山を下って、そしてまた、山を登る。すると、生瀬富士と尾根続きにある山・立神山(標高420m)の頂上に着く。
この立神山の頂上からは、先に登ってきた生瀬富士の頂上がよく見える。岩岩した痩せ尾根が、ちょっぴりアルプスっぽいが、富士山とはまるで違う山容だ。「富士」の名のつく山は、大抵富士山のような形をしているものだが。生瀬富士の場合は違う由来があるようだ。
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立神山の山頂。ちょっとひとやすみするのに、ちょうどいい広さ
■日本三名瀑の袋田の滝を見下ろす
頂上をあとにして、ロープを掴みながら急な坂を下りていくと、「かずま」という分岐点に到着する。分岐点の標識には「袋田の滝上 10分」という魅力的な文字が書かれていた。その矢印の指す方向に歩いて行くと「滝見展望台」と書かれた標識がある。そこは切り立った崖になっているのだが、崖から下を覗き込むと、日本三名瀑・袋田の滝の姿があった。
山の上から滝を眺めると、滝の全容を見渡すことができ、四つの段がはっきりと見える。吊り橋を歩く人の姿はアリよりも小さく、点にしか見えない。けっこうな高さから眺めていることがわかる。
■生瀬の滝の上流を渡る
そこからさらに下っていくと、水の流れる音が聞こえてきて、生瀬の滝の上流にたどり着く。つまり、川である。対岸には建物があるが、橋が架かっていない。浅瀬のところどころに顔を出した石を伝って、対岸まで歩くしかないのだ(水量が多い時は危険なので迂回を!)。
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沢渡りは、水量が多いときは注意が必要
これが、なかなかスリリング。つるつる滑りそうな石を、しっかりと登山靴で踏みしめて、慎重に慎重に…抜き足差し足…時には軽くジャンプして。無事に川を渡り終えた先には、国道へと続く舗装路がある。いつの間にか、麓まで下りてきていたのだ。
壁のような岩をよじ登ったり、急な斜面をロープで下りたりしたかと思えば、滝を上から眺めたり、川を渡ったり。山・滝・川…奥久慈の自然を体全体で感じられるのが、生瀬富士の良いところだろう。姿形は「富士」とは程遠いけれど、ハイキングコースの充実ぶりは富士山級と言っても過言ではない(富士山に登ったことはないけれど)。