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17日から兵庫県のマスターズゴルフ倶楽部でマスターズGCレディースが開催される。注目は今季2勝をあげ、3年連続複数回優勝を達成している岩井千怜。
5月に今季2勝目をあげて以来、優勝から遠ざかっているだけでなく、7月には今季はじめての予選落ちを喫するなどした。だが、最近6戦はトップ10が3回と、まずまずの安定感を見せている。
岩井の安定感を支えているのはドライバーショットとアプローチショットの精度の高さ。トータルドライビングが3位で、リカバリー率が4位だ。
岩井のドライバーとアプローチのスイングから学ぶ、それぞれに共通する大切なポイントについて触れる。
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■4日間大会でより高い安定感
今季これまで26試合に出場し、トップ10の回数は12。34試合に出場した昨季トータルの回数に、早くも並んでいる。
さらに、マスターズGCレディースのような4日間(4ラウンド)大会ではさらに安定感を発揮。
今季4ラウンド行われた大会は全部で10。今季唯一の予選落ちが4日間大会の大東建託・いい部屋ネットレディスだが、10試合の内、6つの大会でトップ10に入っている。
4ラウンド未満の大会は、16試合に出場してトップ10が6回。
トップ10率は4ラウンドの大会が60%で、4ラウンド未満の大会が37.5%となる。
ラウンド数が少なくなるほど、ビッグスコアを1回出せば上位に入れる。一方、ラウンド数が多くなるほど、安定感を発揮する必要がある。
岩井が得意なのは後者の方で、長丁場になるほど上位に進出しやすくなると言えるかもしれない。
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岩井千怜 今季4日間大会の成績
■岩井千怜の動きのポイント
岩井のスイングを見ると、ドライバーショットでもアプローチショットでも体の回転で打つことを大切にしていることがわかる。
一般的にドライバーショットは、クラブの長さによって増大する遠心力に体が持っていかれやすい。ビハインドザボールでインパクトしようとすると、上体がダウンスイングで右に傾きやすくなる。上体の右への傾きを抑えようとすると、上体が左へ突っ込んだりする。
だが岩井は、その傾きや左への突っ込みを抑えて、体を回転させることに成功している。
アプローチショットでは、下半身を固めて‟腕でチョン”と打たずに、体の回転がクラブをリードするようにフィニッシュまでスイングしている。‟手はクラブを持っているだけ”といった感じだ。
ドライバーもアプローチも軸の左右の傾きを抑え、前傾角度に合ったレベルに近い上体の回転でボールを打っている。
■毎日行うストレッチ、腹筋、背筋
優勝した今季開幕戦のダイキンオーキッドレディス後のインタビューで、毎日行っていることは?という質問に対して「ストレッチ、腹筋、背筋」と答えた岩井。
このような地道なトレーニングを継続することが、よりバランスの良いスイング作りにつながっているのだろう。
岩井は中学では陸上部に所属しており、もともと下半身の強さは十分にあったはず。上半身のトレーニングを日課にすることで、体全体のバランスがより良くなってきているのかもしれない。
■米ツアー最終予選会は5日間
岩井は姉の明愛とともに、今年の12月、来季の米ツアー出場権をかけた最終予選会に挑戦する。5日間をかけて90ホールを行う、この長丁場は、岩井にとってプラスに働きそう。
ただ、23年から海外メジャーを中心に海外の試合にスポット参戦しているが、苦戦している。
23年は、ホンダLPGAタイランド、全米女子オープン、全英女子オープン、エビアン選手権に出場し、60位タイ、48位タイ、予選落ち、予選落ち。
今季は、ホンダLPGAタイランド、全米女子オープン、全米女子プロ、全英女子オープンに出場し、13位タイ、19位タイ、予選落ち、予選落ち。
選手層が厚くなるメジャーだからやむをえない、かもしれないが、このままでは、最終予選会で苦しむことも予想される。
米ツアーメンバーになるため、少しでも不安を払拭するべく、得意の4日間大会となるマスターズGCレディースで、調子を上げて勢いづいていきたい。
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著者プロフィール
野洲明●ゴルフ活動家
各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。