「オリンピックが終わったらいよいよ日本は終焉への道を辿るのではないか」といったネガティブな声も囁かれることがあるこの頃ですが、確かに2020年はよくも悪くも日本が変化する一つの「きっかけ」となるのではないでしょうか。そして、今とは時代も違えど、それは1964年のオリンピック時点でも同じだったはずです。
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◆過去から学ぶ
この東京という都市で開催される2度目のオリンピック。過去の1964年オリンピックから学べることも確実にあると思います。我々メディアも未来にばかり時間軸を向けて取材を進めがちですが、一度過去に立ち返ることも必要なのではないでしょうか。
そこで我々は、未来に向けた取材企画を進める前に、まず国会図書館へ足を運ぶことにしました。
国立国会図書館は、日本の国会議員の調査研究、行政、ならびに日本国民のために奉仕する図書館。ありとあらゆる本が存在します。
まず、当時の世相をつかむべく、1964年の新聞、雑誌に目を通しました。新聞はこのアーカイブ性こそ、大きな存在意義であると実感します。過去の時代感覚、世の中の動向をつかむのに、新聞ほど適切なものはありません。
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◆戦後ではない。各所へ設備投資
1964年東京オリンピックは、空襲で破壊された東京に、基本インフラを整える最大の機会でした。
1964年の国家予算の三分の一に近い金額がオリンピックにつぎ込まれ、「一兆円オリンピック」とも表現された東京オリンピック。予算の大半を占めた「東海道新幹線」や「首都高速道路を含む道路設備」、「上下水道」、「首都圏の地下鉄」、「私鉄の都心乗り入れ工事」は、現在でも活用されている不可欠なものといえます。
また、国の税金で国立競技場の拡充、代々木第一、第二体育館の建設、戸田漕艇場の整備、朝霞射撃場の整備などが行われ、東京都の税金で駒沢オリンピック公園総合運動場が建設されました。
一方、埼玉県の所沢市に建設されたクレー射撃用の所沢射撃場など、会後にほとんど使用されないまま閉鎖されてしまった例などもあるため、適切な設備投資をしたと手放しに称賛することはできないかもしれません。オリンピックで使用される競技会場をどのように効率的に整備すべきなのかを、考えるべきポイントとなるように思えます。

◆言葉の変化、BGって知ってる?
インフラだけではなく言葉の変化も実は1964年時にはありました。人は「見られる」ことを強く意識したときはじめて自分の立ち振る舞いを省みる、と言われることがありますが、まさにこの時「日本」は諸外国に「見られる」ことを強く意識したのです。
1964年5月に旺文社より発行された「高二時代」という雑誌には、「お嫁さんをもらうならこんな職業の人を」という読者アンケートの結果が掲載されていました。
「お嫁さんをもらうならこんな職業の人を」
1 BG
2 事務員
3 無職
4 教員
5 銀行員
6 看護婦
7 スチュワデス
8 デパート店員
9 同職業
10 栄養士
1位を飾る「BG」ですが、ご存知の方はいるでしょうか。実はコレ、今でいう「OL」なのです。当時、女子事務員は「BG(ビジネスガール)」と呼ばれていたのです。
では、なぜこの「BG」は使用されなくなってしまったのでしょうか。それは、東京オリンピックの開催にヒントがあったのです。
直訳すれば「商売女」となるビジネスガール。東京オリンピックを控える1962年、数多くの外国人観光客が日本を訪れると想定されたこの時、ある識者から「『BG』は英語圏の人に『売春婦』と誤解される可能性があるので、避けた方がいいのではないか」と指摘があったというのです。
これを受け、実際にNHK放送用語委員会がオリンピックの開催される前年の1963年に放送禁止用語としたという話もありました。
ある種公用語化したジャパニーズイングリッシュを使った看板や会話が、外国人観光客に無駄に与えてしまう悪印象を未然に防ごうとした取り組みなのでしょう。
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— CYCLE-やわらかスポーツ (@cyclestyle_net) 2017年4月19日