ケーシー・ストーナーのチーム加入で注目を集めている「MuSASHi RT HARC-PRO」。鈴鹿8耐では2連覇中で、通算3度の優勝経験を持つトップチームだ。そのチームの指揮官である本田重樹監督を独占インタビューした。
◆強いチームが勝つんじゃない、勝ったチームが強いんだよ
「これまでの鈴鹿8耐では、218周という設定周回数をいかにクリアできるかがチームとしての課題だった。昨年は突然の雨でスタートが順延し、一昨年はレオン・ハスラムが大腿を痛めていて、マイケル・ファン・デル・マークも鎖骨の怪我の影響で本調子ではなかった。そうした中で優勝できたというのは、運も間違いなくあった」
昨年の鈴鹿8耐は、スタート直前の雨以外に、レース中にも雨が降り始め、各チームとも戦略が総崩れ、言い換えれば出たところ勝負という状況に陥った。そして本田監督もここでミスをしたと明かす。
「レオンをピットに入れるタイミングを1周間違えてしまった。鈴鹿8耐では、レース中ずっとラップタイムをパソコンに入力していて、あの時もそうだった。スタッフからもうすぐレオンが戻ってきますと言われたけれど、計算ができていなかったのでもう1周走らせた」
「しかし、予想以上に雨が激しくて、翌周のピットインのサインで戻ってきたレオンは、これまで経験したことがないほどタフな1周だったと言ってた。でも、これがあったから、終わってみれば3人のライダーがルーティンの仕事をこなしてくれて優勝につながったんだ」
鈴鹿8耐は、レース前に優勝までのシミュレーションを綿密にデータ化するが、これまで思い通りにいったことは一度もないという。
「どのチームもそうだと思う。目標の周回数を決めて、各ライダーの1周のラップタイム、ピットインラップとピットアウトラップそしてピットワークにかかる時間、それらをすべてパソコンにインプットする。そうすれば、どう戦えばいいかは自ずと見えてくる。でも、鈴鹿8耐は絶対に思い通りにはいかない。最後は運も必要になるんだ。鈴鹿8耐というレースは、強いチームが勝つのではなくて、勝ったチームが強いチームというのが持論だからね」
◆ケーシー・ストーナーの参加で、攻めのレース展開も視野に
今年の鈴鹿8耐では、MuSASHi RT HARC-PROに世界最高峰MotoGPクラスで2度のチャンピオン獲得経験のあるケーシー・ストーナーが加わることになった。
「まだケーシーとは鈴鹿8耐に関して直接話していないが、世界チャンピオンを2度も獲得した経験のあるライダーだからね。HRC(Honda レーシング)だってMotoGPマシンの開発を託しているのだから全幅の信頼を寄せている数少ないライダーのひとり。テクニックや速さに疑う余地はない」
「だから、これまでとは違った優勝へのアプローチができると思っている。高橋巧、マイケル・ファン・デル・マークそしてケーシーと、いずれも高い次元でレースができるライダーなので、今年は攻めのレースも視野に入れているんだ」
「ケーシーは1月にセパンで『CBR1000RR』に試乗したけれど、あのマシンは高橋巧が1年間レースで使い切ったマシンだった。だからタイムもマシンに対するリクエストも参考程度にしかならない。とにかく早く本番用のCBR1000RRに乗ってもらいたい」
《佐久間光政@レスポンス》
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