スペシャライズドが快適、安定追求、エンデュランスモデル vol.2 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

スペシャライズドが快適、安定追求、エンデュランスモデル vol.2

オピニオン インプレ

快適性と適度な走行性の両立は高度な技術あってこそ 穏やかだが頼もしい走りを実現するカーボンバイク

加速でも踏んだ感じはふわりとしているが、しっかりとスピードは伸びる。スプリントのように踏み込んでも、ソフトではあるもののフレームにコシがあり、思った以上に高速までスピードを上げてくれるのだ。いわゆるコンフォートバイクには高回転を強要してくる (踏み込むとフレームがパワーに負けて進まなくなる) ものが多いのだが、このルーベエリートはペダリングに対しての許容範囲が広い。しかも、快適系バイクの一番の美点でもあるスーッと滑るような心地よい滑空感もある。

しかしレースにも使ってみたいというライダーには向いていないだろう。ダッシュ力やヒルクライム性能はレースバイクの方が優れているのはもちろんだが、コンフォートなフレームと快適性の高そうなホイール、25Cという太いタイヤとが相まって、ロードインフォメーションが伝わりにくくなっているのだ。グリップ感や路面状況、タイヤの滑り始めなどが掴みにくいので、レース的な走り方では逆に危険かもしれない。元々そのようなライディングシーンは想定していないだろうから、欠点とは言えないが。
ブレーキキャリパーはノーブランド品で、今どきブレーキ本体でコストダウンするか、と少々残念に感じた。しかしタッチは意外にもしっかりとしていて造りは悪くない。無印ブレーキは無印なりに進化しているのかもしれない。効きもそれほど悪くないが、強く握り込むとやはりアーチが負けて撓んでしまう。シューのトーイン調整も出来ないタイプなので、本格的に走るのならばキャリパーをシマノ・105グレードに交換したい。制動力とブレーキフィールが向上し、走りの質も上がるだろう。

安定志向のハンドリングでビギナーにも安心 ライダーを長距離へと誘う上質で本格的な走行感

ヒルクライムでパワーをかけても、フレームがぐにゃぐにゃと腰砕けになることはないので、競うような走り方をしない限り、気持ちよく登ることができる。MAVIC OPEN SPORTSとスペシャライズドオリジナルハブで組まれているホイールも堅実な作りとなっており、バイクのスタビリティを高めることに一役買っている。
ゼルツが挿入されたフォークは見るからに柔らかそうで、実際にフロントブレーキをかけたまま前後に揺すってみるとかなりしなる。ショック吸収性は極上で、荒れた路面を走っても視線はフラットのままに走り抜けることができる。しかしハンドリングはしっかりしており、ステアフィールはナチュラルだ。前後にはソフトだが、ねじり方向には剛性があるのだろう。快適系フォークとしては理想に近い設計かもしれない。だが複合コーナーなど素早く切り返すような場面では、切り始めた瞬間にトロリとした曖昧さを感じてしまう。回頭に一瞬の遅れがでてしまうので、キュンキュンと小回りが利くバイクではない。しかし基本的に全域で弱アンダー。場面によって特性が変化することもなく、非常に扱いやすい。

前回のターマックSL2にしろこのルーベにしろ、スペシャライズドは目的がハッキリとしたバイクでライダーをその気にさせるのが上手い。サドルに座ってペダルを踏み出したその時から、その目的に準じた走り方、楽しみ方に体が染まってしまう。このルーベで走っていると、やはり長距離への憧憬が募る。「もっと遠くへ」 という欲求が自然と湧いてくる。僕はこのルーベ・エリートを、ショートトリップ・バイクとして推したい。小さなバックパック一つで事足りるような、日帰りから数泊までの短い期間がいい。
知らない道を、自転車でどこまでも走ってみる。ガソリンには頼らず、自分の脚力だけで行けるところまで行ってみる。自転車少年なら誰でもやることだが、大人になると誰もやらなくなってしまう。
今年の夏、このスペシャライズド・ルーベを手に入れて、ちょっとした自転車旅行に出てみるのはどうだろう。ありふれた季節の一つとして人生の中に埋もれてしまうはずだった夏が、一生忘れられない夏になる。あの頃には見えなかったものが、きっと見えてくる。今、大人が改めて27万円を散財する方法としては、なかなかに粋なやり方だと僕は思う。
《編集部》
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