来るべき次戦に備え、日々トレーニングを重ねる村田選手に話を聞いた。(聞き手はCYCLE編集部・五味渕秀行)
●【インタビュー】プロボクサー村田諒太、ミドル級世界チャンピオンを目指して(前編)
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村田諒太選手(帝拳)
■挑戦したい相手
--- : 日本人選手が少ないミドル級で戦うことについてどう思っていますか?
村田諒太選手(以下、敬称略):世界的に見れば中量級・重量級の扱いが良くて、軽量級は見向きもされないっていう時代の流れがあります。だから重量級がすごいんだって僕自身も思ってたし、そこに価値を見出していましたけど、実際どうなんですかね。アジアが中心なのか、それかヨーロッパ、アメリカが中心なのかというだけで、どっちがレベル高いか低いかってないと思うんですよ。
そういう先入観を持たずに、自分がやっていることがあまり大それたことだと思っちゃうと、その時点で気持ちが負けているわけじゃないですか。だから普通にやって、そんなに大それた考えはもっていないですね。
--- : 村田選手が挑戦したい相手はいますか?
村田:世界タイトルはまず挑戦したいですね。階級は問わないですし、誰でもいいのでタイトルやりたいですけど。僕は最高のサポートをもらって、非常にありがたい環境でさせてもらっている。
次に組まれている試合に僕はベストな状態をもらっているっていうことなので、それをこなしていくだけですね。あいつとやりたい、こいつとやりたい、なんでできないんだとは、ひとつも思ったことがない。一つひとつやっていきます。
--- : 対戦したい相手にビリー・ジョー・ソーンダースの名前を挙げたインタビューを拝見しましたが。
村田:やりたいですけど、こっちがやりたいって言っても、チャンピオンがやりたいって言わなければできないですし。かつ、そこに対してやってくれないのがおかしいじゃないかって言うと、それはチャンピオンからしたらチャンピオンは俺だから選ぶのは俺だろって、そのあたりはわきまえないとダメですよね。
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7月のジョージ・タドニッパ戦 参考画像 参考画像
(c) Getty Images
■ボクサーの食生活、一番好きな食べ物
--- : 普段食生活で気をつけていることはありますか?
村田:最近はけっこう食べるようにしています。食べると言っても、朝しっかり食べて、夜の(一日)2食なんですけど。一日3回練習するので、練習と練習の間に間食を入れるようにしています。おにぎりとかバナナ、カロリーメイトだったり、そういう間食でエネルギーを補給するようにしています。明らかに消費カロリーに対して摂取カロリーが絶対足りない。
それをやると、(トレーニングを)やっているときはあまり変わりませんが、終わった後の気だるさが違いますね。やっているときはシンドいですけど、終わったあとの帰り道の気だるさが違う。
--- : トレーニングしたときの一日の消費カロリーはどれくらいですか?
村田:どうですかね、考えたこともないです(笑)。でも朝NRC(NIKE+ RUN CLUB アプリ/ナイキが提供しているランニングアプリ)を使って走ると500キロカロリー前後なので、その後ボクシングを含めると相当なものですね。
--- : 一番好きな食べ物は?
村田:ミカンです。この季節最高ですよね。
--- : それは昔からですか?
村田:昔からですね。子どもにもミカン病がうつっちゃって。もうミカン見たら止まらなくなっちゃって。息子が2歳くらいの時にいきなり夜中に『ミカン!ミカン!』って言って起きた時は、さすがに腹立ちましたけど(笑)。
■家族との時間…息子がボクシングを始めたいと言ったら?
--- : オフシーズンは家族とどのように過ごしていますか?
村田:普通ですよ。毎日一緒にいて、そんなに特別なことしないですけど。
--- : 子どもは何歳ですか?
村田:5歳と2歳です。公園はしょっちゅう行きますね。ちょうど上の子が自転車乗れるようになったので、日曜日とか僕も軽く体を動かしたい時は、朝から行こうって言って。息子が自転車で僕がジョギングでついていくみたいな。
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--- : 将来、子どもがボクシングをやりたいと言ったらどうします?
村田:それは彼の責任なので、もしどうしてもやりたいって言ったら、それは自己責任でやればいいかもしれないですけど、親としては止めます。
--- : 止める理由は?
村田:やっぱり報われる世界じゃないので。相当報われる可能性が低いと思いますし…。うーん、リスク高いですよね。
--- : 村田選手がボクシング始める時、家族はどういう反応をしましたか?
村田:母親は心配してたみたいですね。父親もいまだに心配しているみたいですけど。それこそ学校の先生がエネルギーをどこに費やすかという心配をしたように、親もそっちの心配があったみたいなので。何かやりたいと思ったことを見つけてくれことは嬉しかったみたいですけどね。
--- : ボクシング以外で好きなスポーツは?
村田:陸上の100m競争が好きです。あれはキング・オブ・スポーツだと思うんです。みんなやったことあるじゃないですか、かけっこって。あれのなかの世界一ですから、本当の世界一ですよ。(リオデジャネイロ)オリンピックも観ましたよ。世界陸上とかも観ますね。
--- : 他によく観るスポーツはありますか?
村田:けっこう何でも観ますけどね。興味あるものなら。バレーボールとかも好きで観ますし、実際に会場に行って観ると面白いですよね。やっぱりテレビだと伝わらないところってあるじゃないですか。それこそリオオリンピックが教えてくれたのは、卓球ってこんなに面白かったっけ?って教えてくれたと思う。バドミントンもそうですし。何でも興味あります。
ボクシングも絶対現場で見た方がいいです。しかも近くで観た方が。高いですけどね、ボクシングのチケット(笑)。
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5月のフェリペ・サントス・ペドロソ戦 参考画像
(c) Getty Images
■運と縁が味方すれば世界チャンピオンになれる
--- : 次の試合はいつごろになりそうですか?
村田:いつでも用意できますよ。朝走って(体重が)77キロなので、減量まで4キロちょっと。そんなのいつでも用意できますし、実戦さえやればいつでも準備はできているので、組んでもらえるのならいつでも。
--- : 来シーズン以降の目標について教えて下さい。
村田:やっぱり来年世界チャンピオンになりたいですね。ゲンナジー・ゴロフキンがチャンピオン統一したがってて、そこもなかなか難しいところなので、その動きを見ないとわからないですが。やりたいのはやりたいですけど、それだけでできるところじゃない。まあ、来年も運と縁が味方してくれれば、その時はチャンピオンになると思います。
--- : 村田選手にとってボクシングの魅力は?
村田:昔はね、ボクシングってわかりやすくて、自分が一番強いっていうのがわかるじゃないですか。勝っても負けても自分の責任だって思えるじゃないですか。それがボクシングの一番の魅力だなと昔は思っていたんですけど。
今は全然違って、ボクシングって勝ったら周りのおかげなんです。みんながサポートしてくれて、初めてそこに勝利がある。負けた時は誰の責任?それは自分の責任。
そういうものだなと思うので、昔のボクシングのわかりやすさっていう魅力は僕のなかで無くなっていますね。何かって言われたら、それは難しいですね。僕にとって何かって言われたら、パッと答えられるものは無いですけど、観る方からしての面白さ、魅力というのは原始的なものじゃないですか。普段抑制されている、打ってどっちが強いんだって競いあいたい気持ちって、もともと(人間が)持っている本能じゃないですか。
それをルールの上ではありますけど、解放していい瞬間を、感情移入しながらああだこうだって言いながら見るのが面白いんじゃないですか。それは他のスポーツにはない、ストレス解消にはなると思います。
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7月のタドニッパ戦まで11戦全勝の村田諒太選手 参考画像
(c) Getty Images
●村田諒太(むらた りょうた)
1986年1月12日生まれ、奈良市出身。帝拳プロモーション所属。2012年にロンドン五輪ボクシングミドル級で金メダルを獲得して脚光を浴びる。アマチュア時代の成績は137戦118勝89KO・RSC19敗。2013年8月にプロデビュー。以降、2016年7月のジョージ・タドニッパ戦まで11戦全勝(8KO)。
取材協力:ナイキジャパン