時には真剣に取り組む場面もあるが、誰でも気軽に参加できることもパラスポーツの魅力。必要以上に肩に力が入ったりプレッシャーに押しつぶされそうになったりしている人は、ニッチロー’さんの姿を見ただけで、リラックスしてパラスポーツへ参加できるだろう

これからもパラスポーツのイベントに登場し、参加への障壁を感じている人へ「これくらい特殊なスタンスの人も楽しく参加できていますよ」という例を示すキーパーソンになってくれるだろうな、と想像した。

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