【インナーローでいこう!】ツール最終週は心理戦 エースたちの「勇気」が試される! | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【インナーローでいこう!】ツール最終週は心理戦 エースたちの「勇気」が試される!

オピニオン コラム
ツール・ド・フランス第10ステージを制したビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)
  • ツール・ド・フランス第10ステージを制したビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)
  • リッチー・ポート(チームスカイ)
第101回ツール・ド・フランスも佳境を迎えてきた。クリストファー・フルーム(チームスカイ)、アルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ)の総合優勝大本命2人がレースを去った衝撃はなかなかぬぐい切れないが、これからの勝負を期待して見守りたい。

◆第20ステージの個人TTを前に、ニーバリとポートの思惑は?

第12ステージまでで総合首位に立っているのが、ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)。2位で追うのが、フルームからエースの座を受け継いだリッチー・ポート(チームスカイ)だ。2人の差は2分23秒。

これから先、アルプスとピレネーで4つの頂上ゴールのステージがあり、最終日前日の第20ステージには最後の勝負どころとなる54kmの個人タイムトライアル(TT)がある。

ポートはもともとTTスペシャリストだけに、ニーバリとしては第20ステージまでに逆転されないだけのタイム差をつけておきたいところだ。

では、どれだけタイム差があれば十分なのか? 今の2分半で足りるのか? 1分でいいのか? それとも5分は必要か?

TTは苦手と言われるニーバリだが、過去にジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャの2つのグランツールを制しており、そこまで悪いタイムにはならないだろう。しかも、第20ステージのコースはアップダウンが多く、上りも下りも得意なニーバリにさほど不利とは思えない。

ちなみに今年、ニーバリとポートが同じレースでTTを走ったのは、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第1ステージのみ。このときは10.4kmのほぼまっ平らなコースで、なんとニーバリがポートより6秒速く走っている。

しかし、54kmの個人TTとなるとレース時間は軽く1時間は超えるし、これだけの長時間を高い出力を保って走り続けられる能力を考えると、スペシャリストのポートに分があるかもしれない。また3週間近く戦った後の疲労やその日のコンディションも、タイムに大きく影響するだろう。

結局、どちらがどれだけ速いのか? 身もフタもない言い方をすれば、やってみなければわからないのだ。

◆勇敢な選手こそ、栄光を手にできる

しかし、「やってみなければわからない」この個人TTが第20ステージに待っていることが、ニーバリの戦い方を難しくしている。

もしこの先、個人TTがなく、マスド(集団)スタートのステージばかりならば、ニーバリはポートの動きをチェックしてタイム差をつめられないようにすれば、無事にマイヨジョーヌをパリに持ち帰れる。

しかし、今の2分半のタイム差ではポートに逆転されるかもしれないという不安があれば、ニーバリはどこかでタイム差を広げるためにアタックを仕掛けなければならない。

もちろん、逆転を狙うポートもどこかでアタックしなければ、いつまでたってもマイヨジョーヌには手が届かないことはわかっているはずだ。

とはいえ、自転車ロードレースにとって、アタックは諸刃の剣だ。成功すればライバルに決定的な差をつけられるが、失敗すれば大きなしっぺ返しをくらうこともある。

ロードバイクなどに普段乗っている人なら、オーバーペースで飛ばし過ぎてしまうことで、その後、力が入らなくなる経験を味わったことはあるだろう。プロのロードレースでも、アタックを仕掛けたことで逆に自分が失速し、ライバルに先行されるのはよく見かけるシーンだ。

しかし、失敗を恐れずに勇気を出してアタックをしなければ、けっして勝利は手に入らない。勇敢な選手こそ、栄光を手にできる。それがロードレースの魅力であり、このスポーツがヨーロッパで100年以上愛されている理由なのだろう。

◆チームを背負ったエースの戦いに刮目せよ!

ここ最近は日本でも自転車ロードレースが紹介されることが少しずつ増え、チームの作戦やアシストの献身的な犠牲にも目が向けられるようになってきた。しかし、作戦やアシストに可能なことは、しょせんエースのためのお膳立てである。

例えばスプリントステージでジャイアント・シマノが完璧なトレインを作っても、マルセル・キッテルのスプリントが不発ならば絶対に勝利は手に入らないだろう。

もちろん、それらのチームワークもレースには必要な要素だが、最後の勝負はエースたちにゆだねられる。そして彼らエースたちは、誰がどこでアタックするのか、自分はどこでアタックすべきなのか、周りを観察して、冷静に判断し、最後は勇気を持ってアタックしなければならないのだ。

これからの山岳ステージでは、ニーバリ、ポート、そしてそれ以外のエースたちが勝利に向かっていかに勇気ある走りを見せ、僕たちを感動させてくれるかに期待したい。
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