ツアーダウンアンダー2016。南オーストラリア州でももっとも大きなプロサイクリングレースでイベント。これが年々大きくなり続けているのは、サイクリングが一般市民に浸透しているという表れの一つだろう。
なぜオーストラリアでの自転車ライフがブームに終わらず続いているのか。州の政策もさることながらオーストラリアという環境が一役買っているようである。ツアーダウンアンダーという大きなサイクリングイベントを例にとりながら検証してみた。
1.年齢や性差などのボーダーがない
スポーツイベントに限らず、各種イベントに年齢や性別などの境界線がないので興味のある人が基本的には参加できる。
ツアーダウンアンダーでは、プロレースと平行して子供向けのコミュニティーライドや誰もが参加できるライドプログラムを提供。見るだけではなく、誰もがサイクリングも楽しめるようにイベントが企画されている。
2.学生たちに学校以外での時間的な余裕がある
大学に入るための受験勉強などがない分、学校終業後や夏・冬休みなど、学生たちに時間的・精神的な余裕がある。好きなことに時間を使うことができる学生が多い。これは父兄にも言えることで、子供と過ごす時間や余裕がある。
週末には家族でサイクリングなどがその表れであろう。
ツアーダウンアンダーを例に挙げると、開催中の一週間は、夏休み期間中ということもあり、家族連れが多くなる(就業中のはずの父親の姿も見かける、会社を休む理由にツアーダウンアンダー観戦が理由になっているかどうかは不明)。
3. サイクリングを浸透させるための自助努力
オーストラリアでサイクリングの母体となるサイクリングオーストラリア(自転車協会)。現在活躍中のBMCリッチー・ポーターやローハン・デニスなど今までにも多くの選手を生み出してきた。この協会では、ジュニアから成人・パラサイクリストまで様々な選手を育てる。
またコミュニティーライドに力を入れている協会もあり、いずれも州と協力しながらサイクルングの浸透に力を注いでいる。
4. 始めた理由は、自分がやりたいから
始めたのに理由はただ一つ、サイクリングをやりたいから。健康的など自分のための理由でやる人が多い。ちなみにサイクリングは、男性には3番人気のスポーツ(1位ウォーキング・2位ジム・4位ジョギング・5位ゴルフ)、女性には5番人気のスポーツ(1位ウォーキング・2位ジム・3位スイミング・4位ジョギング)だそうである(最新の国税調査2011-12参照)。
5. 車の代用としての自転車
車の維持費がとても高いオーストラリア。
州ごとにより違いはあるものの南オーストラリア州と例に挙げてみる。
自転車の登録料と強制保険(6気筒エンジンの車で)約6000円/1か月。これには点検料などは入っていないので、日本の車検制度に比べても高いのは一目瞭然。
また点検に出しても日本の精密な点検に比べると、こちらが調子が悪いところを言わないと触るぐらいの点検で終わってしまうことが多い。。
中古車が高く、日本では廃棄にお金を払うような車でも20万円前後する(特に中古車の中でも日本車は高い)。高い維持費の車に代わって増えてきたのが自転車である。
サイクリングが特別なものではなく、日常の生活に浸透してきたまたは人気のスポーツとしてあり続けるには決して一過性の流行ではなく環境や日常の努力の積み重ねが必要と言えるだろう。
《Photographer Asami SAKURA》
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