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【PR】「疑惑のチャンピオン」7/2に公開…アームストロングはただの悪者だったのか?

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ランス・アームストロングを描いた映画『疑惑のチャンピオン』
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ツール・ド・フランス主催者から送られてくる大会資料の最後のページには、1903年の第1回大会からの歴代優勝者リストが掲載されている。ところが1999年から2005年までは空白だ。

向運動能力処方をプログラムしたランス・アームストロングの全記録がその後抹消されたからである。

ツール・ド・フランス全日程を単身で追いかけるようになってボクも20年になるが、2006年のフロイド・ランディス、2010年のアルベルト・コンタドールを含めてそのうち9年の優勝者リストがその後に書き換えられるというのも異常な事態だ。

だから『疑惑のチャンピオン』(原題 :THE PROGRAM)が日本で公開されると聞いても観たくなかったし、もうあの時代は振り返りたくなかった。劇場用パンフレットの原稿やこうしたコラム執筆依頼がなかったら、関わりを持ちたくない映画だった。

この映画の原案となる告発本を書いたサンデー・タイムズのデイヴィッド・ウォルシュはツール・ド・フランスのサルドプレス(プレスセンター)の取材仲間だ。映画ではそんなボクたちの仕事現場が忠実に再現されていることにまず気がついた。


映画『疑惑のチャンピオン』より

癌を克服してツール・ド・フランスに帰ってきた1999年のアームストロングはだれからも温かな目で歓迎されていた。初日に優勝し、そしてマイヨジョーヌを着用してシャンゼリゼに凱旋したときは、映画で再現しているようにサルドプレスから拍手が沸き起こった。そして翌年の2勝目からはもう拍手は起こらなかったこと、前人未踏の7連勝を記録するまでサルドプレスが興奮でどよめくこともなかったこともそのとおりだった。

それだけアームストロングの走りは驚異的で常識を卓越したものだったからだ。最大のライバルとされたヤン・ウルリッヒが絶望の表情で取り残されていくのだが、彼もなにかを訴えたかったのかも知れないが口には出せなかった。そんなシーンが何度も演じられていくうちにサルドプレスにはあるひとつの疑いが立ちこめていた。ただし記事にはできなかった。

映画の中で「オレは一度も陽性になったことがない」とアームストロングが何度も繰り返しているように、証拠がなにひとつなかったのである。


映画『疑惑のチャンピオン』より

アームストロング役を演じるベン・フォスターは実力派の俳優だが、風ぼうがアームストロングと似ていて、さらにサングラスをかけると実際の映像とそん色がない。実際の映像はテレビ画像のなかで再現されていたり、背後から撮影したものはホンモノだったりするが、それ以外はフォスターが舞台設営の中で走って再現したものに違いない。ロードバイクにも相当乗り込んでいるんだと推測できる。

実際のアームストロングはもっとふてぶてしかったような記憶があるが、その一方でアームストロングも孤独につつまれた部分で苦悩していたのではと、フォスターの演技を見て感じ、それを見事に再現していることに感心した。個人的にはランディスを演じた俳優が秀逸で、その心痛を演じきっていた。薬物使用で失格になっただけの悪役というイメージはこの映画を観て初めて脱却した。

ツール・ド・フランスとしては空白の7年間ではあるが、その時代に刻まれた人々の記憶まで消し去ることはできない。そこにはどんなプログラムであるにしろ栄冠を目指して戦った選手たちが確実に存在していたからだ。勇気を出して観てよかったと最後は胸をなで下ろした。

アームストロングとは奇跡のサバイバーを演じ続けたただの悪者だったのか?この映画を通してみなさんに判断してほしい。

※ ※ ※

『疑惑のチャンピオン』は7月2日(土)より丸の内ピカデリー&新宿ピカデリーほか全国ロードショー。

《山口和幸》

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