#ソニー平井社長が語るスマホ・IoT・VR・ロボット事業を成功に導くカギとは【IFA 2016】 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

#ソニー平井社長が語るスマホ・IoT・VR・ロボット事業を成功に導くカギとは【IFA 2016】

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ラウンドテーブル会見に望むソニーの平井社長
  • ラウンドテーブル会見に望むソニーの平井社長
  • 賑わうIFA2016のソニーブース
  • Xperia新製品の展示コーナー
  • MWC2016で発表されたXperiaのスマート商品群。Xperia Earはいよいよ11月に欧州など世界各国で発売を予定する
  • PS VRの体験展示も好調
  • プレスカンファレンスに登壇する平井氏
  • プレスカンファレンスではXperia XZも発表
 2日から開催された「IFA 2016」(ドイツ・ベルリン)に出展したソニーは、フラグシップスマートフォン「Xperia XZ」をはじめ、今年の秋以降に発売を予定する数多くの新製品を発表した。日本人記者を集めて開催されたラウンドテーブルにて、平井一夫社長が今後のモバイル、エレクトロニクス事業の展望を語った。

 ソニーはプレイベント期間の1日にプレスカンファレンスも開催し、壇上に登った平井氏はこれからもソニーが「プレミアム商品」に注力していくという考え方を述べたばかりだ。ラウンドテーブルの席でも、平井氏は「ソニーの製品が今後も差異化を図っていくためには、ユーザーの手元に最も近い“ラスト・ワン・インチ”のところで“感動”を喚起して、使っていただく方々の好奇心とクリエイティビティを刺激するプレミアムな製品を育てていくことが大事」と強調している。プレミアム商品には発表後も注目を集める「Xperia XZ」も含まれており、なかでもユーザーの手元に最も近く、特別な位置づけにある製品の一つであると捉えることができそうだ。

 平井氏はまた、昨今のエレクトロニクス市場では、とかくネットワークやクラウドサービスに注目が集まりがちになり、実体を持つデバイスがコモディティ化していると言われることも多いと前置きしながら、「人間の五感に触れられるのは、結局デバイスでしかない」という持論を展開し、今後もコンシューマー向けのモバイルやエレクトロニクス商品を核に、ユーザーを“WOW”と唸らせるような魅力ある商品を、全事業領域に渡って追求していきたいとコメントした。

 会場で実施された質疑応答のなかから、ソニーのモバイル・IoT事業に関わる平井氏のコメントを抜粋して紹介しよう。

 1日のプレスカンファレンスでは、多くの時間が新しいXperiaのスマートフォンを発表・解説するために割かれた。その理由について平井氏は「どの商品をハイライトするか、入念に計画を立ててステージを作り上げたが、今回のIFAが新しいXperiaの紹介するタイミングと重なったため、少し厚めに発表をした」と説いている。MWCで発表したXperiaのスマートプロダクトについても、短焦点プロジェクターにAndroid OSが採用されることや、ヤフーなどのパートナーと一緒に新しくはじめるサービスの概要もアナウンスされた。平井氏によれば、モバイル部門の黒字化への道も見えてきたという。

 今回発表された「Xperia XZ」は、MWCで発表された新シリーズ「Xperia X」の最上位機種だ。日本国内での導入計画についてはまだ詳しいことが明らかにされていないが、世界のモバイル市場に目をやれば、日本を含めてフラグシップモデルの立ち回りが厳しくなっている。これからXperiaの高付加価値モデルをどのようにアピールしていくかという記者の問いに対して、平井氏は「ソニーのスマホは低価格帯でライバルと競い合うべきではない」という答えを返した。「やみくもに台数を追い求めるのではなく、付加価値を訴求しながら利益も取れる商品を中心にビジネスを組み立てることが基本戦略。Xperiaの新製品を例に取れば、カメラまわりのデジタルイメージング機能を徹底してリッチ化したことで、今度はソニーのコンパクトデジタルカメラが売れなくなるということも起こりうる。でも、お客様には次にソニーのスマホに選んでもらえればよいだけのこと。ブランドによる付加価値提案の内容をご理解いただいて、長くソニーの製品を使い続けていただくために、今後も惜しみなくソニーの先進技術をXperiaに投入していくつもり。そここそがソニーグループのアドバンテージにもなる」(平井氏)

 日本以外の海外エリアでのスマホ関連ビジネスについては、いま特にアジア、中近東が強化対象になっているという。平井氏は「アジアでソニーがある程度のビジネスを開拓できているエリアに注力する。中国は台数を絞って、赤字が出ないようにビジネスを回すことに注力している。黒字化も見えている」と説明。一方「アメリカ北部は競争が激しいため、今の段階では身を投じることを控えている」という。「全世界でXperiaを展開したこともあったが、結局のところ価格競争に巻き込まれて、得られるものが少ない。ソニーモバイルの経営を十時社長が担当することになってから、マネージメントにメリハリが付いて、着実に儲けられるところで成果を挙げていくという形が確立しつつある」(平井氏)

 今年の6月末に示されたソニーの経営方針発表の内容には「AI(人工知能)・ロボティクスを強化していく」というシナリオが含まれていた。ソニーはかつて犬型の「AIBO」や人型の「QRIO」などのロボットを商品化し、コンシューマーに販売していた。平井氏は「今後、ソニーのAIとロボティクスはさまざまな形をとりながら推進する事業になる」とし、例えばスマートテレビのなかにコンシェルジュ的な位置づけで組み込まれたり、製造やロジスティクスの分野に活躍する産業用ロボットになる可能性を言及している。

 ソニーの経営方針として、今後「VR(バーチャルリアリティ)」の展開にも力を入れていくという戦略も発表されている。IFA 2016の展示スペースでは「PS VR」を体験できるスペースが10台前後ほど用意されていて、それぞれに盛り上がっている様子がうかがえるものの、新製品など目立った発表は無かった。平井氏はその理由について、来週にニューヨークで開催を予定しているPlayStationの発表会イベントの方で詳細を案内する計画があるからだと述べている。ただ、日本だけでなくヨーロッパや世界各地でも「PS VR」に対する期待は大いに高まっているようだ。「予約は好評をいただいているようでありがたい。PS VRという商品を通して、まずはゲームから、次にノンゲームのコンテンツを徹底的に楽しんでいたくことが大事と考えている。VRコンテンツを快適に楽しんでいただくため、PlayStation 4という性能の高いゲームコンソールを中心にまずは着実に体験をお届けすることに注力したい。スマホなど、ほかのデバイスでVRを体験できる機会を増やすかどうかについては、PS4できちんと成功を収めたあとに考えるべきこと」と平井氏は説明を加える。またノンゲームのコンテンツについては、すでにグループ会社であるソニー・ミュージックエンターテインメントと連携しながら、一部制作もスタートしていることを明らかにした。

 またエンターテインメント以外にも、VRがプラットフォームとしてうまく立ち上がってくれれば、ゲームよりも広い世界が広がっているだろうと、平井氏は期待を寄せる。またその際にはカメラから編集、アウトプットまで一貫したソニーのVR向けソリューションが提案できるとも語っている。

 今年のIFAではエレクトロニクスのハードウェアに関する発表が中心を締めているが、音楽・映像配信などコンテンツの部分についても記者から質問が飛んだ。平井氏はこのように答えている。

「これもまた来週ニューヨークでPlayStationに関するアップデートを発表する予定を組んでおり、いろいろな話も出てきているので、あえて今回は触れなかった。ただ、全般的にネットワークサービスの進捗は好調であり、売り上げ、会員数ともに順調に伸びている。PSビジネスが上げる利益の多くをネットワークプラットフォームからの収入が占めるようにもなり、その存在は軽視できない。アメリカで展開しているテレビ視聴サービスのPS Viewも、春にディズニーとESPNが加わって、秋にはNFLのチャンネルが増える。いまは投資としてコンテンツを増やす段階だが、チャンネルを増やせばお客様も多く集まる。ゲーム以外にもさまざまなコンテンツを増やして、プラットフォームを強化することが大事。ネットワークサービスのユーザーはまさしくソニーにとって大きな財産。ユーザーの信頼を得て、AIやロボティクス、ネットワークの足下も支えるであろうプラットフォームが固まってこそ、優位性が生まれると考えている」(平井氏)

 IoTやスマートプロダクトに関連する取り組みは、「どちらかと言えば、現在グループのなかで最も取り組みが進んでいるのはソニーモバイルの商品群だと思っている」としながら、平井氏はこれからはソニーが単独でやっていくことにこだわらず、パートナーと連携しながらユーザー本位のサービスを構築していくことが大事と指摘している。平井氏は今後の展開については「例えばPlayStationの場合、NetflixやAmazonなどいろんなサービスがプラットフォームに参加して、オープンなかたちでサービスを提供している。同じような形を次世代のIoTサービスで実現する方向が望ましい」と方向を示した。

ソニー平井社長が語るスマホ・IoT・VR・ロボット事業を成功に導くカギとは【IFA 2016】

《山本 敦@RBBTODAY》
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