ありきたりな高性能車とは一線を画すトレック マドン6.9プロ vol.2 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

ありきたりな高性能車とは一線を画すトレック マドン6.9プロ vol.2

オピニオン インプレ
巧なセットアップと磨き込まれた走りに惚れ惚れできる
現時点で実現しうる最も新しい走り
ピュア・レーシングの切れ味を持ちながら、非常に高いレーシングバイクの純度を持ちながら、脚への当たりはきわめてジェントル。嫌な硬さがどこにもない。天井知らずの速さを持ちながら、扱いやすく、疲れにくいのである。高剛性バイクのようにそれと格闘する必要はない。誰もがそのポテンシャルをひきだせる。プロからビギナーの女性までその恩恵を享受できる。全く巧なセットアップだ。惚れ惚れする。
あまりに完璧すぎるので、完全体にさらに何かを付け加えた 「過剰の愉しみ」 を持つバイクや、何かがポッカリと抜け落ちている 「未完の魅力」 で乗り手を虜にするという、いい意味でバランスが崩れたフレームのように陶酔を誘う種のキャラクターではない。これは好みの問題であるので、それらの善悪を言うのは正しくないし、フェアでもない。
前作マドンのスムーズネスと 「なんだか物凄く新しい感じ」 は衝撃的だったが、ライバルは必死に追い上げていた。このニューマドンは、その数少ないライバル達をさらに突き放している。たった3年前、2007年度のトレック・ロードラインナップの頂点は何だったか。今となっては古めかしい5000系である。2010年現在のマドンが持つ磨き込まれた走りを体験すると、それはもはや骨董品にすら思える。なんというトレックロード進化スピードの速さ!このマドンは、現在考えうる、最も新しい走りを持っている。
マドンのフレームを一時間ほどかけて舐め回すようにじっくりと眺めながら、ここまで滑らかに走るわけ (=マドンとその他のバイクを隔てている機械的差異、構造上の理由) を考えてみた。が、もちろん答えなぞ見つからない。「ココがこうなっているからマドンはこのように走るのである」 と言い切れるような明確でシンプルな理由は存在しない、というのがやっとこさ導き出したオソマツな結論である。これといった決め手は無い。フレーム各部の形状はもちろん、カーボンの素材、積層法などの設計思想、パイプの接合法や製造法などの生産技術が少しずつ集積され、それらが複雑に絡み合い、全てがお互いに影響し合って、それらの総和として 「マドンらしさ」 が出来上がっている。マドンの超絶高バランスは、「妥協の結果」 では決してない。それは、各性能が鎬を削り合う 「頂」 に存在する。投入された開発費も相当の額になるだろう。だから他のメーカーがマネをしようとしても、一朝一夕ではできない。
しかし「マドン讃歌」にするつもりは全くない
しかし僕は、この文章を、よくありがちな 「マドン讃歌」 にするつもりは毛頭ない。そんな存在価値ゼロの文章を書くくらいなら、ニューモデルのインプレッションなんぞ最初からやらない方がマシだから。
まず、フロントフォークの振動処理の仕方にはブラッシュアップの余地があると思った。吸収性能は悪くはないが、収束面が少し弱く、大きな外乱を拾うと振動がほんの少し (本当にほんの少しだけ) 尾を引く。また、フロントのブレーキシューのセッティングを入念にしないと、ハードブレーキングで停止する寸前にビビリが発生しやすいと感じた。セッティングでどうにでもなる範囲のことだが。
官能性能でのツメはあまいと感じることもあったが、フォークの動的性能に文句は全くない。ハンドリングはクイック志向のニュートラルステア (繊細な面もあるが)。コーナリング中にホイールからかかる横方向の応力への耐性は非常に高く、いくらバンクさせてもステア特性は全く変化しない。だからどんなコーナーでも臆することなく突っ込める。しかし、フロントフォークにすべてを預けてしまえるような直進安定性は持たず、直線路では積極的に真っ直ぐ走らせようという意識が必要である。また、ジャックナイフ覚悟のハードブレーキをしたときに、応力がコラム根元に集中し、そこで微細な (エンジニアが意図しなかった) たわみが発生しているような気がする。楕円フォークコラムはカタログが謳うほどは効果的に働いていないように思う。だからフロントフォークだけに注目すれば、ONDAフォークほどの感動はない (とはいえ全体の完成度が高すぎる故のことで、ハッキリ言って全く気にならないレベルである)。
しかし、なぜクラウン部分で炭素繊維が曲がらないようにと留意されたNo90フォーク (08〜09モデルのマドンが採用) をあっさりと捨ててしまったのだろうか?ヘッドチューブとの段差をなくすためにクラウン部に被せるカバーは確かに不格好だったが、あのフォークは理想主義的な作りで好きだった。
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ロードバイクの走り品質の進化、その最先端にいる
コスメ・エンジニアリングは大きなお世話…か?
そして、僕の眉をさらに顰めさせるのが左チェーンステーである。正確に言うなら、そこに忽然とポッカリと空いた穴である。
“埋め込み型のデュオトラップセンサーシステムにより、ほとんどの汎用トレーニングコンピューターをスムーズにボディに組み込むことができる” というのがメーカー側の言い分だが、それについて個人的な感想を、オブラートに包むことなく、率直に述べさせてもらえるなら、「大きなお世話」 である。
どうも最近のトレックのエンジニアはこういうことをやりたがるようだが (2シリーズ、4シリーズのセンサー内蔵フォークなど)、ロードバイクにおいては、動的性能が犠牲になる可能性を孕んだ 「コスメティック・エンジニアリング」 などはするべきではない、というのが個人的な意見だ。
とは言ってみたものの、走行性能には全くネガが感じられないので、購入を迷っている人は心配しなくていいだろう。この素晴らしい 「名匠の走り」 を体感すれば、そんなことは全くもって些細なことである。もちろん、メリットとして捕らえる人も多いと思う。当然のことながら穴を空けることを前提として解析を進めてきたのだろうから、候補リストから落とすほどの理由にはならない。
シートマストキャップの扱いにくさも、些細な欠点として挙げることができるだろう。試乗車のボントレガーサドルを自分のフライトに交換しようとしたら、チタンの楕円レールが嵌らず、途方に暮れてしまった。このシートマストキャップは構造上、真円断面のレールしか受け付けないのである。世の中にはボントレガーのサドルよりセライタリア、セラサンマルコ、フィジークなどのサドルの愛用者の方が多いだろうし、さらにそれらのサドルは、カーボン・チタンなどの素材に関係なく楕円断面のレールを採用していることが多くなっている。そのあたりも考慮していただけるとありがたいのだが。
さらにもうひとつ我儘を言わせてもらうなら、もう少しだけサドルオフセットを取れるようになると嬉しい。セライタリア・SLRとの組み合わせなら、サドル後退量40mmほどが限界である (フレームサイズ50、サドル高650mmの場合)。シートマストは専用規格品なのだから、オプションでオフセットを多くとったタイプや、レールが楕円断面のサドルにも対応するタイプを用意してくれるとより親切だろう (他メーカーのISPフレームにも言えることだが)。
競技用自転車史における「歴史的達成」
しかし、マドン6.9の全てを支配し包み込んでいる超絶な滑らかさは、超高性能に完全に麻痺してしまっているはずの僕も驚きと感動を禁じえないほどのものであった。あまりに有能なので、洗練されすぎている、という感じがしないでもないが、よっぽどヘンなものや過激なモノしか愛せないという歪んだ性癖の持ち主でない限り、この性能に文句を付ける人は皆無だろう。
チェーンステーに大穴を空けることが動的性能に影響を及ぼす可能性を孕んでいるなんてことは、トレックのエンジニアは百も二百も承知だったろう。確かに、技術力・解析力・開発予算の少ないメーカーが思い付きで同じようなことを漫然とやれば、「アイディア先走り型ダメフレーム」 になってしまうだろう。あえてそれにチャレンジしたということは、マーケティングの結果として 「チェーンステーにセンサーを内蔵してほしい」 という需要があったことに加え、自らの技術力・開発能力に絶対の自信があったのだ。
最高の全方位的完成度を持つという点においてトレックは、間違いなく一流、それも超一流である。他の二流メーカーが今すぐ現在のトレックと同じ技術レベルに立とうとするなら、明日にでも巨額の投資と優秀な人材の確保が必要になる。○億円の金をかけてそんなことをやるくらいなら、カタログスペックだけは立派 (BB30、ISP、大口径ヘッド、全身エアロダイナミクス、ワイヤー内蔵…) なカーボンフレームをどっかから拾ってきてキラキラした流行りのカラーリングとクールなブランドロゴで包み込んで安く売った方がよっぽど簡単だ、という結論に帰結するのは無理からぬことだし、それが現代の自転車ビジネス的には正解なのかもしれない。
だからマドン6.9とは、みなさんが思われているような 「単なる大手メーカーのトップモデル」 ではない。それは、業界一ハイレベルな設計思想、製造技術の高さ、完成度の高さ、走りの成熟度において、ほとんど敬服に値する存在である。今や多くのメーカーが (実質的には) 高剛性化とは明らかに異なったメンタリティを持ち、躍起になって 「走り品質の進化」 を目指しているが、このバイクは間違いなくその最先端にいる。2010年モデルのマドン6.9の発表をもって、ロードフレームの設計技術は21世紀レベルへと完全に移行した。このバイクが持つこの上ない滑らかさは、ロードバイク史における 「歴史的達成」 と言ってもいいほどのものだった。
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《編集部》
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