空気が澄んでいる感じはしたものの、高山病を感じさせるような体調の変化は感じていなかった。が、実際のところ私自身が高山病の経験があるわけでもなく、どんな変化が表れるのかは知るすべもなかった。
さて、私たち一行はスタートから5日目、チャメ(標高2670メートル)からピサング(標高3300メートル)へ進んで行く。
チャメでは朝早く起き、写真を撮りに外へ出てみることに。空気の澄んだ感じで吐く息が白い。山々の高いところが白く、これまでの景色とは明らかに違ってきている。
朝食を終えて私たちは進み始めた。昨日までと比べて、たったひとつ違うことがあった。さほど進んでいないにも関わらず、身体の疲労度が増していること。少し歩いて立ち止まっての繰り返し。体力のある他のメンバーはどんどん進んで行くので、追いかけていくのがやっとである。
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壮大なスケールの山々
●疲れた時は、立ち止まってカメラを構えよう
幸いにも私たちのグループには、イギリスの救急隊員がホリデーで参加していた。彼女たちは疲労度が増し始めている私を心配してアドバイスをくれた。
「歩くことに一生懸命になると疲労度は増すから、少し歩いたら立ち止まって水分補給をしてカメラを構えよう」。立ち止まると周りのメンバーに心配をかける気もしていたので、写真を撮ることを自分への言い訳にすることで気持ちが少し落ち着いた。
●標高差に身体を徐々に慣らしていくことがポイント
この一日で標高差600メートル。気圧の薄さを身体で感じ(不思議と身体は軽くなったような感じがしていた)、高いところに登ってきたことを実感した。
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高所での生活はいかに
平地で生活をしている人間にとっては、標高3000メートル以上になると身体に様々な変化が表れてくる。急に標高差があるところには登れないので、今回のように3000メートルの手前から身体を徐々に慣らしていく。これらのことは、これから先の道を安全に進んで行くためのポイントにもなる。
●旅行での数日後は楽しいばかりのはずが…
旅の道中で5日目と言えば、その国の生活事情(言葉や硬貨など)が少しずつわかりはじめ、楽しくなってくる頃である。でも、今回のネパールは事情が違った。この日、私たちは3300メートルを目指していたのだ。
楽しいというよりは(今思い出してみるとよい思い出なのだが)、歩くことがつらくなり始めたこの日。昼食を終えて午後のトレッキングのあたりから少し歩いただけでも疲れを感じるようになっていた。当時は前日の睡眠不足が疲れの原因だと思っていたが、そろそろ自分の身体が気圧の薄さを感じていた。
早めに宿に着いて一度休息をした後、身体慣らしの意味で近くの寺院まで散歩をすることになったのだが、すでに疲れている私には散歩といったものではなく、ほぼトレッキングだった。
収穫祭の真っ最中で、寺院の中では女性たちが祈祷中。私たちは静かにこの祈りに耳を傾けた。
●街や村で風になびく5色の旗の意味
トレッキングの道中、街や村でよく見かけたのがタルチョという旗。
幸せでいられますように
災害が起きませんように
たくさんの収穫がありますように
健康でいられますように
などと、この旗にはそこに住んでいる人々の願いが込められている。色は青(空)・白(風)・赤(火)・緑(水)・黄色(地)で、この世界を作る5つの要素を意味する。時折風に舞う旗に、私たちはそこに住んでいる人々の生活感を感じながら前に進んで行った。
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あらゆるところで、5色の旗が風になびいている
●ホットシャワーが気持ちよい
気温が下がってきたこともあり、ホットシャワーが気持ちがよい。当然なのだが、浴槽というものはなく簡易シャワーである。シャワールームは木造で隙間風が入ってくる。私たち以外にもトレッキングのグループがいるうえ、シャワールームがたくさんあるわけではないので、空いている時間を狙ってすばやく済ませなければならない。この日は特に日本の温泉が恋しく感じた。
疲労度を感じながらの5日目が無事に終わった。翌日6日目、私たちはピサング(3300メートル)からマナン(3540メートル)を目指す。たった200メートルなのだが、試練のトレッキングがスタートする。
(続)